リトルストーリー
2018.01.10

Humming NAOT vol.3 山田稔明さん

 

 
靴を履いて、旅に出る。
旅先だから、聴きたい音楽がある。
 
「旅で聴きたい曲」をテーマに、音楽関係者がおすすめの4曲をセレクト。
あの人は、どこにどんな音楽を連れていくのでしょう?
 
第三回目のゲストは、シンガーソングライターの山田稔明さん。
ポップなメロディにのった文学的な歌詞が心を掴む、山田さんのうた。
テレビCMにも起用された楽曲、「手と手、影と影」で心温まった方も多いのではないでしょうか。
 
自身のバンド活動に加えて、原田知世さん、中島愛さん、坂本真綾さんなど他のアーティストへの楽曲提供や、愛猫との生活をまとめた本の出版など、多方面で精力的に活動されている山田さん。
 
そんな彼が、「旅で聴きたい曲」とは?
 
さあ、旅に出かけましょう!

 
 
 

 

音楽家業は旅の連続だ。
街から街へ楽器を抱えて移動していくツアーはもちろんのこと、
ここではないどこかの場所のことを想像して描く曲作りや
異国の音楽をお手本にした編曲作業も言うなれば心の旅だ、
ということを僕はもうずいぶん前から気付いている。
– 山田稔明

 
 


artist: 細野晴臣
title: 恋は桃色 (視聴可)
album: 1973年 『HOSONO HOUSE』

 
インドネシアのバリ島への旅行は完全に休暇のための逃避行だった。思春期の頃からアメリカの文化に陶酔して、アジアへの関心なんてこれっぽっちもなかった僕が気まぐれに南へ飛んだのは何の導きだったのだろうか。バリ、デンパサールの空港を出た風景とともに僕の脳裏に流れ出したのは細野晴臣「恋は桃色」だった。「ここがどこなのかどうでもいいことさ」。僕が生まれた年にリリースされた作品。

 
 
 
 
 


artist: The Kinks
title: This Time Tomorrow (視聴可)
album: 1970年 『Lola Versus Powerman and the Money go round, Part One.』

 
「明日の今頃には僕らはどこにいるだろう」と歌われるこの曲はジェット機の音からスタートする。映画『ダージリン急行』で印象的な使われ方をしたからなおさら旅先の脳内BGMのプレイリストにいつもこの曲が再生されるのを待っている。「僕は太陽をあとにして、悲しげに通り過ぎていく雲を眺めている」。歌詞を読みなおしてみると、なんと宇宙への旅の歌だった。

 
 
 
 
 


artist: Jackson Browne
title: Running on Empty (視聴可)
album: 1977年 『Running on Empty』

 
ライブツアーの最中、ツアーバスやステージ上で録音されたジャクソン・ブラウンの『孤独なランナー』はライブ盤というのとも少し違った、不思議な寂寥感のただようレコードだ。旅の高揚感よりもむしろバックミラー越し、離れていく街への未練を歌う曲が多いのも興味深い。オープニングを飾るこのタイトル曲からは果てしなく走り続けることを課せられたミュージシャンたちの姿、さらには止まることを許されない現代人たちの背中まで想像させる。日常とは旅である。

 
 
 
 
 


artist: 山田稔明
title: glenville (視聴可)
album: 2010年 『home sweet home』

 
手前味噌で申し訳ないが、全国を旅して歌うようになってから自然発生的にできたこの歌を僕はいくつになっても、五年後も二十年後も歌っているだろうと思う。ある町からある町へと移動する主人公たちは他愛もない話を交わして、居眠りをしたり、期待と不安に翻弄されたりする。ポール・サイモンが書いた「America」はこの世にあるトラベリング・ソングの最高峰だと思うが、この歌は僕にとっての「America」なのだと胸を張りたい。

 
 
 
 

山田稔明 ・ YAMADA Toshiaki
1999年GOMES THE HITMANでのデビュー以来バンド活動と並行し、数多くの楽曲提供を行う。2009年からソロ活動を本格化。音楽以外にも、執筆、ワークショップなどその活動は多岐にわたる。愛猫家としても知られインスタグラムでも多くのフォロワーを持つ。愛猫との日々を綴った初の自伝的小説「猫と五つ目の季節」を2015年11月に出版。昨年には「猫と五つ目の季節」のその後のエピソードや、愛猫たちとの物語を書き下ろしたエッセイ本『猫町ラプソディ』を出版。同年夏に最新作『DOCUMENT』で初のライヴ盤CDを発表。www.gomesthehitman.com
 
 
 


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