一枚の写真
家の門の前に百日紅の花が咲いていた。
淡い白に近い色だった。
父が亡くなった夏のこと、花があまりにきれいなので、
集まった数人で写真を撮ることになった。
みんなは玄関にあったサンダルなどを履いて花の下に出たのを憶えている。
その後、出来上がった写真をみると、母は父の革靴を履いている。
そういえば、母が来ないのでカメラをかまえながら
「早く 早く」と呼んだ。
そのとき玄関には他に履物がなく、
母は、とっさに父の靴を履いたのだろう。不格好な足元。
けれど思った。亡くなった父も写真に入りたかったのではないだろうか。
几帳面で、靴は自分で磨き、いつも汚れのない靴を履いていた父だった。
写真の中でみんな微笑んでいる。
風の道を
