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甲斐みのりさんとめぐる、NAOTキャラバン #3「札幌」


なにより好きな、まち歩き。
古風でけなげな喫茶店。物語を秘めた建物。見目麗しい甘味の誘惑。
動物の形をした食べ物。暮らしになじむ手仕事。
まちの中には、たくさんの好きが潜んでいる。
歩いて、立ち寄り、歩いて、立ち止まり、歩いて、休んで、また歩く。
さあ、今回は、どのまちへ?
キャラバンの途中、どんな物に、出会えるでしょう。

 
 
#3「札幌」

 
思春期の頃から、北海道が舞台のドラマを見て育ったせいか、北海道を旅することに大きな憧れを抱いてきました。初めて札幌を訪れたのは20代前半で、その後は数年に一度のペース。東京~新千歳空港間は特に、飛行機のチケットと宿代がセットになった旅行パックが多く見つかり、価格も時間も、意外なほど気軽に旅できると分かったので。
 
2回目の北海道は「お菓子の旅」とテーマを決めて、帯広から札幌までを移動しながら、お菓子屋さんを巡りました。小麦や小豆の栽培、酪農が盛んな北海道にはお菓子の名店が多く、お菓子好きにとって夢のような土地。「六花亭」や「千秋庵」など有名店のお菓子から、昔ながらの素朴なおみやげ菓子まで、ダンボール2箱分、お菓子を買い込んだほど。
 
『地元パン手帖』という本を出すまでに地元パンに魅せられていったのも、札幌を旅したのがきっかけ。まちなかのコンビニで、ふと見たパンコーナーに、これまで見たことのないパンがいくつか並んでいたのです。そのことが「パンにも地域性があるのだ」と意識するきっかけとなり、今でも北海道ではスーパーやコンビニのパンコーナーを見るのを欠かせません。
 
数十分車を走らせたり電車に揺られるだけで、大自然の景色に出会える土地。自然の中に身を置くことと同じくらい、やっぱり北の大地に作られたまちなかを歩くのも楽しい。まちじゅうに開拓使時代の洋風建築が点在しているので、歩いたり、市電やバスを乗り継いで、レトロ建築めぐりも。碁盤の目状の街並みは移動するのに分かりやすく、迷いなくすいすい進めるのが嬉しいところ。
 
札幌には自家焙煎のコーヒー屋が多く、歩き疲れて道の途中のコーヒー屋に入ってみると、思いがけず美味しいコーヒーに出会えたりします。

 
 
パンやお菓子で“全国どうぶつめぐり”
 
何十年か前には「コロちゃん最中」という名前で人気を博していたという最中。昔の最中の型を探して復活させてからは、再び大きな反響を呼んだ。
セットの内容は、クマの最中皮、粒あん、栗あん、きな粉、竹へら。“クマのごはん”とシールを貼った2種類のあんこを、自分で最中皮に詰めて味わう。
あんこに、バターやドライフルーツを合わせてみたり、クマ最中そのものをおしるこの椀に入れてみたり。クマの表情が愛らしいばかりか、自分で好きなように手を加えて味わえるのが、このお菓子セットの楽しいところ。

                        三好屋の「北海道 クマの形をした最中セット」

 
 
“帰り道に”ごほうびスイーツ
 

札幌では少し前から、夏も冬も一年中、夕食や飲み会のあと、最後にパフェを食べる「シメパフェ」が定番に。寒い地域で夜に?私も最初は不思議に思うも、北海道の室内は、夏は涼しく冬は暖かく、とても快適。みんなで集まって過ごした最後に、甘いパフェを味わいながら、もうひとおしゃべりしたくなるのも納得。そんなわけで私も、北海道を旅すると、必ずシメパフェを味わってから、ホテルの部屋に。
「札幌パフェ推進委員会」や「シメパフェMAP」があるほど、喫茶店やカフェだけでなくいろいろな場でパフェが味わえる札幌。どこにしようか……迷ったら、まちの老舗へ向かえば間違いなし。札幌オリンピック開催前の昭和47年に創業した喫茶店「cafe ひので」は、入口のショーケースに食品サンプルが並び、インテリアも昔ながらの昭和の雰囲気。メニューは、軽食も甘い物も正統派のクラシカルな佇まいで、パフェには生クリームがこんもり。一日の最後に甘いパフェをほおばりながら、明日一日の計画をたてるのが、札幌の夜の幸せな過ごし方。

                           「cafe ひので」のチョコレートパフェ

 
 
“ときめく手仕事”を持ち帰ろう
 
東北生まれの郷土玩具“こけし”同様、昭和の家庭の、床の間や玄関飾りの定番だった、北海道みやげ“木彫りの熊”。鮭を加えた熊のイメージが強く、実際のウイスキーボトルを抱えたものなど、一時期はさまざまにアレンジされていた。
発祥は大正時代の北海道八雲町。冬の間、農作業ができない農家の副業として、美術作品を作って販売することを、尾張徳川19代当主・徳川義親が推奨。その一つに、スイスの木彫りの熊を参考にした、木彫りの熊が含まれていた。
北海道みやげとして一大ブームをおこしたあと、一時期は昭和の遺産のように語られることもあったけれど、近年再び、造形の美しさや熊の表情の豊かさに魅せられる人が増え、脚光を浴びるように。作者や年代ごと個性が異なり、自分の好みを見出す楽しみがある。私も信頼を寄せる書店の店主に『北海道 木彫り熊の考察』という木彫りの熊だけを集めた写真集を紹介してもらって、北海道でもっと色々なものを見てみたいと思った。
大きなものだと置き場所や、おみやげに差し出す人を選ぶけれど、サイズが小さければちょっとしたスペースに飾っておける。
いつか、「八雲町木彫り熊資料館」にも行ってみたい。


                           木彫りの熊ミニ(D&DEPARTMENT)
 
 

まち歩きの途中に“乙女喫茶”

 
北海道のお菓子屋さんで、もっとも有名なのが「六花亭」。百貨店の催事・北海道展などでお菓子を求めることはできるけれど、北海道では各所に喫茶室付きの店舗があり、ケーキや軽食などを味わうことができる。
ここでおすすめする「六花文庫」は、六花亭喫茶室や、誰もが思う喫茶店とは異なり、主役は本。お菓子、食べ物、飲み物など食文化に関する本を中心に、約7000冊の本を所蔵する、図書室のような空間。もともとは帯広本店3階にあった書庫を、旧真駒内店だった建物に移して、平成16年に「六花文庫」オープンした。
本の貸し出しはしていないけれど、館内での閲覧は自由。築40年以上の民家はいくつかの部屋に分かれ、好きな場所を探して思う存分、食の本と向き合える。
1杯300円、おかわり自由でコーヒーを飲むこともでき、ご近所さんも、旅行者も、“本に囲まれたお家”という憧れの環境を、コーヒー片手にしみじみと味わう。
すぐ近くには、昭和47年に開かれた札幌オリンピックの名残が色濃い五輪団地があり、辺りをぶらりと歩くのも楽しい。

                                      「六花文庫」

 
 
立ち寄りたい“レトロな建物”

 
札幌といえば、「札幌市時計台」がもっとも知られた札幌を象徴する建築だけれど、他にも、「豊平館」「知事公館」「北海道庁旧本庁舎」「北海道大学」「サッポロビール博物館」など、クラシック建築好きが立ち寄りたい建物があちらこちらに。
 そんな中、広大な敷地に50棟以上、明治・大正時代の歴史的建造物を移築復元した、一つの村のような野外博物館「北海道開拓の村」では、さまざまな貴重な建築をまとめて見られるので、レトロ建築好きにおすすめ。
 全てが作り物ではない本物の姿で、時間旅行をしているよう。映画やドラマの撮影に使用された建物もたくさんあります。とにかく広いので、夏は馬車鉄道、冬は馬そりで巡るもの楽しい。北海道の開拓の歴史を学ぶこともできる。


                                   旧開拓使札幌本庁舎

 
 

 


 
 
NAOTキャラバンは6/22(金)〜23(土)まで、札幌市のD&DEPARTMENT HOKKAIDO(庭ビル)さんにて開催!
みなさまのご来場をお待ちしております。
 
〈キャラバン詳細はこちら〉
’18 6/22 fri.〜23 sat. NAOTキャラバン2018 in 札幌
 
 
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