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フルーツポンチ・村上健志の靴短歌 #7

 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。
 
「短歌」は五・七・五・七・七 の決まったリズムのなかで、ひとつの場面や心情までも、くっきりと描いてくれます。
 
今まで気がつかなかったような些細なことも、不思議と面白おかしく美しく見えてくる…そんな言葉たちを、「靴」をテーマにお届けします。

 
第7回。生まれ変わったら?一度は考えたことがあるテーマについて。

 


 




生まれ変わったら何になりたいか?この問題は「無人島に一つ持っていけるとしたら」「明日死ぬとしたら何を食べたいか」と並び答えを出せない、出したと思ったらまた変わってしまう人類に与えられた永遠の課題だと思う。
 
生まれ変わったら、、、ミュージシャンは捨てがたい。歌が上手いってのはもう魔法だと思う。下手くそなのにも関わらず歌うことはあんなに気持ちがいいのだから、大勢を感動させられる来世を思うとたまらない気持ちになる。オプションでダンスも踊れるようにしておこう。
 
寿司職人も捨てがたい。高級なお寿司屋に初めて行った時に味も去ることながら職人さんの所作のかっこよさに本当に惚れ惚れした。修行から逃げださない精神力は今世の僕にはないが、来世の僕ならきっとやってくれると思う。
 
数年前に答えが出かかったのが「雪」。「生まれ変わったら、雪になって会いに行きます」と片想いの人への気持ちを諦めるときに思いついた言葉。もう好きと言わない代わりの最後の足掻き。雪が降った日には自分を思い出してもらえるなんて素敵じゃないかとずいぶん気に入っていた。けれど、その話を人にすると「雪って生き物じゃないじゃん」と真っ当なことを言われた。もしもの話なのにルールに厳しい人がいる。無人島にはハンモックを持って行って生き延びることよりも無人島での数日を楽しみたいと言ったら「無人島なめんな」と怒られるだろう。来世にはどうかそういう人とは知り合いませんようにと願う。
 
そして最近急上昇なのが、初夏の陽だ。初夏の明るくて健やかでうきうきな日差し。あんな風になれたら、今世の僕とは違って色んなものを肯定できるだろう。どこへ射そう、、、パン屋さんがいい。柔らかく光る並んだパンはどれも赤ちゃんみたいに美しい。でも待てよ川沿いの靴屋さんもいいかもしれない。靴の明るさにも抱きしめたくなる愛おしさがある。
 
飾りじゃないのに部屋に飾りたくなるような明るさをもったパンや靴が並べられた店内は、僕の好きな店内のワンツーだ。文房具屋さんは僅差で負けました。
 
お気に入りの靴を履いてパン屋へ行きたい。ならば、また人間がいいか。また振り出しだ。



△撮影:村上健志
 
 


 


Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami


 

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★なにに生まれ変わっても、好きな場所へは行けそうだ。
次回は、6月20日(日)公開予定。
どうぞお楽しみに。
 

 
 


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