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フルーツポンチ・村上健志の靴短歌 #11

 
お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。
 
「短歌」は五・七・五・七・七 の決まったリズムのなかで、ひとつの場面や心情までも、くっきりと描いてくれます。
 
今まで気がつかなかったような些細なことも、不思議と面白おかしく美しく見えてくる…そんな言葉たちを、「靴」をテーマにお届けします。

 
第11回。わかりづらい惚気って、いちばん惚気だよなあ。

 


 




 
コンビニでおやつと飲み物を選び、店を出ると急激に日が暮れている。「暗っ、暗くなるの早」と声を出す君。その声の大きさと切れ味が妙におかしい。何遍も経験したはずの、秋の日がたちまちに落ちるさまにファーストリアクションのように驚く姿が愛おしい。誰かに自慢したくなる。これ多分、幸せってやつの正体だ。「こんな僕ら二人のこと映画化した方が良いっすよ。だって人間がこれまで答えを出せなかった恋の正体っすよ、間違いないっす。」と思うが、、、当然のボツ。運命も邪魔者も奇跡も登場しない話がラブストーリーになる訳がない。
 
彼女の学生時代の卒業アルバムを開き、みんなから嫌われていた先生のあだ名を聞いて「ひっでー」と笑った時間。一緒に協力プレイのゲームをする時に地球防衛軍さながらな口調で会話すること。たこ焼きの可能性を探究し色々な具材を入れてみるが、結局タコを入れた普通のたこ焼きが一番美味しかったこと。そのことは言わずに「ひき肉意外にありだねー」と自分達の挑戦を称えあったこと。僕よりも僕のサボが似合っている君に少しの悔しさと大きな誇らしさを覚えたこと。
 
僕の恋の話は、どれもラブストーリーのクライマックスにならない。ささやかな瞬間ばかりだ。惚気話にもならないようなつまらない話。けれど、誰かにわかってもらえなくても大切だって確信が持てる。映画になんてさせてたまるか。
 
でも、もしかしたら。いい感じの音楽つけたら結構良い作品になるかもしれない。映画化のお話お待ちしています。
 



△撮影:村上健志
 
 


 


Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami


 

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★サボが似合って見えたのも、だって、君のこと好きだからじゃん!
次回は、10月17日(日)公開予定。
どうぞお楽しみに。
 

 
 


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