一覧に戻る

リトルストーリー
2017.10.14

紙版画作品展「猫がいない夜は長い」坂本千明インタビュー


 
ただいまNAOT NARAでは紙版画作家の坂本千明さんによる展示
「猫がいない夜は長い」を開催中です。
繊細で温かな作品からは、ぬくもりまで伝わってくるようです。
今回は坂本さんが紙版画を始められたきっかけや、
創作する上で大事にされていることに迫るインタビューをお届けいたします!

 
 
ーー  早速ですが、今回関西初の個展ということで、
    奈良で開催してみてどうですか?
 
予想を上回る方が来てくださって、嬉しいですね。
SNSで知ってくださる方も多くて、猫の力が大きいかなって思います。
 
ーー ずっと猫の版画を作られていたんですか?
 
全然そんなことなくて。
もともと動物を絵にすることは苦手だったんです。
 
ーー それは意外です!
 
私自身も意外で(笑)
今こんなに猫の作品を作るとは思ってもいなかったです。
もともと子どもの頃から絵はずっと描いていて、
学生時代に就職活動代わりに出版社に持ち込みとかもしていました。

 
その頃のモチーフは主に人だったんです。
むしろ動物は知らないから描けなくって、避けて通ってきたんです。
 

 

ーー これだけ猫の作品を作られている今からは想像できないですね。
 
そうですね(笑)
たまたま2009年に猫を保護して、そして同じ頃に版画を始めたんです。
ずっと絵ばっかり描いてきたんですけど、違う手法も試してみたいと思っていて。
直接何かに描くのではなく、間接的な方法でやりたいなと。

 
ーー それから版画を?
 
そうなんです、その時に版画というのを思いついて。
でも何から始めていいのか分からなかったんですが、
中学の美術の授業で塩ビ板のドライポイントをやったことを思い出したんです。

 
ーー 塩ビ板に先の尖ったもの(ニードル)で引っ掻いていく手法ですね。
 
それだったら思い描いているものが出来るかもと思って。
授業のことを思い出しながらやってたんですけど、
そしたらはまってしまって。
プレス機にかけてから紙をめくってみるまで
わからないっていうのも、衝撃で。
 
ーー それはめくる瞬間、ちょっとドキドキですね。
 
良いのか悪いのかわからないんですけど、
全然思い通りにいかないんです。
それまで絵を描いてきてある程度は思い通りにいってたのに、
版画だとそうはいかない。
そこに面白みを感じたんです。

 


 
ーー 思い通りにいかない方が、逆によかったんですね!
 
とにかく不自由さが楽しくて。それで版画はいいなと思って。
しばらく塩ビ板でやってたんですけど、
あとで紙版画を知ってすごく楽だなって気づいたんです。

 
ーー どんな風に楽だったんですか?
 
塩ビ板は黒くしたいところをひたすら引っ掻かないといけないんです。
そうするとサイズが大きくなればなるほど、身体がしんどい。
 
ーー それはちょっと続けられるか不安になりますね。
 
そうなんです。それで他の技法はないかなって探していたところ、
当時はプレス機を借りられる工房に通っていたんですが、
そこでお隣でやっていた方が、たまたま紙版画をされていて。
 

 
ーー 運命の出会いですね!
 
そこでハッとなって、「めくるだけで黒くなるんですか?」って
思わず話しかけてしまって。
その方が紙版画のあれこれを教えてくださったんですね。
すごい衝撃を受けて、そのあとすぐに紙版画の道具を買いに走りました。
 
ーー それから紙版画をされるようになったんですね。
 
そうですね。紙だから軽いし、ちぎれるし、
引っ掻くのもあまり力がいらないし、めくるだけで黒くなるし(笑)
誰にでも簡単に作れるのに、すごい味があって、自由度が高いんです。

 
しかも紙というのは昔から馴染みがある素材なので、
「こうしてみよう!」というアイデアが浮かびやすいんですよね。
そしてほぼ同時期に猫を拾ったんですけど、
その猫が黒白ハチワレだったんです。

 

ーー 作品のモチーフにも使われている子ですね!
 
当時は人をモチーフにした白黒の版画しかやっていなかったんですけど、
ふと横を見たらハチワレも白と黒だなって気づいたんです。

 

 
これは版画で出来るなと思って刷ってみたら、
版画工房でいきなり売れたんです。
隣の人から「あら可愛いわね」って言われて、
まさか売れるなんて考えてなかったから、あげようとしたんです。
そしたら「タダは悪いから」って500円くれたんですよ。

 
ーー 500円だったんですね(笑)
 
正しい値段だと思います(笑)
それで売れちゃった!って驚いて、友人陶芸家と二人展をした時に
ポストカードを作ったのが、猫の作品の始まりですね。

 

 
ーー 猫と一緒に生活したのが大きかったんですね。
 
そうですね。毎日見てるから、
だんだんと描けるようになっていきましたね。
たまたまですけど、紙版画の始まりと猫との生活の始まりが
ほぼ同時期になりました。
 
ーー 今回の作品展では、雑誌nidの表紙となった
   生活の道具をモチーフとされた作品もありますね。

 
もともと器は好きだったので、趣味で作品は作っていたんです。
それをたまたま見た編集部の方がお仕事をくださって。
依頼されるお題が洋服や靴など毎回違うから、
その流れでモチーフの幅が広がっていきましたね。
 

 
ーー 偶然の出会いからの流れがすごいですね。
 
完全に自分の意思ではない方へ流れていってますね。
ここでの展示も声をかけていただいて、実現しましたし。
 
ーー 今サボタイプのIRISを愛用いただいていますが、
   NAOTの靴はどちらで?
 
私の知り合いで履いている人が多かったから、噂では聞いていて。
たまたま吉祥寺にあるお店で受注会があるのを知って、買いに行きました。
 

 
ーー 履いていただいてどれくらいになりますか?
 
もう1年になりますね。
かなりの頻度で履いてるんですけど、
最近ベルトをかかと側に回して歩いてみたんです。
そしたらどこまででも歩ける!って思いましたね〜
 
今回搬入の日からずっとサボで過ごしてますけど、
1日中履いた日でも疲れにくいなっていうのは実感しています。
 

 
ーー 今回の作品展にもIRISを描いていただいてますね。
 
自分のサボをモチーフに版を作ってます。
1つの版を元に色を変えて4色刷ってるんですけど、
自分のWalnutに加えてWhite、Rumba、
Oily Dune Nubukを選んでみました。

 
ーー 経年している様子が色からも伝わってきます!
 
経年しているサボの写真を見て作ってるんです。
経年した様子だからこそ、版画にする意味があるというか。
 
ーー 確かに作品からは履いているからこそ滲み出る、温かみを感じますね。
 

 
ーー その他にどんなところを見ていただきたいですか?
 
展示している空間が自然光も入ってすごくいいので、
ここならではの雰囲気を味わってほしいですね。
 
飼い猫に関して、私はフリーペーパーなどを製作して
「室内飼い」を提唱しているんですけど、
こういう絵の中は自由だから、外にいる絵もよく描きます。
絵の中でのびのびとしている猫を見てほしいです。

 
ーー 今回在廊してみていかがでしたか?
 
関西はもちろん、結構ご遠方から足を運んでくださる方が多くて、
有り難かったです。
東京で何度か展示をしているんですけど、
奈良だから来られたよっていうお声もいただきました。

 

 
以前、自費出版した『退屈をあげる』を持ってきて、
サインしてくださいという方も多くて。
熱心に待っていてくださったんだな〜と嬉しかったです。

 
ーー 『退屈をあげる』はまた再販されますよね。
 
そうなんです。新装版として10月末に青土社から出版されます。
猫の版画をはじめるキッカケとなった猫とのお話なんですけど、
その出会いから別れまでを描いています。
 
淡々と毎日のことを綴っているかなり個人的な物語なんですが、
読んでくださった方々が自分のことのように感じてくださって、
これまでにもたくさんのご感想をいただいています。

 
ーー それまで猫に興味はあったんですか?
 
ずっと憧れてはいたんですけど、夫が生きものに興味のない人で。
それで諦めていたところ、行倒れ寸前の猫を拾ってしまったので、
それからなし崩し的に飼うようになりました。
そしたら夫もだんだんと情が移って、
今では私がいなくても立派に猫の世話ができるようになりましたね。

 

 
ーー 旦那さんを変えた猫なんですね。
 
私も猫のおかげで人生が変わって、今ここにいますね。
猫が繋げる出会いもたくさんありましたし。
なかなかこんなことはないから、
猫ってつくづく不思議な生き物だなって思います。
 
ーー 坂本さんの愛情のおかげで、猫も幸せだったと思います。
   作品からも坂本さんの持つ温かな雰囲気が滲み出ているので、
   ぜひ味わっていただきたいです。 
 
猫だけでなく、身近なものを描いた作品の展示もあるので
ぜひこの機会にたくさんの方にご覧いただけたら嬉しいですね。
 

 
 
展示は10/22(日)までです。
みなさまのご来場をお待ちしております!
 
〈イベント詳細はこちら〉
’17 10/6 fri.〜10/22 sun. 坂本千明 紙版画作品展「猫がいない夜は長い」
 
〈書籍『退屈をあげる』について〉

坂本千明『退屈をあげる』(青土社)
2017年10月25日発売 1,300円(税別)
***
しずかで美しい、かけがえのない日々――
「この愛しい退屈は ずっとつづくのだと思う」
愛猫「楳」の視点で出会いと別れを描く画文集。
紙版画のあたたかなモノクロームの絵は、ノスタルジーとともに、
わたしたちをやさしい世界へと連れて行ってくれます。
私家版として作られていた冊子が、この度待望の書籍化です。
***
※写真は私家版のものです


その他の記事

Category

一覧に戻る