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リトルストーリー
2016.11.01

たこやきの恩返し

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部屋を片付けていたら「先生、あのね」と
タイトルが書かれたファイルがでてきた。
 
小学3年生のころ、担任の先生が
「先生に言いたいこと、悩んでること…
なんでもいいからこの用紙に書いてBOXに投函して!
そしたら先生が返事書くね。」と言った。
このファイルはいわゆる先生との「交換日記」だ。
 
いま私のことを知っている周りの人たちは、
絶対に信じてくれないだろうけど
子どものころはとても内気で、内弁慶。
 
思ったことをうまく口に出せなくて、当時の写真を見ると
どれもなんとも言えない、不安そうな顔をしている。
そんな私が当時、唯一自らをオープンにできる場所が
「先生、あのね」だった。
 
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少しドキドキしながら、そのファイルをめくっていくと
目に止まった1枚があった。
タイトルはズバリ「たこやき」 大阪出身の私らしい内容だ。
 
それはそれは、笑ってしまいそうなほど日常のことだった。
 
その頃、我が家では毎週末に家族で「タコパ」を開催していた。
はじめは定番のタコ、ネギ、天かす、刻み生姜を。
 
少し飽きてくるとソースではなくて
しょうゆ、ポン酢につけてみた。
わ!ソースよりあっさりでパクパクいけるやん!
 
ちがう具材にしてみようか。
いろいろ試したけれど、ソーセージとチーズをいれたものがお気に入りだった
これにはやっぱりソースが合うね。
 
いつもの具材にみじん切りにしたこんにゃく、練り梅、刻みのりをいれて
しょうゆ、ポン酢につけると大人な味。
母がトントントントンと梅干しを必死でたたいていた。
 
毎週のタコパは妹とともに当時、最も楽しみな行事だった。
 

今になって考えてみると
自営業で毎日忙しい父はタコパのために
仕事を切り上げて、早く家に帰ってきていたのだろうし
母は食欲旺盛な娘2人のために、いろんな具材を用意して
タネも何度も作りたしてくれていた。
 
そもそも両親からすれば、毎週たこやきを
食べたかったわけでもなかっただろう。
 
そうやって両親はいつもやりたいことを
静かに見守りながら納得するまでさせてくれた。
 
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せめてもの恩返し…のうちの小さなひとつとして
大切な日にちゃんとプレゼントをしよう、そう思った。
 
父は小柄で足が小さく、いつも革靴は中敷きを足して無理矢理履いているし
スニーカーもレディースしかない、とボヤいていた。
 
母は「いつもどっか痛くなるから足を靴に合わせるねん!」と言っていた。
(足を靴に合わせるて、どういうこと!?)
 
そんな2人の足を採寸して、靴を選んだ。
父の日にサンダルを、母の誕生日にはサボをプレゼントした。

 
父はいつも玄関で「今日もNAOTの靴履いちゃおう〜」と言って出かけるらしい。
次はひも靴が欲しい!と言って、高いからあかん!と母に却下されていた。
 
母は「コレ、めっちゃえぇ色やなぁ」と言って
部屋の中で「とーさん見て。この靴こーてもらってん!」と
嬉しそうに一周くるりと回ってみせていた。
 
まだまだ2足ともピカピカのキレイな靴だけど、
それぞれの靴がシワシワのクタクタになるまで
2人とも仲良く、元気でいてほしい。
 
その頃には、もしかしたら私や妹に新しい家族ができてるかもしれないな。
そしたらもう一台たこ焼き器買って、またみんなで「タコパ」しようよ。
 
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  (神谷)


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