リトルストーリー
2019.10.31

[短歌]フルーツポンチ・村上健志の旅短歌 #1

 

 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌の連載がスタート!
 
五・七・五・七・七 の決まったリズムの中で、ひとつの場面や風景を、まるで手に取れるようにくっきりと(ときにはそのときの心情までも!)描くことができる「短歌」。
 
村上さんには、”旅”をテーマにした「旅短歌」をご寄稿いただきます。
 
たまの遠出の風景を、あるいは日々の生活に潜むちょっとした冒険や発見を、村上さんの言葉で切り取ってもらいました。
 
今まで気がつかなかったような些細なことも、不思議と面白おかしく美しく見えてくる…そんな言葉の連載をお届けします。
 
記念すべき第一回は、冬の街中の、見過ごしてしまいそうななにげない一場面。
楽しんで、どうぞ!
 
 


 
 
 


 


「あの大学落ちたなー。」
ある夜の帰り道にふと見上げた予備校の窓に並んでいる有名大学名の一つを見て思う。その横には合格という文字が大きく書かれている。不合格の文字はもちろんない。
その中では、今まさに受験生たちが勉強をしているのだろう。語呂合わせで年号を覚える生徒、微分積分いい気分とくだらないジョークを言って集中を切らす生徒、クリスマスの日に「今日は先生サンタがプレゼントを持ってきたぞ。」と小テストを配り出す先生。「えー。」と言いながら受験勉強に甲子園を目指すような青春を感じ始めた生徒たちが素早く問題を解き始める。
 
貼り出されることのない叶わないかもしれない夢に向かう生徒達の姿は叶った夢に隠されてこちらからは見えない。
 
世界は見えない物語で溢れている。あの公園の暗がりでは誰かがキスをしているかもしれない。あの角を曲がれば告白を跳ね返された男が「お試しでもいいから、お願い。」と食い下がっているかもしれない、あの部屋では、足りなかったら怖いからと多分食べきれない素麺を二束茹でる女の人がいるかもしれない。
 
そんな見えない物語の中を僕は今日も歩く。
 
 

 
 
 


 

Instagram: @mura_kami_kenji


 
 

★見えてこない物語のほうが、面白かったりするのにね。
次回は11月28日(木)公開予定。


その他の記事

一蘭へ戻る

カテゴリー

連載

pagetop