お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。
五・七・五・七・七 の決まったリズムのなかで、ひとつの場面や心情までも、くっきりと描いてくれる「短歌」。
たまの遠出の風景を、あるいは日々に潜むちょっとした冒険や発見を、村上さんに「旅短歌」として切り取っていただきます。
さて、第十回は…スーパーでの、とある気づきについて。
すれ違った知らない人のこと、想像するだけでこんなにも。
微笑みながら…どうぞ!
スーパーで、他のお客さんのカゴに桃の缶詰とうずらの卵を見つける。あの人の今日はきっと幸せなんだろうなと勝手に思う。
シロップを纏いつるんと輝いている缶詰の桃。発見する度に「やった。」と小さく声を上げたくなるうずらの卵。あの宝物感。なくても良いけどあったら少しニヤついちゃう。ささやかな幸福。そんな食材を嫌な気分の日に買わないだろう。きっとあのささやかさは、そんな日に感じ取れないだろう。自慢するほど良い事があった訳ではないけれどなんだか気分の良い日。そんな日のトッピングとして、桃缶やうずらの卵はあるんだと思う。箱アイスを開ける時のコココココという音。スプレーのトリガーを押す感触。アスパラガスの穂先。どれもささやかで最高だ。
もしかしたら全然違うかもしれない。でもあの人は幸せだと思っている方がこちらも幸せな気分になる。そう思える方が幸せ上手だと思う。
そよ風に吹かれて目を閉じている人。何にもないところでジャンプをしている人。紙袋を持って靴屋さんから出てくる人。「勉強するときよりもアイス選んでる時の方が真剣だよね。」と言われ拗ねている女の子。夜道でキスをする二人。結構みんな幸せそうじゃないか。なんか腹立ってきた。
△撮影:村上健志
Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami
★他人の幸せ、見つけてムフフ。
次回は8月30日(日)公開予定。