5月半ばのこと、私たちのお店「NAOT NARA」の軒先に
2羽のツバメがやってくるようになりました。
もしかして「巣、つくるんちゃう!?」
毎年、近くの商店街やお家の軒先ではたくさんのツバメたちが巣をつくるのです。
「ツバメって幸せ運んでくるとか聞かへん?」「えー!幸せになりたい!(笑)」
そんな風にソワソワしていると、2羽のツバメが交互に
なにやらせっせと運んで巣をつくり始めました。
周りの子たちより、少し遅れて完成したうちの子たちの巣。
次第に周りの巣からは小さな小さなヒナたちが
並んで顔を覗かせているのに
やっぱりうちの子たちはのんびりさん。
ドキドキ、ハラハラ。
毎日交代で卵を温めている夫婦。
「孵らへんなあ…」
ドキドキ、ハラハラ。
うちの子たちあかんかったんかな…
そう不安になりはじめた、とある日の朝。
「ヒナ孵ってる!!!」
誰かの大きな声でもうみんな仕事そっちのけ。
よく見ると、NAOTのインソールを手に飛び出してきたスタッフもいます(笑)
みるみるうちにたくさんの顔が並んでいます。
うちの子たちは5人兄弟!
毎朝お店を開けるときに見上げると揃って私たちを見ています。
今日もいい1日になりそう!
ぎゅうぎゅう、と音が聞こえるんじゃないかと思うほど
もう巣が小さくなってくると、兄弟たちは順番に飛びはじめました。
危なっかしいほど低空飛行だけど、
それはつい先日孵ったヒナとは思えないほど
とてもたくましく。
でも1羽だけいつも巣でお留守番をしている子がいたのです。
ソワソワ、ソワソワ。
ある日、チャレンジをしたものの飛べなかったその子が
店先をヨチヨチ歩いて、道路へ飛び出しそうに。
こわくないよ、大丈夫、こっちおいで。
慌てて保護したその子は私の指の上でなんだか飛びたそうにウズウズ。
何度か飛ぶ練習をしていると
不思議なことに兄弟や両親がすごく近距離まできて
その子に向かってピィピィ鳴いているのです。
がんばれ、がんばれ!
無事に飛び立った兄弟たちは近くの電線やパイプなど
高いところに止まったり、時折巣で休憩をしたり。
あぁ、旅立ちの日はもうすぐ。
みんなでツバメ一家を見守りながら
穏やかに日常を過ごせる場所にいることの幸せ。
来年もここがそんな場所でありますように…
そんなことを願いました。
今はもうだれもいないお家と、きれいになった真っ白の壁を見上げながら。
(神谷)
旅立ちの日
