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小谷実由の野良時間 vol.1

 
 
おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。今回のテーマは、野良時間です。
 
自由気ままに歩きまわるお猫さんのように、ふらりぐるりと。
おみゆさんのあんな話、こんな話をお楽しみください!

 
 


 


こんにちは。こちらは8月です。今年の夏は、夏らしいこともほとんど出来ないまま終わりそうです。ただ一丁前に暑さにうなだれて、昨日は「生きているだけで滝汗」と年下の友人へ無意識に謎の迷言をLINEで送り付けていた始末です(迷惑な先輩)。私の職業は酷暑の時期にニットを着て、極寒の時期にノースリーブを着るという、修行のようなことが頻繁に起ります。どちらが耐えられない?とよく訊かれるのですが、私は決まって極寒のノースリーブと即答しています。カメラの前で撮られる一瞬、震えを気合いで止めるって一体何事なんだろうといつも思っている。でも最近のこの暑さではニットも無理かも、、(今年は今のところまだその修行に遭っていません。ラッキー…!)。しかし極寒の中の薄着は記憶がなくなります。山で遭難して、絶対寝るな!寝たらなんとか!!というシーンがよくありますが、その気分を存分に味わっている。そんなことを思い出していたら、なんとなく涼しげな気分になってまいりました。本日はリビングのエアコンが暑さで全く効かないので、家に1人と1匹しかいないのにリビングを放りだしてベッドルームでエアコンをつけながらこれを書いています。いかんせん暑さにやられると私は使い物になりません。
 
涼しげな曲を流そう!とクロード・ドビュッシーの『月の光』を。好きな映画の始まりのシーンで流れるのですが、そのシーンと曲がとてもマッチし過ぎていて、前からなんとなく知っていただけの曲が、一瞬にして好きな曲になりました。普段聴くのはテクノやニューウェイブなどピコピコした賑やかなものが多いですが、たまに聴きたくなるよねピアノの音。そんな時は延々とSpotifyで月の光のアレンジ違い?弾いてる人違い?を聴いてしまいます(違いはいまいちわかりません)。幼少期ピアノを9年間習っていたけど、先生が怖くてやめてしまったという思い出。いつか『月の光』練習して弾いてみたいな。もう楽譜すら読めなくなってしまっているので道のりは遠いです。ピアノを習い始めた頃に手癖のように弾いていた「猫ふんじゃった」、ピアノが弾けるようになるにつれて何故か弾けなくなってしまったというのは、おみゆ都市伝説。しかしあの曲ってどうしてみんな弾きたがっちゃうんだろうね。
 
今年の夏はおでこを出し続けていた夏でした。おうち時間中に前髪をブローすることがあまりにも面倒だったので、ピンを毎日留めていたらその顔に自分が慣れてしまい前髪ありの自分の顔がなんとも違和感で戻れなくなったのです。前髪が長いのでマスクとの間が狭過ぎて本当に目しかないから怪しさも満点、そして暑さと湿気で前髪ブローの努力は家を出て1分ぐらいで水の泡になるし、なんかもう自暴自棄だわ。おかげでかわいいヘアピンコレクションなどの楽しみも増えたわけですが、前髪がある自分が嫌になったわけではないのです。むしろそろそろ恋しい。おでこが寒くなったらまた前髪をちゃんとブローすることにしようと思います。前髪を無くそうかとも何度か考えたけど、目にかかるすれすれの重たい前髪がやっぱり好きです。長さの決め手は瞬きしたら前髪が睫毛に当たるライン。でも誰にもおすすめしません。前髪が一度でバッチリ決まる確率がかなり低いからです。
 
たったいま、突然しらすに足を踏まれました。いつもの噛み付くでもなく、片足で思い切り力を込めて私の足を踏んで走り去って行った。猫の踏み逃げ。(事件の記録としてここに書き残しておく)
 
しかし早く秋が来ないかなと日々呪文のように思っています。これを読んでるそこのあなた、そちらに秋は来ていますか。まだまだきっとマスクが手放せなかったり、いろんなところで気の抜けない日々が続くのだろうけど、季節の変わり目は逃さず感じたいですね。夏から秋に変わる時期の夕暮れ、少し薄ら寒い風を初めて感じた瞬間って言葉に表せない切なさがある。お願いだから誰かあの感情に名前をつけて…!と毎年思っています。理由がないのになんだか切ない、10代の頃はそんなとき、彼氏欲しいなぁ…なんてその風に吹かれるたびに思ってました(もしやこれが人肌恋しいというやつか!)。学生の頃はいまごろ制服の上にカーディガンを着たくて秋が待ち遠しかったけど、29歳の今も変わらず私は早くニットが着たくて秋が待ち遠しいです。
 
今回は散文満載、なんだか読んでもらっている人に勝手に話しかけて立ち話してるみたいになってしまいました。お付き合いありがとうございました。またね。夏の終わり。

 
 

 
 


 

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★猫に踏まれたかった、夏でした。
 
次回は10月2日(金)公開予定。


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