おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。今回のテーマは、前回の野良時間に引き続き、“幻のような”野良時間です。
2020年やこれまでを振り返る、おみゆさんの野良時間。
時間は、時感かもしれない、そんなお話をどうぞお楽しみください。
あっという間に2020年が残り数ヶ月になりましたね。今年はまるごと幻だったんじゃないの?2020年の練習なの?なんて思いたいほどいろんなことが起こっている1年ですが、実際は自分の体感時間の問題なだけであって、年齢も重ねているし、友人に新しい命が生まれているし、ちゃんとれっきとした(?)8760時間なのですね。目を覚まして私!来年はちゃんと2020→2021年です。思い返した時にまぁいいか〜と言えるくらいでいいから、今年は意味のあることをちゃんとやりたいなぁなんて密かに思って生きている。駆け込め2020!なんて言わないからじんわり味わい尽くせよ2020。
さて、夏が過ぎると必ず思い出すのが、この仕事を始めた時のこと。最初から仕事に恵まれるわけでもなくレッスンばかりの日々だったけど、1人で電車に乗って行ったことのない場所に行ったり、お化粧をしてみたり、ハイヒールを履いたり、予習も対策もできないはじめてだらけだったあの頃。空気感や匂いまで鮮明に覚えているつもりだけど、本当に今でも思い出すだけでドキドキするようなあの日々を本当に潜り抜けてきたのだろうかと嘘みたいにも思っている。当時14歳、若いとなんでもできるって言葉はいまなら大納得です。そんなわけで幻のような日々から早15年が経ちました。
始めた頃はただ洋服が沢山着たかっただけ(無謀すぎる志望理由で私としてはかなり気に入っている)の中学生が、いまでは人生の醍醐味と言っても過言ではないと思えることを日々やらせてもらっている。中学生の頃はかわいい服たちを沢山着ることがきっとその時の私の夢中になれること(14歳の私の醍醐味)だったと思うけど、今は醍醐味という複雑な文字の画数でも語りきれないような濃厚なものになっているなぁとしみじみ思っています。これって誰に感謝するべきなんだろう、紛れもなく自分ではないことはわかっている。いつも支えてくれている方々、もちろん直接会ったことある人も、ない人も、ありがとうございます。
時が経つのって本当に早いよね。年々そう思ってるよ、っていつも言っているし、いつも言い過ぎていてこの連載にもきっと書いてるんじゃないかと思う。もし書いていなかったとしてもそんな気持ちを抱きながら書いているものはいくつもあるはず。そんなわけでこの連載も3年目に突入しました。いつもここはこうで、これはこうあるべきとバシバシに白黒つけてしまう私としてはここはもう牧場の大草原。いつも自由に走り回らせてくれて、それを面白がってくれるNAOTの皆さんです。なんか最終回みたいになってるけどまだ全然この連載終わらないから。これからも末永くご覧になっていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。前回からこんな調子で手紙みたいになってる散文スタイルです。ハマっています。
そういえば先日夫・島田大介が写真集を刊行しました。タイトルは「時光」モデルはなんと私です。2013年から2020年までの約7年撮り溜めた写真で構成されております。22歳から29歳の普段の私が1冊に収まっているわけですが、とても嬉しく、とても照れくさいです。この写真集もまた、思い返すと幻だったかな?と思うような時間が収まっていると思います。機会がありましたらどこかでお手にとってみてください。
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