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2020.04.29

フルーツポンチ・村上健志の旅短歌 #7


 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。
 
五・七・五・七・七 の決まったリズムの中で、ひとつの場面や風景を、まるで手に取れるようにくっきりと描くことができる「短歌」。
 
たまの遠出の風景を、あるいは日々の生活に潜むちょっとした冒険や発見を、村上さんの言葉で「旅短歌」として切り取っていただきます。
 
今まで気がつかなかったような些細なことも、不思議と面白おかしく美しく見えてくる…そんな言葉の連載を毎月お届け。
 
第七回です。新しくなってしまった日常の中に、なにかを灯すような。
わたしたちが願うこと、そうであればいいなと思うこと、村上さんが言葉にしてくれました。
 
 


 
 
 

 


自宅で一人で酒を飲み、つまみ代わりにサバ缶を食べていた。ふと自分が太腿を掻くためにティッシュの箱を使っていることに気づく。「なんで!?」と思わず自分にツッコミを入れそうになる。指で掻けばいいだけなのにわざわざティッシュ箱を使っている。
 
最高級の掻き心地の道具を無意識に探しているのか?無意識の僕が僕を笑わそうとしているのか?暇を持て余し謎のプチチャレンジをしていたのかもしれない。
 
一人用の土鍋の蓋にみかんを置いてみる。明日の自分が「誰だこんなとこにみかんを置いたのは?」と言ってくれるかもしれない。
 
テレビ台の横の少し空いた床を見つめ「そういえばあの場所まだ一度も踏んだことないかも。この部屋にも未開の地があるのに宇宙とはどれだけ広いんだ。」と哲学じみたことを考えては、すぐにやめアニメを見始める。
 
バターについたフォークの穴が、溶けて消えてしまう瞬間を見届けてみる。それを見届けることは世界の見え方が変わる魔法なんだと言い聞かせて。もちろんそんな魔法にはかからない。
 
部屋には、ピザ屋のチラシを丸め足首を掻いている自分がいるだけだ。
 
くだらないことばかりが増える。実に楽しみだ、君はくだらない話が好きだから。待ち合わせをして会おう。君を見つけたなら駆け寄ってしまうだろう。駆け寄ってくる君を眺めながら待つのも悪くない。お気に入りの靴を履いて行こう。光らせよう。
 
そんなことを想像して靴を磨く。晴れ晴れとした気分で、いつの間にか鼻歌を歌っている。魔法かもしれない。
 
 
 


(撮影:村上健志)
 
 
 


 

Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami


 

 

★魔法だったら、嬉しい。
次回は5月30日(土)公開予定。


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