リトルストーリー
2019.07.05

[エッセイ]隙間時間 vol.10


 
 
おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。
 
初夏…というにはまだ雨がちな今日この頃。
 
今回は、おみゆさんの小さい頃の可愛い思い出が盛りだくさん!
意味はないけど勢いがあった、そんな時代のお話です。
 
ぜひお楽しみください。
 
 
 


 
 


夏がきた。そんなことをふと書いてみたのだけど、これを書いているいまは梅雨入りをしたばかりです。雨、じゃんじゃん降っています。つい数日前は夏日だー!なんてかき氷食べたり、とっておきの夏服をおろしてみたり、いまからこれじゃあ、夏はどうするんだよお!なんて心配していたけど、人生よくできているな、梅雨が浮かれた夏気分を一気に蹴落としてくる、いや中和してくれています。
 
こないだ夕方の代々木公園を歩いていたら、じんわり熱気が混じった芝生の匂いがした。私にとってこれは夏を思わせる香りであると同時に、ある動物を思い出すもの。小学校のときに飼っていたジャンガリアンハムスターだ。カゴの中に敷き詰めていた藁の匂いとこの芝生の匂いは同じ。ジャンガリアンは私にとって初めてのペットだった。服の上に乗せてたらトイレ代わりにされたり、頭の上に乗せて家中歩き回ったり、カゴから脱走して勉強机の真裏にいるところをおやつで誘い出したり、思い出が蘇る。ジャンガリアンの顔真似をしている(でも全然似てない)写真も子供のころのアルバムの中で個人的には印象に残っている一枚だ。子供を産んだりして沢山飼っていた記憶があるけど、覚えている名前はミキオとメロンだけ。ミッキーマウスが語源のミキオと、たぶん果物のメロンを私が好きだったからという単純な語源のメロン。なんでその名前にしたんだろう、全く意味不明だ。相手はジャンガリアンだぞ。
 
名前をつけるって本当に難しい。以前、事務所移籍を機に芸名を変えてみようという出来事があったのだけど、何個も案を出してみたがどれも全く腑に落ちなくて変えるということをやめた。いつか自分に子供ができたら、なんてこともよく思うけど、名前…と思うとまだ予定もないのに真剣に悩む。大人になったいまこんなに頭を抱える項目なのに、子供のころの私は、名付けられる相手の気持ちも考えずにいとも簡単に、そして瞬間的に、関連性ゼロで名前を付けていた。これも子供ながらの才能というか、習性なんだろうか。そのくらいの瞬発力、大人になっても持っていて欲しかったよ。ちなみに、小学校高学年のときに飼っていたのはカメ、名前はカメ子だった。性別は不明だったから、これも瞬間的につけたのだと思う。
 
名前という存在は重くて大きい。子供のころ、自己紹介が大の苦手であった。理由は「おたに」も「みゆ」も、口がなんだかモゴモゴしてしまってとても言いづらかったからである。この自己紹介が苦手だった現象は数年前、「おみゆ」というニックネームが誕生するまで続いた。「おみゆ」はとても言い易い。考案者に感謝。
 
ちなみに現在一緒に暮らす猫がいる。本当は「ころも」という名前にしようと思って、ずいぶん前から妄想上の一緒に暮らす猫の名前として脳内再生してきたのだけど、どうもあの顔は「ころも」ではなかった。彼を眺めながら頭を捻らせる。背中のグレーの毛の中に一本線で混じる白い毛たち。なんだか背中にしらすが乗っている様だな、なんて思った。そして顔つきと共に「しらす」という名前が妙にしっくりきたのである。これがしらす誕生ばなし。
 
大人になって、瞬間的に思いつくことってどんなことでも少なくなってくるもの。しかし絞り出したものの背景にはちゃんと物語がある、ようにしたい。
 
 

 
 

 
 
 
 


 

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★実家の庭には、今もお別れした動物たちの墓標が残ってます。
次回は8月2日(金)公開予定です。


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