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リトルストーリー
2016.06.16

今日の夜、ほたるが見たい

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夕方、家に帰ると、テーブルの上にメモがありました。
 
 
「ほたる きょうのよる ほたる」
 
 
娘(5歳)が書いたものでした。
近頃、そろそろホタルが見れるなあと家で話題になっていて、
なんとなく、今朝「今日ホタルを見に行こうか」と私が娘に言ったのです。
 
私の中では、今日でなくても、明日、明後日でもいいかと思っていたのですが、
そのメモからは「今日みにいくんだ!」という楽しみの決意が
ぐいぐいと伝わってきました。
 
けれども当の本人は、今日一日遊び疲れたせいか、
「足が痛い〜」と転げ回ってしまっている状態。
 
「無理して今日いかんでも、明日行ったらいいやん」と何度も説得しても、
首を横に振るばかり。良く言えば意思が強い、悪く言えばがんこ者。
なんとか晩ご飯をすませ、「足痛いのなおった」と言いはる娘とともに、
ホタル見物に出かけました。
 
 
ママチャリの後ろに娘を乗っけて、夜道を走ります。
私たちが目指すホタル生息地は、
東大寺の大仏殿の裏手から二月堂へ向かう途中の川沿い。
うちからは、やや上り坂なので、途中でへばってチャリをおします。
夜道は思っている以上に街灯がなく、どんどん暗闇にのまれていくよう。
不安になってきます。
 
 
はっ!明かりがあると思ったら、ここは大仏殿の裏、大仏さんの背中側です。
なんか怖い。
 
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ここに大仏さんが座ってると思ったら、急に背筋ピーンとなって緊張します。
意味なく一礼をして通り過ぎます。
 
こんなに遠かったかなと汗ばんでいると、徐々に見物客の人たちがあらわれて
ようやくほっとしてきました。
 
チャリをガチャンと停め、娘がぴょいと降り、
さあさあホタルホタル〜と川へ向かいます。
歩き出したとたん、なんだか変な内股歩きになっている娘。
「え、トイレ行きたいの?」と嫌な予感がよぎる私。
しかし、ちがうというので、それを信じて今度こそ、ホタル〜。
 
 
ふわ〜〜ふわ〜〜。いたいた〜〜!
最初は目が慣れないせいか、目の錯覚なんじゃないかと思うような
黄緑色の発光体。思い思いにホタルたちが浮遊しています。
めっちゃきれいやな・・・ ゆっくり漂う光る雪のような。
一匹が近くに来てくれました。
よーく見ると、ぼわ〜ぼわ〜と発光のリズムがあるようです。
 
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ホタルの光に誘われながら、川の周辺をぐるぐるとまわります。
ふと気づくと娘はしゃがみこんで見物。
そして「足痛いねん」とポツリ。
先ほどの内股歩きの真相がわかりました。
 
そこまでして、今日みたいホタル。
いや、今日じゃなきゃどうしてもだめだった。
たいした理由がなくても、今日がいいっていうことがある。
 
帰り道は下り坂。車輪の回転全快。ぶっとばします。
心地よくひんやりとした風にふかれながら、向こうに見えるのは
生駒山のふもとのキラキラした街の光。
 
人が作った光 と 自然の光。どちらも好きだなと思った夜でした。
 
たかちゃん
  (服部)
 
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