リトルストーリー
2019.11.28

[短歌]フルーツポンチ・村上健志の旅短歌 #2


 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。
 
五・七・五・七・七 の決まったリズムの中で、ひとつの場面や風景を、まるで手に取れるようにくっきりと(ときにはそのときの心情までも!)描くことができる「短歌」。
 
たまの遠出の風景を、あるいは日々の生活に潜むちょっとした冒険や発見を、村上さんの言葉で「旅短歌」として切り取っていただきます。
 
今まで気がつかなかったような些細なことも、不思議と面白おかしく美しく見えてくる…そんな言葉の連載を毎月お届け。
 
第二回は、教室の片隅の記憶を、思い出しながら。
切なげに…どうぞ!
 
 


 
 
 


 


プォーーという吹奏楽部のチューニングの音が聞こえ、学校があることに気づく。
 
生まれも育ちもしていない街の学校から聞こえてくる音で、あの時の教室の記憶が蘇る。2組や3組とは違い、校舎の端にあるのでドアが一つしかなかった1組。教室のカーテンは白くて、確か視聴覚室のカーテンは黒かった。ザウルスというあだ名だったクラスメイトの顔は思い出せない。教室の後ろの小さな黒板の前で話している女子。黒板に誰かの名前を消した跡。好きな人の名前を友達に書かれ、もしくは無意識に自分で書いてしまって焦って消したのか。嫌いな人の名前を書いていたのかもしれない。黒板にはもう何も書かれていない。君はあの時誰の名前を書いていたのだろう?
 
そこに何もないことは、はじめから何もなかったとは限らない。
 
結局削除されたハートマーク。消しゴムで消された本当の希望進路。指で拭かれた涙。排水溝を掃除するのに使われた元恋人の歯ブラシ。花屋があった空き地。
 
選ばれなかった言葉や無くなってしまったもの、忘れてしまった過去、忘れられない過去
 
夕日が全部抱きしめてまた明日が近づく。少し遠回りをして帰ろうか。
 
 

△撮影:村上健志
 

△撮影:村上健志
 
 
 


 

Instagram: @mura_kami_kenji


 
 

★何も見えないその片隅に、ほんとの気持ちが転がっている、のかも。
次回は12月20日(金)公開予定。


その他の記事

一蘭へ戻る

カテゴリー

連載

pagetop