私たちはこれまで NAOTという靴を通じて、多くの方との出会いがありました。出会った方はミュージシャン、イラストレーターさん、文筆家さん、カフェ店主さん、作家さん等、それはもう様々なお仕事をされている方ばかり。
はたらく姿勢。はたらく理由。はたらく道具。はたらく仲間。意外と知らないあのひとの事、もっと知りたいな。会いに行ってお話してみたい!人の数だけある「はたらく」にまつわるストーリーを聞かせていただきたいなと思い、この企画がスタートしました。
連載 第11弾 は NARA OPTIQUE(ナラオプティーク)の寺田顕さん。奈良のちょっとレトロな船橋商店街にお店を構える眼鏡屋さんです。
NAOTスタッフにもNARA OPTIQUEさんで選んだ眼鏡をかけているスタッフが多数!寺田さんがセレクトしたデザインのメガネが素敵!だというのは言わずもがな、インタビューでは目と身体、そして心との繋がりなど視力測定の深いお話を聞くことができました。
まさに目からウロコのことばかり。どうぞご覧ください。
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ー眼鏡屋さんになろう!と思ったきっかけは?
昔から眼鏡が好きだったんです。
私が大学の時…約20年前なんですけどね、眼鏡は”ものをよく見るための道具”から”ファッション”という概念が生まれてきたタイミングでした。専門店も増えてきた時代で、それを見て回るのが好きでしたね。お金を貯めてよく眼鏡を買っていたんです。なので、当初はあくまで好みとかファッションという範疇での「好き」でした。卒業してからの就職先は眼鏡とは全く別。お花屋さんへ就職をし、”眼鏡好きの花屋さん”としてずっとやっていたんです。
でも、やはり次第に眼鏡の方がどんどん好きになってきて…思い切って眼鏡屋さんに転職したのが、今の仕事をする事になったきっかけですね。
ー「好き」がお仕事になったのですね!
そうですね。20代も終わりの頃でこれからどうしていきたいかを考えた時期でもあり。せっかくなら好きなことをやろう!と思って飛び込んだという感じです。眼鏡屋さんというのはフレームを売るだけではもちろんなくて、いわゆる視力測定の知識も必要。そう言った知識もゼロから学び、約10年間大阪の眼鏡店で働きました。そこも楽しかったのですが、やはり生まれ育った奈良でやりたいなという想いがジワジワと湧いてきましてね。今に至ります。
ーすごく素敵なお店ですよね。独立してご自身のお店をつづけていく力になっているものはありますか?
ありがとうございます。眼鏡って子供から年配の方まで幅広く使うモノじゃないですか?ファッションとしてはもちろん、性別・世代を問わず、必要としてくれるものに関われるのはいいなと思いました。
洗練されたデザインのものや、個性的な眼鏡を扱っているお店は奈良にあまりなかったので、はじめはこういう眼鏡があるんだということを紹介したくて自分のお店をスタートさせたたんです。かける方の気持ちが明るくなるようなメガネをセレクトするようにしています。たくさんのブランドというよりは、一つのブランドを多めに仕入れて、そのブランドの世界観を知ってもらいたいなと思ってやっています。
”フレームを販売すること” ”目の測定をすること” この二つが眼鏡屋さんの柱。測定はもちろん丁寧にやっていたのですが、当初は「見えないものをよく見えるように」という一般的な測定しかやっていませんでした。ところが3年前、視覚情報センターの田村先生との出会いが今の私のお店の在り方を大きく変えることになりました。
基本的に近眼であれば遠くがよく見えるように、老眼鏡だったら近くがよく見えるようにという状態をレンズで作ってあげる、という発想が一般的な測定方法。その「見えなくなったからよく見えるようにしてあげる」っていうのはひとつの方法ではあるんですけど、それはあくまで対処法なんです。
「もともと見えていた目がなぜ見えなくなったのか」というところが一番の肝じゃないかと。それはドライアイに対して目薬で潤いを保つというよりも、なぜ涙が出ないのか?というような原因を探っていくという発想の測定方法でした。この測定方法で誰かの目の役に立てるという事が今、自分でお店をつづける原動力になっています。
ー測定にも色々なアプローチの仕方があるのですね!
そうなんです。例えば、全体を眺めてみるような視野の使い方をする人が、パソコンをしなくちゃいけないってなった時。一箇所に視線を集中させる事務的仕事をする時は、見えてはいますが、非常にストレスがかかっている状態になるんですよね。だから「見える・見えない」ではなくて、その方の目の動きと使い方には「向き・不向き」があるということ。
私が行っているのはその方が今の目の状態になった原因や目の特性をできるかぎり紐解いて、解決方法を提案するという測定方法。目と体、そして心というのは繋がっているんですよね。
ー「目」と「心」との繋がりというのは?
わかりやすいところで言うと、頭の中でいろいろと空想することが好きな性格(心)のタイプの方は、ぼんやりとモノを見るような目の使い方をされる傾向にあります。しっかり現実のモノを見るというより、なんとなくふんわり見るような感じ。事務的な処理は苦手ですが、目の前に映る現実のモノに囚われない、個性的な発想が得意だったりします。
逆に何でもしっかり目の前のモノを確認したい性格(心)のタイプの方は、一点を凝視するような目の使い方をされる傾向にあります。超現実的で、物事を深く掘り下げることが得意な方が多いです。
こんな感じに、その人の性格(心)が目の使い方のクセになって、その使い方のクセが目を動かす筋肉のクセになります。それが年輪のように積み重なって、今のその人の目の状態になるんです。
そういう意味で「目」と「身体」と「心」って密接に関係してるんです。
ーお医者さんみたいですね!印象に残っているお客様とのエピソードはありますか?
そうだなあ、ある日カメラマンの方がいらっしゃって。写真撮影はもちろん、パソコン処理もしているのですごく目が疲れていたそう。頭痛もひどく、病院で脳のMRIも撮って、眼科をはじめいろんな病院へ行ったそうなんですが、結果は「異常なし」。でもずっと症状はおさまらず、一体この原因はなんなんだ…とお困りの時にうちのHPを見て来てくださいました。色々お話を伺い、これは完全に目ですね、と筋肉を楽にするようなレンズを入れて眼鏡をお渡ししたらぱあっと目が開いたんです。その後、嘘のように頭痛がなくなりました!と言ってくださいました。
もちろん個人差はありますが、変わる人はすぐに変わります。
そうやって喜んでいただける。そういう瞬間が一番嬉しいですね。励みになりますね。
この測定方法は知ってしまったらもう見て見ぬ振りはできないというくらいの出会いでした。誰もやっていないことを知ってしまったということで、もう自分がやらざるを得ないな!というくらい自分にとって衝撃の発想だったんです。
その測定に変えてから、フレームの売り場のスペースを狭くしてでも、より正確に測定が出来る環境にしたくて測定室をかなり広く取るようにしたくらい。よく見えるようになる。そのもう一歩先のところまでをしっかり見ていきたいと考えています。
ー仕事をする上で大切にされていることって何ですか?
やはりこの測定方法を知って欲しいという想いでやっています。
今はスマホとかパソコンをたくさん使う環境へと、社会が劇的に変わって来ている時代。
従来の測定方法は「遠くの小さな文字がよく見えるように」という測定をしているのですが、今の社会は「近くを見る」機会というのが圧倒的に多い。
特に子どもは遠くを見るより、近くを見るという機会が非常に多い環境下で育っていますよね。近くを見る事に慣れている目というのは遠くが見にくい方が楽なんですよ。だから近視になってしまった方が、近くを見るというのは非常に楽なこと。目が楽なように、便利なように適応していっているという事なんですね。それはそれでバランスが取れてはいるのですが、遠くが見えなくなるのも事実なので、「遠くが見えないといけない!」っていう風に思う人が多いんですよね。
だから度数を上げて、また1.0に戻して。でもまた子ども達はその目で近くを見ようとする。でも身体は「近くを楽に見る」事を求めているので、どんどん近視が悪化してしまうんです。
小さいお子さんは目も身体もどんどん成長するのでそのスピードも早い。そんな環境と現代の測定方法のミスマッチが起きているんですよね。
ー単純に見えればいい、ということではないのですね。
そうなんですよ。お子さんだけでなく、大人の方にもそのことは言えます。とくに35歳からというのは他の筋肉も衰えてくる年齢。パソコンを使われる方が非常に多いので、目が悪くなったら1.0くらいの状態にすることが多い。その世代は目自体が悪くなることはないのですが、遠くがよく見える状態で近くを見続けるというのは、筋肉でピントを合わせるので非常に身体の不調を感じやすくなるんですよね。ただ筋肉を使って頑張って見える状態を作っていることでその緊張が筋肉を硬くし、頭痛・肩こりの原因となってしまうこともあります。行き過ぎると難聴等の症状が出ますし、人によっては内臓系の病気であったり、身体の色々な大きな病気に繋がるケースが非常に多い。
また、眼鏡なしでずーっとやってきた方というのは50歳や60歳になっても頑張って近くを見ようとするんですよね。そういう方は睨むように近くを見たり、目を見開いて近くを見たり、と変なクセが染み付いてしまっている場合が多いですね。その結果、眉間に深いシワが出来たり、まぶたが落ちて来たり、また如実に緑内障とか網膜系の病気になる方が非常に多くなる。
なので、ただよく見えるっていう一点を気にするだけではいけないんですよね。
今の環境に合った、その人自身に合う、目の筋肉を楽にする眼鏡をかけた方がいいんです。
ー病気にまで繋がってしまうのは本当に怖いですね。
「近視」「乱視」「遠視」と、みなさん言葉は知ってらっしゃるんですよ。
でもどういう状態が近視なのか、乱視なのかっていう知識は無い方が多いです。環境によって眼球の形を変形させた結果、近視であったり乱視っていう眼球の形になるんですよね。そういった形に変形するのは、目の周りの筋肉が眼球を引っ張って無理をさせるからなんです。だからそんな負荷がかからないよう、どちらかというとその方の苦手なところをサポートしてあげるようなレンズの度数を提案をしています。
例えば、本を読んでいても集中しにくいとか、行が飛ぶとか、眠たくなるというのは、能力うんぬんというよりは目がそういう環境に合わない場合が多い。だから苦手なところは補って、本来の状態に戻してあげるということをするんです。人には運動が得意・不得意という人がいるように、目にも得意な分野と苦手な分野がそれぞれあるのでね。
得意な分野で得意な目の使い方をしていたらいいのですが、逆の場合は本当に大変なことなんです。だから病気にも繋がってしまうことがある。
なぜ今の目の状態になったかという部分を一つ一つ言葉で説明するということはもちろん、実際のレンズを使って楽な状態としんどい状態を比べて体感して知ってもらうということを心がけていますね。
ーこれからやってみたいことはありますか?
新しくなにかをする!というより、これからもブレずに色々な方の目を通じて、その方と向き合っていきたいと思っています。色々な職業の方の目を見てみたい。お客様から教えてもらうことは本当に多いです。
スポーツ選手は?音楽家の方は?はたまた農家さんは?どういう見方をするのか?その方は一点に集中型なのか、雰囲気で全体を見ているのか。人の数だけ様々なケースがあるので常に勉強ですが、これがまた面白い。
お客様の環境やどんな生活をしているか等、私は常に聞く立場。いつも丁寧にその方を見てお話を伺うようにしています。
当たり前のことなのですが、主役はお客様。私はあくまで裏方なのでね。
その方の人生が眼鏡と測定を通じてよりいいものになったらな、と思っています。
▲寺田さんの愛用のNAOTはDANIELAシリーズ!奥様と一緒に色違いでご愛用くださっています。
この日は先日お迎えくださったばかりのCLAUDIA MattBlackを履いてきてくださいました。
〒630-8258 奈良県奈良市船橋町1(船橋商店街内)
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