NAOTの靴との出会い。
NAOTの靴と出会って知ったことや感じたこと、そして変わったこと。
スタッフそれぞれにもその歴史があります。
第8回「私とNAOT」は、約3年間アルバイトスタッフとして
たくさんのお客さまと接してきた米山にインタビュー。
大学を卒業して、新たなチャレンジをするため、この夏にNAOTを卒業しました。
大人になるって、働くって、、、?
悩みながら、迷いながら、いつもコツコツと目の前のことに取り組む姿が
印象的な米山のリトルストーリーです。
ー 札幌出身なのに、そもそもどうして奈良の大学を選んだの?
中学?高校生のときかな?
「リアルクローズ」っていうデパートで働く女性のドラマが当時放送されていて、それを毎週楽しみに見ていたんです。
ぼんやりと服に関わる仕事っていいなって。
ー あ!それ私も大学生の時に見てた!
私はその後、ほんまにデパートに就職したで(笑)
そうなんですか!?
私はそのドラマの影響で、作り手と買い手を繋ぐっていう仕事というか…
服や服飾に関わる仕事のなかでも、例えば自分が本当にイイ!って思ったものを、どうやって色んな人に知ってもらおうかとか、そういう“繋ぐ”仕事をやってみたいって思ったんです。
そういう仕事だったら、専門学校ではなくて、もう少し広い意味で服に関わる勉強がしたいな、と思って四年制大学で探しました。
そしたら実は服飾の学部がある大学ってほとんどなくて。
東京か、奈良か・・・って考えたときに、父が京都・奈良が好きで子供のころに旅行でくることも多くて。
関西の方が馴染みがあって。それで奈良の大学を選びました。
ー 私だったら絶対に東京を選ぶなあ。
なんかキラキラして、楽しそう!って10代のときなら思っちゃう。
奈良のアットホームな空気感が好きなんです。
お店も商売っ気がないというか(笑)
そういう町全体の空気に違和感がなくて、スッと馴染めましたね。
ー 確かにそれはそうやね。私も今ならその魅力、分かるなあ。
米山さんは、NAOTの靴を風の栖で取り扱っていたときから働いてくれているけど、どうやってたどり着いたの?
大学2年のときですね。
アルバイトも服に関わることがしたいなって思ったんです。
でも奈良で探しても当時はあんまりなかったんですよね…。
そしたらツイッターでチェックしていた、ある洋服のブランドのお店の人が、NAOTの靴を履いてるって発信されていて。
その靴が気になると思って調べたら、奈良のお店だったんです!
ー そんな偶然、実はなかなかないよね。ご縁というか、呼ばれてるというか…!
そうなんです。しかも、ちょうど求人募集していたんですよ。
でも週5日、働ける人を募集してたから無理だろうなって思ったんですけど
駄目もとでお店に行ってスタッフの方に声をかけてみたんです。
そしたら、履歴書持ってきてくれる?って言ってもらって、今に至ります。
ー それにしても大学生でNAOTの靴ってすごいね!私なんて2,000円くらいの靴を買ってたよ。
いや、そうですよね。私も贅沢だなって思います。
もちろん沢山は買えなくて、毎年1足ずつ増やしていって、いまは3足愛用しています。
ー NAOTで定番の3足やね!
はい。一番はじめはIRISにしました。
本当はDANIELAのMatt Blackカラーが欲しいなって思ってたんですけど、風の栖は脱ぎ履きが多いから、まずはサボを選びました。
ー サボは日々の生活で必需品よね。
私は足の長さ自体が小さいし、甲が薄いからサボ履けるかな。
カパカパ、スリッパみたいにならないかな。って実は少し不安だったんです。
最初履いたとき、やっぱり少しゆとりがあるかなって思ったんですけど、NAOTのインソールの下に、一枚薄い中敷きを足して底上げするといいよ!って、スタッフに教えてもらったんです。
実践したら、本当に気持ち良くフィットして、これなら私も履ける!と思って選びました。
ー NAOTの靴はインソールを取り外せるものが多いから、そういう調整ができるのは私もいいなって思ってる。
私も調整をして靴を履くっていうのは初めてで、すごく驚きました。
で、2足目はOLGAにしました。
ー あれ!はじめはDANIELAが欲しいって思ってたんじゃないの?(笑)
実はそのあと、もうひとつのひも靴(KEDMA)が登場して、迷いはじめたんです(笑)
OLGAはゆくゆくは絶対に買うなと思っていたんで、先にOLGAを買っちゃっいました!
厚手のタイツと合わせて履くのがかわいいなと思って冬に。
最後にやっとDANIELAを買いました。
ー とりあえず、その3足があれば安心やね〜!
ここで働くようになってからベーシックなもの、特に服とか身につけるものを選ぶようになったんです。
お客さまや、スタッフが履きこんでいるNAOTの靴を見ていると、長く使って、古くなればなるほど格好良くなる。
それを見てると、あ、いいものってこういうことなんだなって知ったんです。
ー それ、私ももっと若いときに知りたかったなあ。
そうですね。こういう価値観に、この歳で出会えてよかったなって思います。
もちろんKEDMAもすごく好きなんですけど、よりすっぽり包まれて安定感のある方が、私の足にはしっかりフィットするなと思って。
長く履くことを考えてやっぱりDANIELAにしました。
学生でたくさんは買えないから、オールソール交換ができるっていうのも嬉しくて。
めちゃくちゃベーシックなものを。
実はDANIELAは大切な人にもプレゼントしました。
ー お!ペアシューズ!素敵だね。
足がすっきり細身だからDENALIよりDANIELAが合うなって。
それから、あとはコレを履いてほしいという私の好み!(笑)
DANIELAはサイズさえ合えば男女兼用なのでおすすめです。
モノを大事にする人なのでピッカピカに手入れして履いてくれてますね。
ー アルバイトだって、いろんな仕事があって好きに選べるわけじゃない?
靴を届ける仕事って、大変じゃなかった?
そうですね…もちろん初めはむずかしいなって思いました。
ある日、お客さまが2種類の靴で迷われて、ちょっと考えてまた来るねって帰られた方がいらっしゃったんです。
私も普段買い物をするときに迷う方で、一旦家に持ち帰ることも多いから、特に何も感じなかったんですけど、
さっきの方はなんで今日選ばれなかったの?って、聞かれたんです。
ー なるほど。
それは、どうして売れなかったの?っていう意味ではなくて、自分ひとりでやろうと思わないで、こんなに周りにいるんだから頼っていいんだよって言われたんです。
僕たちは他の仕事をしているかもしれないけど、どんな業務もNAOTの靴を好きな人に、きっと好きになってもらえるだろう人に、必要な人に、届けたくてすべてやってるんだと。
だからその時、だれかを呼んでくれたら、その方にとって、ぴったりの一足を見つけるお手伝いができたかもしれない。
靴がどうとか、買ってもらえた、もらえなかったの話じゃなくて、働き方みたいなものを教わったんです。
その出来事は、自分のなかでは衝撃的だったんです。
少し慣れてきたころで、ひとりで完結できると、心のどこかで思っていたんですよね。
結局は社員もアルバイトも、年齢もなにも関係なくて、みんな同じ方向を向いてるチームなんだってっていうことに気付かされて、ハッとなりました。
ー その話を聞いてどう思った?
ズシンときたというか・・・
大人になって怒られることなんてないじゃないですか。
だからショックだったっていうのもひとつですし、自分でできると思ってた、そんな自分は傲慢だったなと。
結局は目の前の方に全力で自分は向き合ってたのかなって考えたときに、そうではなかったなって。
ー それ以来、なにか変わったことってある?
その場をみんなで楽しもう!と思うようになりました。
私では、お客様の悩みをうまく解決できないなって思ったら、似た足で同じ悩みを持ってるスタッフを呼んだり。
逆に他のスタッフがお話しているお客さまに、私が話しかけることもありますよ(笑)
少し離れたところから見ていて、純粋に私はこっちが似合ってると思います!ってちゃんと伝えられるようになりました。
それまでは、その方が検討しているものの中から、いっしょに選ぶっていう感じでしたけど、お客さまが眼中にもない、でも私はこれ合うんじゃないかなっていうものを伝えることもあって。
それができるようになったのは確実にその一件で意識が変わってからですね。
ー 3年でたくさんの方と出会ったと思うけど、印象に残っている方っている?
実は今日、私の勤務が最終日だと知って来てくださる方がいるんです。
私はもちろん、毎日ここにいるわけではないんですけど、なぜかお店に来てくださるときに毎回私がいて。
ー それもご縁だね〜!
そうなんです。はじめてお話させてもらったときの空気感、なぜかすごく覚えてるんですよね。
その方とお話をしているときに、別のお客様のお子さんがすごく話かけてくれて(笑)
お姉ちゃんのブローチかわいいね、とか言って。
その空気をその方もすごく楽しんでくださって、場がすごくアットホームだったんです。
ちょうど私と同じ、すっきりとした足をされていたこともあって、一部分にだけ中敷きを足して底上げをしてみたり。
お話をお伺いしながら、相談しながら、一足を選んでいただいたんです。
そしたら、帰りに私の名前を聞いてくださって。
しばらく経ったときに、この前の靴が本当によかった!って、私を訪ねてこられて。
そうやって信頼して相談いただけるのは私自身も本当に嬉しいです。
ー 名前まで覚えてくださるのは嬉しいね!まさに、この仕事のやりがいというか。
実は接客って、なんていうか・・もっと軽いものだと思ってたんです。
でもそれはちがったんですよね。
ー 靴っていうアイテムがそうさせている部分もあるのかもね。
ひとの足を見たり、触れるってなかなかないことだから。
その瞬間、目の前にいる方としっかり向き合わないといけないですよね。
すごく責任があると思います。
ー その責任がまた楽しかったりもするよね。
そうですね。サイズ、デザインがぴったりで喜んでくださったり、革調整をしていい感じになった!って言ってもらえると、「あーこの靴はこれから本当にこの方の相棒になるんだな」って、嬉しくなります。
靴ってそういうものなんだなって。
ー 学生時代の大半を私たちのお店で過ごして、そんな風に同じ気持ちでNAOTの靴を届けてくれてありがとう!
気づいたら3年も経っていましたね。
NAOTで働いてるスタッフって、みんなまっすぐここに来た人いないじゃないですか(笑)
バックグラウンドもみんなバラバラ。
チャレンジ精神がギラギラ、燃えてますっていう感じではないけど、エネルギーというか…キャラクターは違うのに内にある強さを感じるんです。
学生時代って先輩っていっても2,3歳上、言っても同世代じゃないですか。
でもここにいると本当に年代も幅広くて、その分いろんな経験もしてるから、相談すると大概そんなの、なんとかなるわ!って言われるんです(笑)
ここにいたらそのエネルギーを自分に取り込めるというか、力が湧いてくる気がして、その心地良さで気付けば3年経っていたなっていう感じです。
ー この3年で米山さん自身が変わったことってある?
いや、それをいうならここに来なければデンマークに留学なんて、絶対にしようと思わなかったです!
作り手と買い手を繋ぐっていうことに興味があったんですけど、ここで働くうちに少し縫製のお手伝いをさせてもらったり、靴の革調整をしたり、自分の手が加わったものをお客さまに届けて喜んでもらえるってすごく嬉しいなって気持ちが大きくなって。
そしたら作り手側になりたいなっていう思いがジワジワ湧いてきたんです。
デンマークの刺繍学校で学ぶために留学して、手仕事を学んで、それを糧に今後仕事ができたらなと思っています。
ー うんうん。人生は正規ルートじゃないほうが楽しいよ?(笑)
本当にそう思います(笑)
ここにこなければ、きっと夢なんか忘れて、なんとなく就職してたと思います。
持ち主に本当に寄り添える、流行にとらわれない、身につけるものを作りたいです。
身につけることで、気持ちが少し豊かになるような。
ー しっかりしてるね(笑)7年前の私に聞かせてあげたい…
いや…資質は本当は腰が重いし、同じ作業を淡々とするのが好きだったりするんですけど、周りの大人をみていると、少しチャレンジしたその先に楽しいことがあったりするんだなっていうことを知ったんです。
ワクワクしながら生きて、働きたいなって。
ワクワクできる道があるのかもしれないって、ここで働いて思いました。
もちろんデンマークにもたくさんの思い出とともに、このNAOTたちを連れて行ってきます!
ー 頼もしい!
働きたくない、とか、あぁ社会人か・・・とか。
同世代の友人からはそういう話をよく聞くんですけど、私はここにいたからか、そういう気持ちはなくて。
もちろん大変なこともあると思うんですけど、自分の気持ち次第なのかなって思うんです。
だからこそ自分でしっかり選んで、ワクワクしたいです。
ー 帰ってきたらお土産話、たくさん聞かせてください!いってらっしゃい!
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後日、デンマークから写真が届きました!
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スピーカー:米山
インタビュー・編集:神谷