4月に東京から奈良へ引っ越してきて、
そのときから漠然と思っていたことがある。
それは岡山にいるおじいちゃん、おばあちゃんに会いにいくこと。
最後に会ったのは、大学時代になるから
もう6年ほど経つ。
思い切って、夏休みのはじめに会いにいくことに。
久しぶりに会ったおじいちゃんはぽかーんとしていて、
私を見ながら「誰だったかな?」
それもそのはず、会っていない期間が長かったし
おじいちゃんは認知症とつきあいながら過ごしているから。
それでも何となく孫であろうことは、わかったみたい。
何だか大好きなおじいちゃんの顔を見ているだけで
胸がいっぱいになってしまい、少し泣きそうになった。
私のこと、わからなくても、元気でいてくれることが嬉しい。
おばあちゃんはまだまだしっかりしていた。
時折とぼけたことを言うおじいちゃんをツッコミながら、
最近どうしているの、と私に聞いてくれる。
「ここでの毎日は楽しい?」って聞くと
「午前中は体操とかやることがけっこうあるけど、午後はぼーっとしとるよ」
「二人でおしゃべりとかしてるの?」
「いいや、何も話すことはないから、ようしゃべらん」
きっとたくさんの時間を二人で過ごしてきたから、
話さなくてもお互いにわかってるんだろうな。
お昼前に帰ることにする。
すると足の悪いおじいちゃんが出口まで来てくれて、
ニコニコしながら見送ってくれた。
その混じりけのない笑顔に、心が温かくなる。
「来てくれて、ありがとう」という気持ちが伝わってきた。
私もおじいちゃんに負けないくらいの笑顔で手を振った。
私がここに来たことは、すぐに忘れてしまうのかもしれない。
でも、楽しい時間を過ごしたっていうことがおじいちゃんの
心の片隅に残っていればいいな。
どうか、どうか、長生きしますように。
「また、会いに行くね」と心から思った夏のひとときだった。
(木村)
笑顔でまたね!
