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フルーツポンチ・村上健志の靴短歌 #1


 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。今月から、「”靴”短歌」として新スタートです!
 
五・七・五・七・七 の決まったリズムのなかで、ひとつの場面や心情までも、くっきりと描いてくれる「短歌」。
歩くこと、立ち止まること、その足元にはいつも靴があること…。
そんな毎日の風景を、切り取っていただきます。
 
第1回、ぜひご自分の靴のことも思い出しながら…どうぞ!
 

 


 




靴を買う事は僕にとってイベントである。そもそもファッションに疎い(といってもオシャレとは思われたいし、かっこいい服を見るとドキドキする。しかし自分のセンスを信じることが出来ないのだ。)僕にとって、洋服屋さんに行くこともなかなかのイベントなのだが、靴を買う事は尚更で革靴となると一大イベントなのである。
 
履く頻度が高く身体と密接な関係にある靴は機能性が重要である。かといってデザインも諦めたくはない。服と比べて靴がべらぼうに高いというわけではないが、靴を買って失敗したなと思うときの後悔は大きい。靴箱に並んだ全然履かなくなった靴は、まるで後悔が並んでいる様に見える。そんな靴を選ぶ事は、まるでパートナー選びの様に慎重になる。素敵な靴を見つけたことを「出会い」というのも頷ける。そんな運命的な出会いをした靴屋さんにまた新たな出会いを求めに行こうと計画を立てる。しかしここで発生するのが「靴屋に何の靴を履いて行くか問題」だ。
 
「靴屋に何の靴を履いて行くか問題」もちろん店員さんは客がどんな靴を履いていようが嘲笑しない事はわかっている。けれど、靴への拘りや愛情が深いであろう靴屋さんの目が気になってしまう。そこでその店で買った靴を履いていけば大丈夫だろうと考える。自信も持ってその靴を売っているのはその店なのだからダサいと思われる訳がない。でも待てよ。コーディネートは大丈夫か?雑に扱って傷んではいないか?こんな人に売らなければ良かったと思われてしまわないか?僕はこの店で靴を買ったことのある人間ですアピールがこれみよがしと思われたらどうしようと不安になる。恥ずかしさを振り払い勇気を出しその店で買った靴を履いて行くことを決心する。
 
「大切に履いてくれて、ありがとうございます。」
 
店員さんが優しくそう言ってくれた。靴をただ買った人ではなく靴のオーナーとして扱われている気分。レイザーラモンのRGさんが「靴は乗り物」と言っていたことを思い出した。オーナーとして誇らしい気分になり、世界の財産を保管しているんだという責任感が芽生える。
 
靴を褒められると嬉しい。またこの靴の成長ぶりを見てもらいに行こう。よく晴れた空に掲げた靴を磨きながらそんなことを思う。
 
 



△撮影:村上健志
 
 


 


Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami


 

 

★靴は、その人の過ごした時間そのものだ。
次回は、12月20日(日)公開予定。
どうぞお楽しみに。
 


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