「The Arrival」

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5年ほど前、イタリアの本屋でこの絵本を見つけました。
イタリア語なんてほとんど知らないけれど、絵だけならわかりそう。
そう思い、古めかしい装丁に惹かれて手にとってみました。
 
いざページをめくると出てくるのは謎の文字ばかり。
どうやら架空の世界の物語のようです。
実在する言語で書かれているのはタイトルと後書きだけ。
物語を読むのに言葉の心配はいりませんでした。
 
もとは英語で書かれた本で、原題は「The Arrival」ということを後になって知りました。
 
 
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一人の男が家族に別れを告げ、旅立っていくところから物語は始まります。
長い船旅を終えてたどり着いたのは不思議な町。
言葉もわからなければ、町の仕組みも謎だらけ。
戸惑いながらも、男はこの地で生活を始めます。
 
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奇妙な生き物と同居したり、見慣れない食材を口にしてみたり。
町の人々と接するなかで、彼らが抱える様々な過去にもふれます。
やがて男が仕事を得て、新天地に家族を呼び寄せるまでを描かれています。
 
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この本の魅力はなんといっても、繊細に作り込まれた世界観ではないかと思います。
物語に登場する場所は、おそらく作者の中で存在しているのでしょう。
そう思わせるくらいに、町の空気感や人々の息づかいを感じられます。
ひとつひとつのシーンや表情が丁寧に描かれており、無声映画を見ているようでした。
 
また「新天地で生きる」というテーマが、物語に現実味を持たせているのかもしれません。
作者ショーン・タンの父親はマレーシアからオーストラリアへの移民だったそうです。
言葉や文化、新たな地に馴染んでいくということ。
父親と作者自身の感じたことが描かれているのではないでしょうか。
 
リアリティーのある、ファンタジー作品「The Arrival」。
きっとこれは、その時々によっていろんな感じ方のできる物語です。
新しいことを始めるとき、それに戸惑いを感じたとき。
そんなときこの本を開けば、何か大切なことに気付けそうです。
 
 
 
NAOT TOKYOの店頭に、この本の日本語訳版があります。
邦題は「アライバル」といいます。
よかったらどうぞご覧ください。
 
(カマナカ)
 
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