おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。
今回は、「漂流」時間をテーマにお届けします。
今年のお正月は、なんだかいつもと違うおみゆさん。
誰しもが身に覚えのある、長年封印されていた時間の扉をついに!
時は戻るのか?
おみゆさんの30代への道、どうぞお楽しみください。
こんにちは。もうあっという間に2月です。いつもぼやぼやしていると過ぎ去る1月ですが、今年の私は一味違うわよ、ってことで2年前のお正月に誓ったテキパキを(隙間時間vol.5参照)よりパワーアップさせるように勤しんでいます。今年の元旦はパッと起きて、パッと顔を洗って、どこに行くわけでもないけどちゃんと服を着替えていたのでお母さんに怒られなかったなぁ。もうすぐ30代突入なのでそんなことでよかったなぁとかのんきに言ってる場合でもないのだけど、そこは見逃して。テキパキ勤しむって何やってんのよ、って話だと思うのですが年始早々私は個人的な偉業を成し遂げたのです。それは、実家の自分の部屋の掃除。
私が実家を出たのは約7年前のこと。でも、荷物をまとめて「家を出ます!!!」みたいな宣言の元ではなく、当時お付き合いしていた今の夫宅と実家を半々で行き来していたみたいな生活から、愛猫しらすが加わり完全に2人と1匹の生活になったのです。なので、自室の時間が7年前くらいから止まっている。もうこれを考えただけでも恐ろしいでしょ。私も長年頭の隅っこでずっと恐ろしかったです。
なぜそんなに自室の時間を大事に温めてしまったのかというと、単純に片付けが苦手なのはもちろん、なんだか過去を思い出すのが照れ臭いし、ちょっと怖かったのもあります。基本的に過去の振り返りは大好きな人間のはずが、この空間だけはなんだか年々見たくないような気持ちが募っていました。この先どうしたらいいかわからずとりあえずもがいて、自分はこうあるべきとガチガチに決めつけてそこだけしか見ない、ある種自分を騙しつつ奮起させて目を瞑りながら猛ダッシュしていたような時期が詰まっていた空間だったのです。18歳から23歳くらいまでの5年の時間がギュッと詰まった、場所。が、7年熟成されてしまった。ひー!
実家に帰るたび、そろそろ片付けなさいよ!と何度もお母さんに言われ「えへへ、今度やるやる」とへらへら笑ってごまかしていた私でしたが、段々とこの部屋が空いたらお母さんが何かに使えるのでは!?もしくは、私の新たな何かを収納できるのでは!?(それは二の舞だから駄目だと思う)と新たな可能性を考えるようになりました。でも、見たくない!なんて気持ちになっても自分にとっては大切な時間に変わりはないので、なくなるのはちょっと寂しい(もうその考えが駄目)。しかし、年末ぼんやりと久しぶりにその部屋に入ってみて「なんかもういいかも」と突如思ったのです。これが大人になるってことなんだろうか。というわけで、年明け早々掃除を敢行しました。30代突入前にやってしまいたかったこと第1弾です。
普段は「これはもう使わないけど、思い出があるし…」とか「これはまたいつか使うかも(大抵その後使わないし忘れる)」とか思いながら全然進まない。しかし年末の決心のせいか時間が経ち過ぎていたのか、いざ始めてみると全然後腐れなく整理できました。高校生の頃から壁に貼ってたNIRVANAとシド&ナンシーのポスターともさようなら。もうプレーヤーもないのに箱に綺麗に仕舞われていたMDともさようなら。ただひたすらに淡々と仕分け作業を真顔で進めている自分に驚きです。普段からこれだったらいいのにな。ひとつこの片付けで嬉しかったのは、さよならしようとしていた高校時代に愛用してた猫の眼鏡ケースをおばあちゃんが受け継いでくれたことです。チャックの部分が尻尾になっていてかわいいのですよ。
あと変化があったといえば誰しもが持っているであろう、思いの丈を宛てもなくつらつら書き綴っている黒歴史のようなノート。今までは面白おかしく読み返せていたのですが、1ページ目で恥ずかしくてギブアップ。10年前ぐらいの思い出は自分の頭の中だけにとどめて都合の良いことだけ覚えておくに限るなと思いました。
本当はね、どうせどこにも行けないお正月だし、お母さんと一緒に映画を見たりしようかなぁ〜なんて思っていたのです。でも部屋の掃除に丸一日かかっちゃったのでそんな時間も過ごせずお正月は終わりました。後からそんなことをぽそっと漏らすと母は映画よりも部屋が片付いたことの方が嬉しい!とこざっぱり。そうですか、今度全然関係ない日にゆっくり映画見ましょうね。今年は自宅の整理整頓も頑張ります。
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