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リトルストーリー
2016.04.21

mother’s day ー靴を贈るー

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母の日に、子どもたち三人でNAOTの靴を贈った。
 
母は、若い頃から靴にとてつもなく困ってきた人だった。
どこへ旅行に行っても、足が痛くなり靴屋をさがしては
新しい靴を履いて帰ってくる。
 
捻挫を繰り返し、いつもひどい靴擦れで
絆創膏がいっぱい貼ってある足はとても痛々しかった。
長く歩けないことを考慮しての旅行プランも
分かってはいても残念そうだった。
 
「何でも選んでいいからね!」
という突然のプレゼントに戸惑いながらも、
母が選んだのは、なんと6.5cmもヒールがあるPLEASURE
 
mother
 
とてもよく似合っていた。
(…けど、ちょっとヒール高すぎない…?)
と内心すこし心配な子どもたち。
 
ある日、母から電話がかかってきた。
贈った靴で困ったことがあるという。
 
修理でもなんでもするよ!とドキドキしながら聞いてみると
「そうじゃないのよ、履きすぎちゃって困るのよ!」と。
姉や兄にも話して、家族で大笑いした。
 
人の足のことを真剣に考えられるようになったのは、
この世界に入ったおかげだと思う。
 
ごまんと靴に裏切られてきた母も、実際に履いてNAOTを信じてくれた。
母の足をこの手でフィッティングし、
NAOTの履き心地に驚き喜ぶ母の顔を見たとき、
ああ、この靴は大丈夫だなあ、と心の底から安心した。
 
それから帰省するたびに見る母の靴は
だんだんと馴染んでいって、私は何だか誇らしい気持ちでいっぱいになる。
 
多くの方の喜びの声のとおり、私の母の足も救われている。
母に靴を贈ってからは、フィッティングをするときはいつも、
母の足をみるような気持ちでさせてもらうようになった。
 
私は三人兄妹の末っ子だが、子供の頃、靴だけは必ず
お下がりではなく新しいものを買ってもらっていた。
 
「おかあさん、靴が小さくなったよ」
 
そうお願いすると、車で離れた靴屋さんへ連れて行ってもらった。
子供三人を抱え、学校の役員や地域の仕事などをパワフルに引き受ける母が
末っ子の私だけに時間をとってくれているのが何より嬉しかったのだけど
恥ずかしいので店内ではちょっと大人ぶっていた。
 
たくさんの種類から靴を選ぶ時間はとても楽しくて、
マジックテープのやつにしようか、踏むと光るやつにしようか。
「これが似合うんじゃない」という母のアドバイスに
「うーん」と首をひねってばかりでなかなか決まらずに怒られたり。
 
でも、長く使えるものはいつも、母が選んでくれたものだった。
母と靴を選ぶあの時間が好きだった。
 
中学、高校にあがり、制服が革靴になった。
母にもらった五千円札を大事にお財布にいれて、購買部に買いにいく。
合皮だったけど、履き込んだ革靴はなんだか誇らしげで、
新しいものに履き替えても古いものは捨てずにしばらく取っておいた。
今思えばサイズも履き心地も何も考えていなかったけど
革靴というだけで一際嬉しかった。
 
大学に入り、NAOTの革靴に出会った。
本革の変化がどんなに素晴らしいか、
自分にあった靴を選ぶことがどんなに大切なことか。
NAOTが靴のすべてを教えてくれた。
 
そういえば母の靴や洋服を一緒に選んだ記憶は全くない。
いつも私たちに時間を割いてくれていたのだった。
 
大人になった今やっとそのことに気がついて、母に靴を贈りたいと思った。
 
家族のことに一生懸命で、自分のことはずっとずっと後回しにしてしまう母。
安心して歩ける靴に出会ったからには、もう大丈夫。
 
いつか一緒に、母の幼い頃からの思い出の場所をたどるのが、私のひそかな夢。
この靴で、母の歩いて来た道を案内してもらおう。
 
にしちゃん
  (西)
 
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