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フルーツポンチ・村上健志の靴短歌 #2


 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。
 
五・七・五・七・七 の決まったリズムのなかで、ひとつの場面や心情までも、くっきりと描いてくれる「短歌」。
歩くこと、立ち止まること、その足元にはいつも靴があること…。
そんな毎日の風景を、切り取っていただきます。
 
第2回。あのひとに贈りたいもので、じぶんの気持ちがわかるかも。
 

 


 




散々悩んだ挙句、コンソメかうすしおまで絞った君は見落としていたバター醤油味を見つけてしまう。「あちゃー、これも捨てがたい。」と高校最後の夏が終わった球児のように天を仰ぐ。いちいち大袈裟な仕草の君を見ていたら、ふと靴を贈りたいなと思った。
恋人へのプレゼント。相手が欲しいものをあげたいが「何が欲しい?」と聞いて本当に欲しいものを言ってくれるだろうか?本当に欲しいものを言ってくれたがあまりに高価なものを言われるとそれはそれでと思ってしまう。一緒に買いに行くべきか?それともサプライズで?アクセサリーは少し重いと思われてしまわないか?毎日のように身につけるもので、もし相手の趣味に合わなかったら?「似合う洋服がなくて、、、」相手の言い訳が浮かんできて悲しくなる。アクセサリーをあげることは愛の証だと思うほど若くもない。
 
靴をあげたい。靴をあげたいなと思った時、この人が好きなんだなとさえ思う。
ポテチの味を選ぶだけで愛おしい君に靴をあげたらどんなリアクションをするだろうか?「なんだか背徳感」とか言って部屋の中でそれを履いて鏡の前に立つ君。数日は部屋に飾っておくかもしれない。「靴箱も可愛いからふたりの思い出ボックスにしよう」と言って一緒に観た映画の半券や記念日ごとに送る手紙、写真を入れる計画を立てる。小学生ぶりにてるてる坊主を作りデートの天候を願う。僕に似せたというてるてる坊主の顔が全然似ていない。デートでベンチに座り足を上げ靴を僕に見せびらかせてくる。「いいでしょーこの靴!貰っちゃったんだ」「いいね。あげた人センスあるねー」
 
あー靴をあげたい。相手が気にいるかどうかよりも僕があげたいという気持ちが大きく勝る。ドレッシーな靴をあげたなら「この靴が似合うような場所にデートへ行こう」と言い、履き心地の良い可愛い靴をあげたなら「今度、月まで歩いて行こうか」なんて言ってみたい。ネイルが好きな君にはサンダルっていう手もあるか。うーん選べない。なんて幸せな時間なんだろう。後はあげる人がいたら完璧だ。
 
 



△撮影:村上健志
 
 


 


Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami


 

 

★靴をあげたい人が、すきなひと。
次回は、1月17日(日)公開予定。
どうぞお楽しみに。
 


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