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小谷実由の吐息時間 vol.2

 
 
おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。今回は、4月公開の「吐息時間」から、お久しぶりのvol.2です。
 
ここにも、あそこにも、「吐息」な瞬間をみつけるおみゆさん。ふう〜っと脱力していく幸せエピソードをどうぞお楽しみください!

 
 


 


そろそろ漂流するの止めたいところなんですが、まだまだ落ち着かない世の中ですね。あっという間に夏がやってきています。まだまだこちらは梅雨真っ盛りなんですけど、これが読まれているころには梅雨明けをして、少しでも何か夏らしいことができていることを願います。最近毎日夢中になっているのは、マネージャーから種をお裾分けしてもらって植えたパクチー。ずっと雨続きだったのですが、昨日今日は束の間の晴れ模様。スポンジのように太陽を吸収して1時間ごとでも見違えるようにぐんぐん伸びています。やっぱり生き物には陽の光が必要だよね、雨続きで身体が重くなったので私も超わかる。とパクチーに語りかけています。そんなパクチーに毎朝語りかけている29歳・女性の夏(春はチューリップに語りかけていた)、ほぼ脳内に近いくらい吐息のように小さい声です、これぞ吐息時間よ。そんなわけで今日は吐息時間に戻っちゃうからね。
 
高校生の時に「ため息をつくと妖精が死ぬ」って話が流行って、ため息つきそうになった時に慌てて深呼吸しまくっていたのを思い出した。でも、大人になってからため息ってついてるかなと考えると意識的についてることがあんまりない。それって単純にため息つかない強靭なハートを持ったのか、無意識的にため息してしまっているのかどっちなんだろう。でも、心がモヤモヤしてる時に家の中で大声で「あーあ!!!」って言うのは、おもしろおかしくスッキリするのでおすすめです。もしやこれもため息か?ご近所迷惑になりそうなのでボリューム調整はお任せします。
 
吐息は私の中では「多幸感で気持ちが緩んだ時にでる息」に限定しています。温泉に入ったりとか、美味しい物を食べた時なんかに絶対なる肩の力が抜けて何かに身を寄せたくなるあれはね、もう吐息が出ていると思う。良いライブを見た後とか、憧れの人を遠巻きに見るときとかのあの気持ちもそうだきっと。最近の吐息エピソード、大きなものから小さなものまであるのでひとまずざっと箇条書きしてみます。
 
・いつもより少し高級なパンケーキミックスを買ってみたらとんでもなくもちもちで美味しい
・通常暑い季節になると来ない猫が毎晩擦り寄って一緒に寝てくれる(これは奇跡ともいう)
・久しぶりの外食で行った台湾料理屋さんの店内の匂いが完全に台湾だった
・友達が郵送で送ってくれる珈琲豆が届いた時のポストの中の匂い(吐息からの深呼吸)
・2年ほどずっと探していた本を古本屋さんが見つけてきてくれてついに購入
・その時に見せてもらった猫の線画がたくさん載っている本
・その後久しぶりに行ったので店内をぐるりと回ると欲しい本が山のように見つかる
・それを抱えて両手が塞がりながらも久しぶりの晴れの日に散歩(パクチーのぐんぐんと伸びた芽の気持ちになる)
 
どれもこれも日常によく潜んでて見落としそうなものなのですが、意識して噛み締めてみるとまた嬉しさ倍増二度美味しいのでお試しあれ。
 
そんな中でも、私が最大の吐息にまみれるのは新しい服たちを見るときだと思う。職業上、次のシーズンの服を一足早く見せてもらう機会が多くあります。春に冬服を見ていたり、まだまだ夏みたいな気温の秋に来年の暖かい季節に着る服を見たり、そんな先の自分の気分なんてわからないよ〜なんて思いつつ、素敵なものたちを見ながら半年先の未来の自分を想像したくなる。服に突き動かされているような気持ちで、もはや服は鎧のようなものです。ちなみに次の春はピンクのオーバーサイズのジャケットを着る予定ができました。かっこよく着こなしたいので、男前な気持ちが欲しいなぁと思うところ。ぐるぐる考え過ぎず小ざっぱりとしたいですね。
 
今年の夏は花火大会にも行けないし、みんなでワイワイとバーベキューするのなんかも難しそう。季節的な醍醐味であってもそうじゃないとても個人的なことでも、「めちゃ良い、何これ」と感嘆の声のような吐息がこそっと漏らせるような瞬間をたくさん作れたらいいなぁ。いろんな人のそういうものだけシェアして生きれたらどんなに楽しいだろうね。また何か見つけたら報告しますので、何か見つけたら皆さんも私に教えてね。良き夏をお過ごし下さいませ。

 
 

 
 


 

Instagram: @omiyuno
 


 
 

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★こちらにも、吐息ブーム到来です。
 
次回は9月4日(金)公開予定。


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