風の道を


 

夕焼け
          
 

電車の中 小さな男の子と母親が
前の席に座った
席には 夕焼けがあたっている
 
 
男の子は
――ママのかお オレンジいろ
  オレンジいろ!
と、母親の頰をつついている
母親は 目を閉じている
 
 
男の子は靴をぬいで 座席に立つと
――ママのかお オレンジいろ! 
と、じっとしていない
 
 
やがて 男の子は靴を履き  
急に 陽がかげった
夕焼けを 靴の中に入れていったように

 
 
 
 
 
詩・はたち よしこ
絵・安福 望


 


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