リトルストーリー
2020.01.08

[スタッフコラム]BOOK TALK vol.5 旅先で料理したくなる一冊


 
 
「旅と本」と聞いて思い浮かべるのはどんなことでしょうか?
 
読むと旅に出たくなる一冊、旅の途中に出会った一冊、旅先で読みたいと思うような一冊などなど…
お気に入りの本にもそれぞれ個性があります。
 
NAOTスタッフが旅にまつわるエピソードを交えて、お気に入りの本をご紹介。
 
第五回は奈良店スタッフの三浦がおすすめする、「旅先で料理したくなる」一冊。
どうぞご覧ください!
 
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題名:『野生のベリージャム』
著者名:小島 聖
発行年:2018年
出版社:青幻社
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ひとつ、やってみたいことがある。
リュックに料理道具と寝袋を詰めて、食事と寝泊りをしながら自然の中を歩くこと。
できれば言葉の通じない土地がいい。欲を言えば、あこがれのヒマラヤが見えるネパールがいい。
 
そういう旅があると教えてくれたのが、この「野生のベリージャム」(青幻社)という本だ。
 
著者は、女優としてもご活躍される小島聖(こじま ひじり)さん。この本には、彼女が経験した山歩きと食事について記されている。
彼女の名前の由来である「聖岳」という山との出会いから始まり、ネパール、スイスのマッターホルン、フランスのモンブラン、カリフォルニア、アラスカなど、国内外の色んな自然を、何日もかけてひたすら歩く。そして、食べることを楽しむ。山の中で料理したり、現地の人に分けてもらったりする。
 
各章に、それぞれの旅で出会ったレシピが登場するのだけれど、これが料理好きにはたまらない。
書かれているのは、素材と手順だけ。分量はどこにも書いていない。自然の中で生きるための料理、もしくは現地の人の手が覚えている料理だからだと思う。
描写から、味や匂いを想像する。キッチンのようすも、作る人の顔も手も想像してみる。言葉だけを頼りに思い浮かべてみると、どんな映像で見せられるよりも、不思議と近くに感じられる。もはや自分の記憶みたいになってくる。
 
 
「旅先の自然のなかで料理」…なんて素敵なの!と猛烈に憧れを抱いた私は、一昨年の夏、なんとフィンランドにてその夢を少しだけ叶えてしまった。
 
首都ヘルシンキには街のいたるところに市場やフルーツ屋台のようなものがあり、新鮮なベリーが文字通り山のように売られている。
私は市場でゲットしたそれらを大事に抱えて森へ行き、持参の鍋でぐつぐつ煮込み、真っ赤なベリージャムを作った。(砂糖と保存用の瓶まで日本から持参するという、なかなかの力みっぷりだった)
 
木々に囲まれながら、できたてジャムをパンにのせて頬張る。酸っぱかったり青々しい植物の香りがしたり、複雑だけれどひと口で笑顔になれる美味しさだった。あの味は忘れられない。
 

 
後日談。思い出も一緒に詰めこんで、大事に持って帰ってきたベリージャム。
しかし、誰に見せるでもないひとりの食卓ではジャムの出番は想像以上に少なく、帰国の数週間後には青白いカビがもやもやと生えてきてしまった。
 
(まだまだ真似事ね…)と、ふわふわ伸びる菌糸たちに見破られた気がした。よく考えたら市場で買ったベリーだったので、たぶん「野生ではない」ベリージャムだった。
 
 
この先の人生でこのリベンジができるか、というか、したいかはわからない。でも、知らない街や山を訪ね、知らないレシピに出会う。そんなことができたら万々歳だと思う。
 
というわけで、私の今の夢のひとつはネパールでトレッキング。あたたかくなったら、奈良の山々へ予行練習に出かけよう。
 
 

△フィンランドの「ヌークシオ国立公園」にて。ジャムのほか、ハムチーズサンドウィッチを作ったり、コーヒーを淹れたり、贅沢なハイキングだった。
 
 
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編集:三浦
 


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