おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。
春です。今回から「吐息」時間がはじまります。
近頃のおみゆさんの暮らしがちらりと垣間見えるお話。
どうぞお楽しみください!
4月になりました。春爛漫!と野原を駆け回りたいところですが、そうもいかない今年の春です。でも、季節は巡るのでまた来ます。来年をまた楽しみにしながら、家で出来ること何かないかなと毎日試行錯誤する今日このごろ。そんな毎日なので最近は春を家に迎え入れることを試みています。どうやってやるかというと、とっても簡単よ、花を部屋に飾るのです。いまもテーブルの上に花がもりっと入った花瓶が3つあります。今日はとても良い天気です。
お花を見ると、どうしたってやらざるを得ない行為がある。それは写真を撮ることです。きっと私が一番写真に撮っているものはお花かもしれない。道端で見つけたら撮り、喫茶店で見つけたら撮り、生花も造花も看板でもなんだってお花は撮りたくなってしまう。おじいちゃんが自分の家の花壇の花をたくさん撮っていたり、喫茶店にもお店の人が撮った花の写真がたまに飾られていたりすること、今まではなんでだろ~なんて不思議に思っていたけど、いまならとてもわかる。!!!
道端でやっていることは家の中に舞台を移しても、もちろん同じ。家に花を持ち帰ってから、花瓶に花を生けてひとまず写真を撮ります。一輪だけで撮るとか、フラッシュをたくとか色々試してしまう。咲くちょっと前のお花を買うことが私は好きです。そうすると毎日少しずつ開いていく様子とか些細な変化を観察することもとても楽しくて(その些細な変化もシャッターチャンス)、おすすめです。最後に枯れて花びらが落ちてしまったら、花びらだけでも撮る。散ってしまった花びらをよーく見ると最初はわからなかった色がじんわり出てきていたりして、それもまたグッときてしまうところよのう。
我が家には猫が同居しているので、飾る場所は主に猫があまり出入りしない洗面所です。どんなに忙しくても、朝も晩も必ず立つ場所といえば洗面所。私はここがどうやら好きかもしれない。パワーの源というか、1日を始める、そして終わる場所だから家の中で物思いにふける場所だったりもする。そんな場所に花がある日はとても鮮やかで浮かれた気持ちになってしまう。あと物理的に鏡の前に飾ると倍に見えてにぎやかです。花が沢山溢れた洗面所の写真もよく撮っている。鏡の前に立つと、はるか昔のプリクラのお花のフレームみたい。
写真を現像するとほぼ花の写真になる季節がまさに今ぐらいの季節です。いくら見ても花、花、花、、花ばっか。こんなに撮ってどうするのって思うし、人からも言われるのですが、どうしよう。別に頻繁に見返すものでもないけど、お花は買ったときのままずっと残ることはできないからどうしても思い出として残しておきたくなるのだと思います。頭の中だけに残しておくのはもったいないよ。
2回ごとにテーマを変えていくこの連載。今回は、ついため息が出てしまうほど見とれてしまって、そんなため息が飛んでいってしまわないように写真に撮ってつかまえておきたい存在の話でした。南野陽子さんの『吐息でネット』聴きます。
Instagram: @omiyuno