靴を履いて、旅に出る。
旅先だから、聴きたい音楽がある。
「旅で聴きたい曲」をテーマに、音楽関係者がおすすめの4曲をセレクト。
あの人は、どこにどんな音楽を連れていくのでしょう?
第五回目のゲストは愛猫家の音楽家、近藤研二さん。
2015年に音楽グループ・栗コーダーカルテットを脱退後、ギターやウクレレなどの弦楽器奏者としてのソロ活動だけでなく、様々なジャンルのアーティストとも多数共演されています。また映画・アニメ・テレビ番組の音楽も手がけられ、「つみきのいえ」や「しろくまカフェ」など、彼の創り出すシンプルながら心に残るメロディーに病みつきになっている人も多いはず!
そんな近藤さんが「旅で聴きたい曲」とは?
さあ、旅に出かけましょう!
artist: Franck Barcellini
title: MON ONCLE – ADIOS MARIO (視聴可)
album: 1995年 『ぼくの伯父さん~ジャック・タチ作品集』
ジャック・タチの映画にはいろんな音楽家が携わっているけれど、不思議とどの劇伴にも共通した世界観がある。このチャーミングな曲のように、フランス人のエスプリがアルバムのどの場面にも散りばめられているようだ。目の覚めるようなエスプレッソを飲みながら、またバスティーユ広場の石畳を3拍子で歩きたい。
artist: Crosby, Stills, Nash & Young
title: teach your children (視聴可)
album: 2002年 『小さな恋のメロディ O.S.T.』
ビージーズのテーマ曲は少し湿気のある朝のロンドンを思い出す。教会からは子供たちの賛美歌が漏れ聞こえてくる。イタズラな瞳をしている彼らの将来を想像するのも楽しい。魔法使いになるかもしれない。小さい頃この映画をみて「僕もあの手漕ぎトロッコに乗って一緒に旅をしたい」と初恋のような感情を抱いたのを覚えている。今思うと最後にCSN&Yの曲がかかることで異国へ誘うような演出だったのかな。
artist: Gal e Caetano Velloso
title: Avarandado (視聴可)
album: 1967年 『DOMINGO』
予期せぬ珍事で4時間超のライブとなったジョアン・ジルベルト伝説の日本公演を目撃した時、地球の裏側ではこんな時間が流れているのかと目眩がした。音楽家として一度は訪れたい国ブラジル。あの芳醇な和声、ボサノヴァギターの正確なバチーダに乗せ揺れる言葉、訛りのあるサンバのリズムを肌で感じたい。そして、カエターノとガル、当時25歳と22歳だったこの男女から、かくも美しく静かな音楽がどうやって生まれたのか、思いを馳せたい。おそらくサウダージの「サ」さえ理解はできないのだけれど。
artist: 近藤研二
title: 何処から来たの (視聴可)
album: 2016年 『子猫のロンド』
フィンランドに旅した時、北極圏のサーリセルカとロバニエミでオーロラを見ることができた。帰国後、我が家に子猫がやってきて、フィンランド語で「こんにちは」にあたる「モイ」と名付けた。そんな体験からできた曲だけれど、モイが病気になってしまった今は、もっぱら通院時のBGMになっている。車中でこれを流すとなんだか不思議と落ち着くようだ。いつかあの緑色に揺れる光の下でこの曲を演奏してみたい。あ、待てよ、手がかじかむか。
近藤 研二 ・ KONDO Kenji
音楽家、ギタリスト、作編曲家。NHK Eテレ「0655」「2355」、米国第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した『つみきのいえ』をはじめ、数多くの映画、テレビ等の音楽を担当。並行して、「Controversial Spark」「図書館」「ワッツタワーズ」のメンバーとしても活動。2015年ソロアルバム『子猫のロンド』を発表。2016年11月には写真絵本『こねこのモイ』を出版。今年3月には2枚目となるCD『MOINGO』を発表。
kenjikondo.jp