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足と靴の質問箱/第4回「タコ、魚の目はなぜできる?」


 
専門家の先生をお迎えし、足・靴にまつわる疑問を解消するコラム「足と靴の質問箱」。
第4回は再び、「足育研究会」の代表として、そして「済生会川口総合病院」の医師としてご活躍の高山かおる先生の登場です。
 
高山かおる先生には、今後も引き続き、専門家の先生ならではの視点でお話していただく予定です。
ぜひ、みなさまのお役にたてますよう。
 
 

足育研究会:WEBサイト
 
 
 
Q.タコ、魚の目はなぜできるんでしょう?
 
A.強い圧力が繰り返しかかった時、その防御反応としてタコ・魚の目ができます
 

足の裏や足の指にタコや魚の目ができて痛いということは、多くの人が経験したことがあると思います。痛みを起こすこの二つのものは、はたして自分にとって敵か味方かから考えてみたいと思います。
 

皮膚の構造
皮膚はご存知のとおり、内蔵を覆うカバーの役割を果たしています。皮膚は、汗などを分泌して体温調整をおこなったり、痛みや刺激に対して反射的に逃げたりする能力である知覚を備えているほか、外からやってくる様々な物質に対して、複雑な免疫応答をおこなうシステムがあり、異物を体内にいれないようにウォッチしています。
また、皮膚は頑丈な構造をしており、外界からかかる力や化学的刺激、さまざまな汚れ(細菌、ウイルス、真菌)から体内を守っています。この外界からかかる力をブロックできるのは、表皮がいつも新鮮な角質を作り出すこと、真皮に弾力線維があること、そして脂肪というクッションがそなわっているためです。

 

タコ・魚の目の正体
タコ・魚の目は、表皮がつくりだす角質が厚く重なったものを指します。厚く硬い角質はどんなときにできるかというと、強い圧力が繰り返しかかった時です。つまり強い力に対する防御反応と考えられます。タコは丘状にもりあがり、魚の目はクサビ型に皮膚の中に埋め込まれた形になります。

 

タコ・魚の目は敵か?
タコや魚の目は、一度できるとなかなか治らず、しばしば強い痛みを伴い、ときには皮膚そのものを傷つけて深い傷を作ることさえあります。
糖尿病の神経障害(しびれや麻痺など)がある方にとっては「糖尿病性壊疽(えそ)」といって、足が腐ってしまうきっかけになることさえあり、実は大変に注意を要する病変です。
糖尿病がなくても、痛みのために歩きにくいということもあり、まるで自分にとっては敵であるように思っている方も多いと思います。しかし実は上述したように、皮膚はそもそも身体の中を守る役割を果たしています。
タコや魚の目も強い圧力に対して、身体を守るためにできる防御反応なのです。
 

手にもタコはできますが、手にできたものは例えば、書き物をする方にできる「ペンダコ」、野球のバッドを振るとできる手のひらのタコなど、どちらかというとそれはよく練習をした証であり、それがないと力が発揮できず不便を感じたりするもので必要なものなのです。
糖尿病壊疽につながったら敵じゃないかといわれるかもしれませんが、タコができなければ、もっと早々に傷になってしまうし、なによりタコがあることで異常を自覚できるということを意味します。つまりタコ・魚の目はその場所に過剰な負荷があることをしらせるサイン、つまり自分の強い味方といえるのです。
 

タコ・魚の目ができたらどうする?
しかし、やはり痛みは困ります。痛みは「力がかかりすぎているのでなんとかしてくださいというSOS」なのです。
ではどうするか?ということですが、厚いところをけずって取ることは有効です。しかし、同じ場所にまた同様の力がかかれば当然また大きく育ってきますので、答えはシンプルです。その場所に力がかかりすぎないようにすればよいのです。
 
まず必要なことは靴と足のフィッティングです。足が履物の中ですれることは過剰な力の大きな要因になっています。サイズをあわせて、紐を締めたり、ベルトをしっかり留めることは擦れを防ぎます。
家の中のスリッパも擦れをおこす原因になっていますので、できれば踵を包み込むカップインソールや室内履きをお勧めします。
もう一つ大切なのが足への荷重を分散させることです。引きずり歩行やがに股歩行、外反母趾のある方などは注意が必要です。ストレッチにて足首を柔らかく保ち、足趾をしっかり使うことを意識して歩いてみてください。

 

おわりに。いつも足を診察するときに感じることですが、タコや魚の目などの足の異常は身体への訴えそのものです。その訴えに耳を傾け、自分の異変に対して「靴・靴下をみなおす」「運動習慣をみなおす」という行動をおこすことこそ、病院にいくよりずっと大切なことです。そのために靴の専門家やリハビリや運動の専門家の手を借りることをおすすめします。

 
 
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なるほど!タコや魚の目は、自分の身体を見つめ直すきっかけにもなってくれるんですね。
先生、ありがとうございます。
 
 

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