部屋を片付けていたら「先生、あのね」と
タイトルが書かれたファイルがでてきた。
小学3年生のころ、担任の先生が
「先生に言いたいこと、悩んでること…
なんでもいいからこの用紙に書いてBOXに投函して!
そしたら先生が返事書くね。」と言った。
このファイルはいわゆる先生との「交換日記」だ。
いま私のことを知っている周りの人たちは、
絶対に信じてくれないだろうけど
子どものころはとても内気で、内弁慶。
思ったことをうまく口に出せなくて、当時の写真を見ると
どれもなんとも言えない、不安そうな顔をしている。
そんな私が当時、唯一自らをオープンにできる場所が
「先生、あのね」だった。
少しドキドキしながら、そのファイルをめくっていくと
目に止まった1枚があった。
タイトルはズバリ「たこやき」 大阪出身の私らしい内容だ。
それはそれは、笑ってしまいそうなほど日常のことだった。
その頃、我が家では毎週末に家族で「タコパ」を開催していた。
はじめは定番のタコ、ネギ、天かす、刻み生姜を。
少し飽きてくるとソースではなくて
しょうゆ、ポン酢につけてみた。
わ!ソースよりあっさりでパクパクいけるやん!
ちがう具材にしてみようか。
いろいろ試したけれど、ソーセージとチーズをいれたものがお気に入りだった
これにはやっぱりソースが合うね。
いつもの具材にみじん切りにしたこんにゃく、練り梅、刻みのりをいれて
しょうゆ、ポン酢につけると大人な味。
母がトントントントンと梅干しを必死でたたいていた。
毎週のタコパは妹とともに当時、最も楽しみな行事だった。
今になって考えてみると
自営業で毎日忙しい父はタコパのために
仕事を切り上げて、早く家に帰ってきていたのだろうし
母は食欲旺盛な娘2人のために、いろんな具材を用意して
タネも何度も作りたしてくれていた。
そもそも両親からすれば、毎週たこやきを
食べたかったわけでもなかっただろう。
そうやって両親はいつもやりたいことを
静かに見守りながら納得するまでさせてくれた。
せめてもの恩返し…のうちの小さなひとつとして
大切な日にちゃんとプレゼントをしよう、そう思った。
父は小柄で足が小さく、いつも革靴は中敷きを足して無理矢理履いているし
スニーカーもレディースしかない、とボヤいていた。
母は「いつもどっか痛くなるから足を靴に合わせるねん!」と言っていた。
(足を靴に合わせるて、どういうこと!?)
そんな2人の足を採寸して、靴を選んだ。
父の日にサンダルを、母の誕生日にはサボをプレゼントした。
父はいつも玄関で「今日もNAOTの靴履いちゃおう〜」と言って出かけるらしい。
次はひも靴が欲しい!と言って、高いからあかん!と母に却下されていた。
母は「コレ、めっちゃえぇ色やなぁ」と言って
部屋の中で「とーさん見て。この靴こーてもらってん!」と
嬉しそうに一周くるりと回ってみせていた。
まだまだ2足ともピカピカのキレイな靴だけど、
それぞれの靴がシワシワのクタクタになるまで
2人とも仲良く、元気でいてほしい。
その頃には、もしかしたら私や妹に新しい家族ができてるかもしれないな。
そしたらもう一台たこ焼き器買って、またみんなで「タコパ」しようよ。
(神谷)