リトルストーリー
2018.09.28

甲斐みのりさんとめぐる、NAOTキャラバン #7「福岡」


なにより好きな、まち歩き。
古風でけなげな喫茶店。物語を秘めた建物。見目麗しい甘味の誘惑。
動物の形をした食べ物。暮らしになじむ手仕事。
まちの中には、たくさんの好きが潜んでいる。
歩いて、立ち寄り、歩いて、立ち止まり、歩いて、休んで、また歩く。
さあ、今回は、どのまちへ?
キャラバンの途中、どんな物に、出会えるでしょう。

 
 
#7「福岡」

 
数年前に、京都の友人と現地で合流し、博多を旅した。東京からは飛行機。京都からは新幹線。福岡空港は市街地に近く、限られた時間の中でたくさんの行きたい場所を持つ私たちには、非常にありがたい。
 
着陸してから数十分後。うどん伝来の地といわれる博多で最古のうどん店「かろのうろん」で、やわ麺に薄口こんぶだしのゴボウ天うどんと、かしわおにぎりを頰ばることができていたのだから。食後は、博多一の老舗喫茶店「ブラジレイロ」や、明治後期に保険会社として建てられた赤レンガの建物「福岡市文学館」へ。
 
おやつどきにはところどころでひと休みしながら、ホワイトデー発祥の和菓子店「石村萬盛堂」や、チロリアンというロールクッキーで知られる「千鳥屋」、博多っ子に人気のチョコレート専門店「チョコレートショップ」、ダックワーズ発祥の店「フランス菓子16区」など、お菓子屋巡り。
 
夕方過ぎから、繁華街から少し離れた店「やま中本店」で、味噌味の博多もつ鍋を堪能。中州へ戻り、数々のミュージシャンを輩出している福岡らしさを体感したいとミュージックバーを訪れ、現役ミュージシャンのオーナーによる生ライブを聞かせてもらう。夜食に「初代だるま」でとんこつラーメンを食べて、一日目は終了。
 

 
2日目の朝は、博多の台所「福岡市長浜鮮魚市場 市場会館」から。仲買人とともに一般客も利用できる食堂街の「おきよ食堂」で、ごまぶり定食。腹ごなしにぶらぶらとまちを歩きながら、ネル・ドリップコーヒーの名店「珈琲 美美(びみ)」を目指す。コーヒーの香りはもちろんのこと、店の佇まい、働く人の所作、隣人の振る舞いにまで、品が漂う。
 
昼は、博多が生んだ、お笑い界・文化界のスター、タモリさんおすすめの「うどん平(たいら)」で、昨日同様、ゴボウ天うどんと、かしわおにぎり。それからは、本屋・洋服屋・雑貨屋・家具屋・ギャラリーを見て回る。夜は「角打ち(かくうち)」と呼ばれる、立ち飲みできる酒屋で、親世代の博多っ子と親しく飲み交わし、最後は博多ならではの屋台で、やきとりとラーメン。
 
どの店でも初めて会う人たちが温かく出迎えてくれて、一期一会の出会いでも、たくさんの友だちができた気がした。みな親しげで、底抜けに明るい。同時に、ふしぶしでシャイな雰囲気や気遣いも見える。もてなしは、楽しく優しく温かく。博多っ子の流儀を感じたのだった。
 
 
 
パンやお菓子で“全国どうぶつめぐり”
 
「ハイジ」は、手作りドイツケーキの店。オーナーは、ドイツ北部に位置するハンブルグで修行後に、地元に自分の店を開いたそう。30年以上前の創業時から、つぶらな瞳の「スワン」はアイドル的な名物お菓子です。
さっくり歯切れのいいメレンゲに、時間をかけて丁寧に作る生クリームの組み合わせ。クリームは、濃厚ながらあと味さっぱり。紅茶やコーヒーに添えて、おやつの時間を。

                                    「ハイジ」のスワン
 
 
“帰り道に”ごほうびスイーツ
 

日頃、東京にある「鈴懸」に通うのは、鈴乃◯餅(すずのえんもち)や鈴乃最中が、手土産の定番だから。食感がよく上品な甘さで、お菓子が包みにおさまる姿も美麗。そんな鈴懸の本店は福岡。そうして、カフェが併設されているのは本店のみ。ランチもできて、まち歩きの途中にひと息つける。
 
いくつかの鈴懸の味をいくつか同時に堪能できるのが、ほうじ茶付きの、「すずのパフェ」。てっぺんに「鈴懸」を代表するお菓子・鈴乃最中の皮がのった和風のパフェ。バニラ、抹茶、黒ゴマ、キャラメル、4種類ある自家製アイスクリームから3種類の味を選べるのも嬉しいかぎり。水羊羹、豆、季節の果物、生クリームがたっぷり。
 
カステラを香ばしく焼いた「かすてぃらバター焼き」もおすすめ。外側はカリッと。中身はふんわり。卵をたっぷり使ったカステラとバターの組み合わせで、和風フレンチトーストのよう。キャラメルアイスをからめながら味わうとなお美味。

                                「鈴懸本店」のすずのパフェ

 
 
“ときめく手仕事”を持ち帰ろう
 
福岡県朝倉郡東峰村で300年以上の歴史を持つ小石原焼の窯元と、フードコーディネーター・長尾智子さんが手がける、“新しい民芸”の器。テーマは「料理をおいしくする器」。カップ、スープボウル、パン皿、鉢、ポット、水差しなど、バリエーションも豊か。手触りがよく、素材に寄り添い、日々の食卓がより愛おしいものに。
 
「小石原ポタリー」というブランド名のもと、白釉と形は共通で、色や刷毛目やカンナの模様など、窯元ごと異なるのが特徴。自分好みを探す楽しみがある。立ち上がりから10年が経ち、白釉の器の他にも、飴釉、黒釉、鉄釉などの取り組みも。
薬院にあり、様々な手仕事や道具に出会える「B・B・B POTTERS」にコーナーがある。

                                      小石原ポタリー

 
 
まち歩きの途中に“乙女喫茶”

 
京都で行きつけの喫茶店のマスターに、福岡といえばまずこちらと教えてもらったのが「ブラジレイロ」。昭和9年の創業で、福岡で福岡最古の喫茶店。当時、ブラジル・サンパウロのコーヒー局が、日本にコーヒーを普及するため作った店。香り高いコーヒーもモダンな建物は博多っ子の憧れの対象。火野葦平や北原白秋など多くの文化人も訪れたそう。
 
現在の3階建ての建物には、1階と2階に客席。壁はギャラリーさながらに、今とは違う場所に店があった創業当時の写真やポスターが飾ってあって、それらを眺める時間もまた楽しい。
 
自家焙煎のコーヒーの中でも、「クラシックブレンド」は、二度の変化を味わえる。最初は豊潤な香味を感じ、次にホイップクリームを浮かべてまろやかさを味わう。カップやシルバーのデザインにも注目を。
それから、ミンチカツレツやオムライスなど、手づくりの洋食も大評判。本格的なレストランに負けない味。ケーキ類も手づくりで、ランチ時間もおやつ時間も大満足。

                                     「ブラジレイロ」

 
 
立ち寄りたい“レトロな建物”

 
明治43年竣工の、フレンチ・ルネッサンス様式が基調の木造の洋館。設計者は、太宰府天満宮桜門なども手がけた、三條栄三郎。九州沖縄八県連合共進会の来賓接待所として使用する目的で建てられ、皇族の宿泊所として利用されたり、来賓のための夜会なども開かれたそう。
 
戦後は、高等裁判所、農林事務所、教育委員会庁舎などに転用。一時は取り壊しが決まるも、保存運動がおこり、数少ない明治時代の木造公共建築の遺構として、国から重要文化財の指定を受けることに。地元では「チューリップ屋根の公会堂」と親しまれている。
 
シンメトリーにデザインされた階段が美しい広間。かつて優雅にビリヤードに興じた遊戯室。大理石のマントルビースがある食堂。ロマンチックな気配に満ちた内部では、レトロ衣装体験も可能。貴賓館カフェもあり。

                                   旧福岡県公会堂貴賓館
 
 

 


 
 
NAOTキャラバンは10/12(金)〜14(日)まで、福岡市のgallery LUMOさんにて開催!
みなさまのご来場をお待ちしております。
 
〈キャラバン詳細はこちら〉
’18 10/12 fri.〜14 sun. NAOTキャラバン2018 in 福岡
 
 

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