せみの一生は短い というのを聞いたことがある。
私もそうなんだろうなと思っていた。
この夏、予期せず、せみがでてくる瞬間をみた。殻からゆっくりとでてくる瞬間。
せみは、ジージーうるさくなくし、見た目もいかつい、という印象だったけれど、
はじめて見るその光景は、静かで、とってもきれいだった。
目がつやつやしていて
羽根はみどりいろで、葉っぱの葉脈みたいな繊細なもよう。
よくぞ、あの殻に立派な羽根がおさまっていたもんだと、みごとな収納力にびっくりする。
その場で一緒にみていた大人たちが口々にいう。
せみってどれだけ冬眠するんだっけ?
一年?三年? いや、七年?
誰も正解は知らず、でも、年単位だろうということになった。
で、土の中からでてきて、一週間の命だよね?
その間に、相手をみつけて、たまごを産んだりするんだよね?
それって超いそがしいやん!
数年間の地中での冬眠と、一週間の地上での活動。
いやまてよ、冬眠の間も、りっぱに生きてるよな、とふと思った。
あんなにきれいな羽根は、地中の冬眠時代にできあがったもの。
そして、一生が短いっていうこと。それってどうなんだろう。
一年にしろ、一週間にしろ、その生き物にとってベストな時間なはずで。
せみだって、人間の時間の尺でいわれたくないだろうな。
うまれてから百年も生きられなくて、
その間に
歩けるようになって、運動したり、勉強したり、恋愛したり、働いたり、
あれも欲しいな、これも食べたい、
あそこにも行ってみたい、
泣いて、怒って、笑って。
それって超いそがしいやん!
って人間のことを
大変だねってみている亀さんが
猿沢池あたりにいそうです。
せみのこと、何も知らないことがわかった。
ひとまず、図鑑をひらこうか
(服部)