「旅と本」と聞いて思い浮かべるのはどんなことでしょうか?
読むと旅に出たくなる一冊、旅の途中に出会った一冊、旅先で読みたいと思うような一冊などなど…
お気に入りの本にもそれぞれ個性があります。
NAOTスタッフが旅にまつわるエピソードを交えて、お気に入りの本をご紹介。
第十回は奈良店スタッフの久保おすすめの、「夢を旅する」一冊。
どうぞご覧ください!
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題名:『愛蔵版 アルケミスト』
著者名:パウロ・コエーリョ
発行年:2001年
出版社:角川書店
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小さい頃、よく夢を見ました。
人魚に水中での息の仕方を教えてもらったり、孫悟空に空の飛び方を伝授してもらったり。
今思い返すと、なんて欲に素直な夢を見ていたんだろうと思います。
最近になって見る夢はすっかり現実味を帯びて、なんとなく寂しいような、ちょっともったいないような気もします。
さて、今回ご紹介するのは、そんな夢にまつわるお話。
夢を旅した少年の物語です。
この物語の主人公、羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドを目指して旅に出ます。
というのも、彼はそこに自分を待つ宝物が隠されているという夢を見たのです。
旅のさまざまな出会いと別れの中で、人生の知恵を学んでいくサンチャゴ。
そんな彼ですが、夢を見てすぐに旅立つことを決めたわけではないのです。
宝物を探しに行くためには、今まで一緒に旅をしてきた羊たちと別れなければなりません。
慣れ親しんだ今までの生活とこれから欲しいと思っているもの、どちらかを選ばなければならないのです。
なかなかむずかしい選択ですよね…。
「風が吹き始めた。彼はこの風を知っていた。人々はその東風をレバンタールと呼んでいた。」
「東風は、未来を求め、金や冒険、そしてピラミッドを探しにいった男たちの、汗や夢を運んできた。」
「少年は風の自由さをうらやましく思った。そして自分も同じ自由を手に入れることができるはずだと思った。自分をしばっているのは自分だけだった。」
誰しも何かを決めたり、やめたり、はじめたりするには勇気がいりますよね。
そんな時、後押ししてくれるのは何気なく見た夢だったり、たまたま吹いた風なんてこともあるのかもしれません。
サンチャゴは旅立つことに決めたけれど、
私だったらどうだろう?旅に出るかな?
いいや、羊飼いのままだろうな。でも、待てよ…
そんな風に考えはぐるぐる巡ります。
…どちらを選んでもきっとそんなにかわらないんでしょうけどね。
たとえ、一度やると決めたことが続けられなくても、想像していた結果が得られなくても、
それでも、一歩踏み出した自分を励ましてくれるようなそんなお話です。
サンチャゴが無事に宝物を見つけることができたのかも気になるところ。
彼と共に、異国の風を感じながら夢を旅してみてはいかがでしょうか。
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編集:久保