おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。
前回から引き続き、まだまだ「漂流」していきますよ!
そろそろ旅を欲するころ。おみゆさんもあの国この国を漂流しています。
おうちでも味わえる旅気分、どうぞお楽しみください!
こんにちは。あっという間に夏らしくなりました。いろいろなものが解除されたり緩やかに始まったりしていますが、皆さまいかがお過ごしですか?私はというと、お仕事が少しずつ始まってきたりして、だんだんと外に出る機会が増えてきました。しかし、家にいる時間が多かったときの生活で習慣づいたことはできるだけ削ぎ落とさないようにしたいなぁと、コロナ前後の生活リズムをうまく組み合わせた新しい日常にしがみついております。でもね、どれだけ前日疲れていても次の日の朝はちゃんといつも通りの時間に起きることができるようになったのです。撮影の日の早起きも、前までは布団の底から息絶え絶え這い上がってくる思いだったのだけど、サクッと起きれるようになり驚きです。やった〜
こうして、少しずつ日常が戻ってきていますが、出来ないこともまだ沢山ある。そんな中でいま私が熱望しているのは、皆さんも熱望していることでしょう「旅行」です。特に海外に行くことができるのはもうしばらく先になりそう。おうち時間の時期も海外の友達とテレビ電話やメールで連絡をとっていたりして楽しかったのだけど、とにかく連絡をとり終えた後の喪失感は半端じゃない。旅行ロスに匹敵します。友達に会いたいのはもちろん、あれ食べたいなぁとか、あそこに行きたいなぁとか、あの空気感を感じたいなぁとか。行けないと思うとより恋しくなりますね。しかし、行けないものは仕方がない。でも、じっと待つのもつまらない。そこでいろいろと行った気持ちになりそうなことをあれこれ最近は探求しています。日本もちょうどジメジメとした季節です。空気感は準備万端、いくわよ。
まず、前々からやっていたアジア映画をひたすら見ることは、いまはなんだか私には不向きでした。ただその世界を覗き見ているだけでは悲しくなる始末。それならば音楽だ!と思い、旅先で買ったシンガポールや台湾の歌謡曲のレコードを聴いてみたりしました。そして、それらを聴きながら日常の家事や用事をする。すると、なんだか映画の中で見ていた台湾の日常生活に自分が入り込んだような気持ちになったのです。ちなみに今はシャムキャッツの菅原慎一さんが作った台湾歌謡曲のミックステープ『未知城市』を聴きながらこの原稿を書いています。もう気分は『台北ストーリー』に出てくる80年代のキャリアウーマンですよ。
聴覚で気分が乗ったら、お次は味覚へ。家でも現地で買ってきた調味料やキットを使ってあの場所の味作りに勤しみました。特にヒットしたのはシンガポールの「肉骨茶(バクテー)」。味が本格的すぎてあのとき食べた味だー!!と思い、一瞬哀愁に包まれてしまいましたが、喜びもひとしおです。旅先では1つしか買ってこなかったので、また食べたいなぁ…と寂しくなっていたところ、輸入食品を扱うスーパーにバクテーキットがあって大喜び。バクテーって、ニンニクがどかんと丸ごと入っていたりして(それがスープに溶け込んでとても良い仕事をする)普段は次の日のことを気にしてしまうんですが、お家時間はほぼ人に会わなかったからニンニク最高だ!と思いながらよく食べておりました。ちなみに番外編的な話として、餃子の王将が大好きなシンガポールの友人は、王将でよく食べているメニューを自宅で自ら再現して作っていたそう。やってることが同じで嬉しいです。
あとは、少しずつお店にも足を運ぶようになって、台湾小籠包で有名な鼎泰豐(ディンタイフォン)へ行ったり(特にデパートのレストラン街にある店舗に行くとより旅行感が出る。なぜか)、近所の好きなアジア料理屋さんに行って家ではなかなか作れない創作アジア料理を食べ、蒸し暑い夜の帰り道を歩いているときなどはお腹も心も異国情緒でいっぱいです。
もちろんこれで満足はしていないです。でも、行けない寂しさを一瞬でも紛らわせることができるし、意外なものがこれってあの感覚に似てる!なんて気付けたときは少し嬉しかったりもするから、また本物のそれを体感する日が待ち遠しく、楽しい気持ちになるのです。いま行きたいのは、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム。さて、どこから行こうかなぁ。
これからも私の空想旅気分探求はしばらく続くでしょう。今日はいまから愛玉子ゼリーを作ろうかな。愛玉子ゼリーのキットをスーパーで見つけて買ったんだよ、こないだ。
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