えっ、はい…と返事をしそうになる。「最近姿勢が悪くなってきたとお感じの方」。はい、そうです、私です、厳密にいうと腰と首が痛くて、ストレッチしてもなんか良くならなくて。
ところでこの6畳にも満たないようなプレハブの小屋でいったいどんな施術をしてくれるのだろうか。覗いてみたかったけどやめた。
最近、朝にランニングを始めた。以前腰痛に悩まされていたとき、ランニングをしていたらいつのまにか良くなったから。暖かくなって外に出たくなったから、というのもある。あと、時間に余裕ができたので。
「最近、朝走ってるんですよ〜」と話すと、高確率で「えーすごいねえ」と賞賛の言葉をいただく。私も高確率で「まあ、途中で歩いたりしますけどね、エヘヘ」と謙遜しきらぬ返事をする。その返事をしているときは、本当に大したことはしていないとぼんやり思うのだけど、走り始めるときはいつも、なぜこんな大変なことを始めてしまったのだろうと後悔の気持ちでいっぱいになっている。
家をでて、入念にストレッチをして、とりあえず早歩きからはじめる。早歩きも、筋肉の使い方によっては結構疲れる。この時点で、その日の自分の調子がなんとなくわかる。歩くだけで音を上げてしまうこともある。
しかし、走るためにせっかく家を出たのだから…という諦めに似た気持ちで、いざ走り始める。
走りはじめが、いちばんしんどい。毎回、はじめの1分くらいは、ああしんどい、もう疲れた、やめたい、と頭の中でネガティブワードがこだまする。でも、右足と左足はすでに一定のリズムを取りだしてしまっているから、これを止めるのはもったいなくていやだし、もう少し走る。心身にとってすごくポジティブなことをしているはずなのに、脳内はネガティブの連続で、逆に面白くなってきてしまう。なんでこんなことしてるんだ。と思いながらも走る、走る、足を止めない、信号待ちもぐるぐる走る。
どこに向かっていくのかは、走りながら決めている。今日はこっちのほうの空が晴れていて気持ち良さそうだからとか、あっちが赤信号になっちゃったからとか、理由はさまざまかつ些細なことだ。奈良の街は、どこに行っても面白い。東に行けば興福寺、西に行けば朱雀門、北に行ったらお気に入りの直売所があるし、南には激安スーパーがある。どの道を進んでもその先にお楽しみがあるというのは、走ることの重要なモチベーションになっている。
そんなことを考えられるようになっているころには、走ることは全くしんどくなくなっており、むしろ足を止めたくない気持ちの方が優っている。上がっていた息もなんだか落ち着いてきて、腰の痛みも全くない。楽しい。その日は、北の直売所に向かった。今はタケノコが旬だなあ、安くて大きいのあれば買おう、と考えながらスピードを上げる。
△りんごを買って、丸ごと食べた
こんなにイヤイヤ言っているのに、不思議と今のところ続いている。いや、だから続いているのかもしれない。始めから意気揚々と始めたことには要注意、そのポジティブさが維持できなくてたいてい長続きしない。積極的に「期待しない」ことが重要みたいだ。ハードルが下がるので。
だから、これでいい、これがいいのだと思う。続けたい習慣は、あまり意識しない方がいいらしい。こうやって書いてしまったことで、意識しすぎて続かないなんてことにならないようにしよう。
編集:三浦
最近はじめたこと:奈良店スタッフ 三浦の場合
