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フルーツポンチ・村上健志の靴短歌 #8

 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。
 
「短歌」は五・七・五・七・七 の決まったリズムのなかで、ひとつの場面や心情までも、くっきりと描いてくれます。
 
今まで気がつかなかったような些細なことも、不思議と面白おかしく美しく見えてくる…そんな言葉たちを、「靴」をテーマにお届けします。

 
第8回。絵の中の天使たちは、なぜいつも裸足なんだろう。

 


 




「痛っ!」
「大丈夫?どうしたの?」
「大丈夫。ちょっと椅子の背もたれに羽が引っ掛かちゃったみたいで。」
「そうなんだー、ソファー席空いたら変えてもらう?」
「ううん、大丈夫、大丈夫。」
 
隣の席に天使とその友人が座っている。
 
傷ついた羽をさすりながら、平気だよと言う彼女の笑顔はそこから光が出ているんじゃないかというくらい輝いていた。さすが天使だなと思う。と同時に天使も大変だなと思う。羽が背もたれに引っ掛かったり、お風呂の後に乾かすのが大変だなんて考えてもいなかった。まあ僕にも嫌なことはある。買ったばかりのセーターをざらついた壁にもたれかかって毛玉だらけにした時はすごいショックだった。その時は思いっきりため息をつき何度も舌打ちをした。しかし天使である彼女は落ち込んだり舌打ちをしたなら「似合わないよ」とがっかりされてしまうのだろう。だから彼女はいつも天使らしくしている。屈託のない笑顔、そして裸足で少し浮いている。
 
「写真撮ってください」と頼まれる天使は笑顔だ。天使の友人が慣れた手つきでスマホを受け取りシャッターボタンを押している。天使の友人も大変なのかもしれない。
 
「ごめんね」
「全然、いいよ。てか、これ。少し遅くなっちゃったけど。」
 
と天使の友人が天使にプレゼントを渡している。「開けていい?」と言って天使が開けた箱には靴が入っていた。天使が泣いている。嬉しそうに泣いている。「絶対、似合うと思って」
 
天使はその靴を早速履いている。幸せそうだ。
 
明日、もしかして靴ずれをして痛みがあってもきっと笑っているのだろう。



△撮影:村上健志
 
 


 


Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami


 

 

★もしかしたら、ずっと靴を待っていたのかもしれない。
次回は、7月18日(日)公開予定。
どうぞお楽しみに。
 

 
 


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