おみゆさんことモデルの小谷実由さんによる連載エッセイ。
3年間、毎月お届けしてきたこの連載ですが、今回の36話目にて最終回を迎えることになりました。
長きにわたり、ご愛読くださりありがとうございました。
最終回のテーマは、「再見」時間。
終わりたくない、終わらせたくないこの気持ち、おみゆさんはいかがでしょうか?
どうぞご覧ください!
こんにちは、夏が過ぎ去っていきましたね。今年の夏も夏らしく過ごせなかったけど、夏らしいって一体なんだろうね。ちなみに私は西瓜をたくさん食べました。これを書いているのは例によって8月下旬。家は涼しいから、待ちきれず秋の服を着て書いています。今年はバサッと楽なシャツが着たいな~という秋の予定。胸元が空いてるシャツがいい。
さて、一体なんだろうって思っていることがいま私の目の前にはもう1つあります。それは「終わりってなんだろう」ということなのです。突然なのですが3年続いたこの連載、今回で最終回です(ここで、えー!!!っとご唱和ください)。最初から読んでくださった皆様も、途中からご参加してくださった皆様も、今回初めて読んでくださっている皆様も、貴重なお時間を使ってくださりどうもありがとうございました。
思えば「最後」や「終わり」をあまり意識してこなかった気がする。思いつくのは、学校の卒業や若かりし頃の失恋ばかり。あとは旅の終焉などの楽しい時間の終わりくらい。人生なんでも地続きだ!そんな考えなので、気付いたら違うものにすり替わっていたり新しい何かが始まっていたりすることの方に気を取られることが多かった。そんなわけで「終わらせ方」みたいなものが全くわからない、もはや終わらせたくないんじゃないの、そりゃ終わりたくないよ、ねぇどうしよう、NAOTさーん。
でも、終わりがあるから始まりがあるわけで、そうやって自分では気づかなかった何かを終わらせてこれも始まったのではと思うので、終わらせなきゃいけないですね。新しく何かが始まることを願って。
でも、なんだかしみじみ振り返ることは野暮ですな。3年前、この連載の話をもらったとき、ベッドの上で猫の発する睡魔と戦いながら(一旦書いてる間に寝てるから負けてる)書き始めたものがこんなにも積み重なって、自分の中で1つのブームが終わったり(チョコミント)、家の中でよくお風呂や洗面所にいるという行動パターンが判明したり、どんどん自由に文章を綴ることができるようになりました。それが良いか悪いかはあんまり分かりませんが、とにかく楽しく鍛錬させてもらえるような場所だったなぁ。
いかん、しんみりしている。本当に終わらせ方がわからない。放っておいたら一生書き続けそう。
ここで最近の私は何を考えているのか探るためスマホのメモをチェックです。8月16日のメモ、「作家の名前を見て、誰かを思い出すのが嬉しい。本の話ができる人がいるの嬉しい。」とな。こないだ、雑誌の取材で初対面でほぼ丸一日時間を共にした編集の方がいました。初対面とは思えないくらい話が盛り上がって、まるで休日のような楽しい時間を一緒に過ごせた人でした。その人と最後の取材場所でつい話し込んでしまった話題が本について。私は、読んだ本の話や、好きな作家さんの話を誰かと熱く語り合う機会に居合わせたことがあまりなくて、自分が密かに思っていた作品に対する見解を聞いてもらえる時間などがあまりにも嬉しく、誰かと本の話をするってこんなにも楽しいことなんだ、と新しい世界を知ったような感覚になったのでした。共感がこんなにも嬉しいと思えたことはないかもしれないというほどに。そのときに話していた彼女の好きな作家さんの名前を、8月16日に読んでいる本の中で見つけたんだったと思う。西加奈子さんの『ごはんぐるり』の中で見つけた、いしいしんじさん。こうやって、好きなものの中からまた好きな誰かや何かを思い出すじんわりとあったかい嬉しさの連鎖みたいなものをもっと体験したい。それにはこれからもたくさんの人と話がしたいな、とシンプルにそんなことを思います。
なぜか最後にスマホのメモの内容を突然公開して終わろうとしている。公開できるメモがあってよかったな。その他はおつかいのメモと相変わらず恥ずかしくて公開できない言葉たちばかりです。おつかいのメモには毎度「牛乳、キウイ、小松菜」がランクインしています。
皆様、楽しく美味しい秋を。ありがとう、また逢いましょう。すぐね。
Instagram: @omiyuno

2018年から連載を続けてきた小谷実由さんのエッセイ。来春、ついに書籍『隙間時間』としてループ舎から発売が決定しました!WEBマガジンのエッセイに加え、書き下ろしのエッセイや写真なども収録。本ならではの充実した内容でお届けします。
書籍『隙間時間』のおみゆ節も、どうぞお楽しみに!