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「クラウド・コレクター」

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はじめてこのタイトルを目にしたとき、マグリットの「心の琴線」を思い出しました。
野原に置かれた大きなグラスに、ふんわりと雲が入っている絵です。
最初に抱いたこのイメージは、あながち外れてはいませんでした。

これはひとりの人物が思い描いた、夢だけど現実で、壮大で小さな旅のお話なのです。

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古いトランクに眠っていた祖父の手帖を、筆者が発見するところから物語は始まります。
それはアゾットという架空の国の旅行記でした。
日記には、数々の奇妙な言葉が記されています。
哲学サーカス、かなでるものたち、記憶の結晶、21本の蒸留酒。
そして、度々あらわれる「永遠」というキーワード。

旅の記録は、実に淡々と書かれています。
茶目っ気があるけれど、少し頑固な筆者のおじいさんの人柄が表れているようです。
そのため、さらりと読み進めていくことができる文章となっています。
ですがその内容は、ただの空想物語などではありません。
軽妙な言葉のトリックが、端々にちりばめられているのです。
様々な知識を用いてつくられたアゾットの秘密は、「なるほど!」の連続です。
その謎を解き進めるうちに、筆者の祖父のあらゆる想いが見えてきます。
「出発はいたって簡単。ひい、ふう、みい、とみっつ数えるのみ。」
このメッセージの答えを知ったとき、きっとなんとも言えない心地よさを感じられます・・・”いやホントの話”。

ちなみに私はこの本を読むと、なぜかバンドネオンを聞きたくなります。
タンゴのイメージではないのですが、あの少し悲しげな音が合うような気がするのです。
もしかして「かなでるものたち」にこの楽器の奏者もいるのかなあ、なんて想像しています。

(カマナカ)

 

この本はNAOT TOKYOの店頭でご覧いただけます。
お立ち寄りになられた際は、ぜひお手にとっていただけたらと思います。


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