専門家の先生をお迎えし、足・靴にまつわる疑問を解消するコラム「足と靴の質問箱」。
第5回は引き続き「足育研究会」の代表として、そして「済生会川口総合病院」の医師としてご活躍の高山かおる先生の登場です。
高山かおる先生には、今後も引き続き、専門家の先生ならではの視点でお話していただく予定です。
ぜひ、みなさまのお役にたてますよう。
足育研究会:WEBサイト
Q.足裏のケアは必要ですか?
A.見た目だけでなく健康面からもケアは必要ですよ
足について悩みがあるかのアンケートを行うと、「足のかかとがガサガサしている」「かかとにひびが入って痛い」など、かかとの角化(硬くなること)や亀裂(硬くなって力がかかるとひび割れること)に関するものが多いそうです。
亀裂は痛みがあるので、悩みとして納得できるかもしれませんが、実はかかとのガサガサには痛い以外にざっくりいうと4つ問題があります。
かかとガサガサにまつわる4つの問題
1.美脚・美足を損なうおそれ
ひとつめは見た目です。特に夏になると、はだしになることが増え、かかとがカサカサしていることは気になるポイントになるようです。またストッキングはガサガサしているとひっかかって破れてしまうなどの悩みもよく聞きます。
2.水虫の可能性
水虫は一般的には指の間にじくじくした痒い病変であるイメージが強いですが、この症状は趾間型といわれるものにあたります。
足水虫にはその他にも足の裏に水疱ができる水疱型や、足の裏の角質が増殖する角化型といった臨床型があります。角化型は足底やかかとの皮膚が厚く硬くなり、表面は皮膚がむけてざらざらしています。つまりかかとがガサガサしているときには水虫の可能性があり、さらにあまり痒くないため、しばしば無治療で放置されてしまいます。
ガサガサしている場合は、一度水虫を診てもらったほうがよいでしょう。
3.かかと荷重の可能性
そもそもなぜかかとがガサガサするかということを説明します。
かかとを含めた足底の皮膚は他の皮膚と違い、厚く硬くなるように遺伝子がコードされています。体重がかかるため、弱い皮膚ではすぐ傷ついてしまうので厚い皮膚ができるようにうまくつくられています。そして、それは重い荷重がかかるほど厚くなります。
立ち姿勢で考えてみましょう。
立っている時というのは、足の裏の出っ張っているところ、つまりかかとと、前足部と言われる指の付け根のところに体重がかかります。
この2か所に体重がうまく均等に乗ればいいわけですけれども、どちらかに偏ってしまうことがあります。
簡単に実験してみましょう。
まずは指を浮かせてかかとに体重をのせることを意識して立ってみてください。この時には腰が反り、胸が張るという姿勢になってしまっているかもしれません。逆に体重が前足部にのってしまっている時は、背中が丸まり、首が前に出てしまっている時になります。
かかとがガサガサになってしまう時というのは、かかとに体重がかかりすぎている可能性があるので、姿勢を見直す必要があります。
もう一つ、この皮膚の特徴から考えると、強く擦れることがあるとかかとはガサガサします。強く擦れる時というのは、歩き方や姿勢もありますが、足と靴が合っていないために、ズルズルと足の裏が引きずられてしまうというパターンも。
その場合、足と靴がきちんフィットしているかチェックする必要があります。
4.ターン オーバーの遅延
皮膚は常にある一定の速度で生まれ変わります。その生まれ変わる周期のことをターンオーバーと呼んでいます。足の裏のターンオーバーは、厚い角質を作るためほかの部位よりは長いことが知られています。また、ターンオーバーは血液の流れがスムーズなほど順調に回りますが、足という部位は心臓より最も離れているため、血液の循環が悪くなるということがあります。
血液の循環と簡単にいっても、二つの重要な要素があります。一つは心臓と肺を通って酸素や栄養を届ける動脈、もう一つは栄養を体に運び終わった古い血液を回収する静脈です。
動脈の流れが悪くなる時というのは、閉塞性動脈硬化症という病気が合併している可能性もあります。そんな時にかかとにガサガサから亀裂が起こると、その亀裂から潰瘍(皮膚に大きな欠損ができる)が出来てしまいます。
静脈の流れが悪くなる時というのは、静脈の逆流を防いている弁がこわれてしまった時や、ふくらはぎの筋肉が弱くなって血液の回収がうまくいかなくなる時です。
血流が悪くなると、ターンオーバーというのは大変に滞ります。また冷えなどの原因になることがあります。かかとがガサガサしているということは、血液の流れに問題がある可能性があると言うことをぜひ知っておいてください。
足裏のケアは必要か?
ご存知の通り足の裏というのは見ようと思わなければ見えない場所です。
ケアをする必要性の理由の一つは足を見る、足を触るということにあります。不調に気がつくためです。
また、循環障害という合併症を考えた場合、ケアをすることでかかとのガサガサは改善できますし、亀裂も防ぐことができます。循環障害がある場合には足のさらなるトラブルから守ることにもなります。そしてそれは結局美脚にもつながります。
また、皮膚は古い角質や汚れを洗って落とし、保湿をすることでターンオーバーが促進します。当然足の裏の臭い対策にもなります。
方法は簡単です。石鹸を泡立て、泡をころがすように丁寧に洗い、タオルで水をしっかりふきとった後に、なでるようにクリームを塗ります。ちなみに、やりすぎてしまうことは逆にトラブルにつながるので、角質をあかすりや軽石でこそぎ落とすことは推奨していません。
足に塗るものは、セラミド含有クリーム、尿素軟膏、ビタミン含有軟膏など様々なものが手に入りますが、自分の好みのもので構いません。そのかわり長くケアをつづけるようにあまり高価すぎず手に入りやすいものがよいでしょう。
スキンケアの手順
1FTU(=成人の人差し指の先から第一関節の長さまで出した量)が目安です。十分な量を意識しましょう。1FTUで成人の手のひらの面積、約2枚分に塗れます。
添付の際はすり込まず、なじませるように塗りましょう。薄く広く、皮膚の溝にそって広げるイメージです。薄いティッシュがくっつかないくらいが理想です。
スキンケアは皮膚を洗浄した後、すぐに塗ることで効果が期待できますよ。
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なるほど!見落としがちな足裏のガサガサ、身体の不調に気づくきっかけにもなるんですね。
先生、ありがとうございます。