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フルーツポンチ・村上健志の靴短歌 #12 最終回

お笑いコンビのフルーツポンチ・村上健志さんによる、短歌とエッセイの連載。

じつは、今回でこの連載、最終回なんです。
さみしいなあ。
 
五・七・五・七・七。
たった31音で、うれしいもくやしいも、恋も家族も、ひとりで過ごした長い時間のことも、こんなにあざやかに見えてくるなんて。
時に笑い、涙し、励まされた2年間でした。
 
さあ、最終回です。
ある秋の日のこと。
あなたにとって末長く、靴がこんな存在でいてくれたらと願います。
 

 

 


 




 
ロールプレイングゲーム(略してロープレ)の武器屋で新しい武器を買うときが好きだ。レベルが上がり新しい魔法を覚えるときよりも、ボスを倒す瞬間よりも好きかもしれない。新しい街で手に入る強い武器。こんなに攻撃力が上がるのか!炎の力!対ドラゴン用!すごい!でもパーティー全員に武器を買うにはお金が足りない。どうしようと悩みながら武器を選ぶ。そんな冒険の準備が好きだ。
 
同じようなワクワクが靴屋で靴を選ぶときにもある。絵本に出てくるりんごよりも赤い靴。少しくらいの嫌なことなら蹴飛ばしてくれそうな逞しい靴。足元を見る度に元気をくれる可愛い靴。経年と共に味わいの変わる成長する革靴。さあ、どんな靴を選ぼう。最強の靴を装備すればどんな冒険も乗り越えられそうな気がする。共に歩く相棒を見つけるのだ。
 
剣も盾も魔法の杖もいらない。履き心地の良い靴で毎日を歩きたい。それどこで買ったの?と褒められたい。デートだろうが、面接だろうが、何が起こるか分からない冒険な毎日よ、かかってこい!俺にはお気に入りの靴がある。しかも、沢山歩いたって疲れないんだ。
 
冒険には準備がいる。ゲームと違って靴はサイズ選びが重要になるが、大丈夫だ。一緒に選んでく れる店員さんがいる。
 
準備は整った。さあ冒険に出かけよう。といっても、特に敵がいない宝の地図もない。でも天気が良い。いちょうでも踏んづけに出かけよう。
 



△撮影:村上健志


 


Instagram: @mura_kami_kenji Twitter:@fpmurakami


 

 

★そう、私たちには、この最強の武器がある。

 
 
これからも、冒険は続きます。ふつうの日々でも、小さなことも、驚き、かなしみ、喜んで。
毎月楽しみに読んでくださったみなさま、いつも真摯な言葉で世界を彩ってくださった村上さん。本当にありがとうございました!!!
 
 


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