
いつも何か物を探している気がする。探すのをやめたとき、みつかることもよくある話だけど。
探すのをやめて数年たってもみつからないものがある。たぶんこれからも・・・
さかのぼること6年前の夏。 長野の湖畔のキャンプ場で開催された野外イベントにNAOTで出店した。
奈良から会場まで、車で片道5時間半ほど。私と、もう一人のスタッフとで。
大きな車を借りて、テントや棚などの什器、備品もろもろを積み込んでいく。よし、OK!
イベントの備品のなかで、欠かせないものがある。
それが、スタッフの私物の、履きこんでくたくたになった靴たちだ。私たちは、これらの靴のことを「経年靴」とよんでいる。新品と違って「経年靴」を見るだけで、履いていくと革が柔らかくなじむのがわかるし、色や風合いの変化もわかる。だから、NAOTの話をするときは、たいてい経年靴もセットで登場する。
このイベントに、「経年靴」として、自分の赤色のサボを持っていった。
赤のサボは、ブースに来てくださるみなさんに見てもらったり、履いてもらったりして大活躍だった。
赤色ってルンとしますよね! っていう話もルンルンでしてたと思う。
2日間のイベントを終え、行きと同じくテントや物品を車につみこみ、奈良まで一気にブーンと。
到着後、荷物を積み下ろし、片付けをしているときに、気がついた。
赤いサボの片足が、ない。
たしか、後部座席のサイドのドアのあたりにつっこんだよな、という記憶があったので、返却した車にとり残されているだろうと、レンタカー屋さんに電話をかけた。
「あの〜、車内に赤い靴の片方だけ、忘れてましたよね?」
あっさり、なかった。
もう一人のスタッフと、あっれ〜〜、と浅い記憶をたぐってみたけど、キャンプ場にはゴミひとつ残さず、すべてきれいに撤収した自信だけはあって、長野の湖畔には絶対残っていない、という結論になった。
今でも、撤収後の、森のなかの何もない茶色の地面が思い浮かぶ。
ということは・・・考えられるのは、帰路のどっかのサービスエリアでドアをあけたときに落ちた? くらい。
その説も、謎なことはある。でも、もう今はわからない。気持ち半分、サービスエリアの駐車場に落とした、ということにしている。
しかし、サービスエリアに片方だけの靴が落ちてたら、恐怖かも。
なにかしらの事件性も感じるし、事件じゃなかったにしても、片方の靴をなくした持ち主が素足でアクセル踏んでるんか? という想像も、よくわからない恐怖
探すのはやめてしまったけれど、いつか超ミラクルが起きるかもしれないので、手元に残った片方の赤いサボは、ずっと持ち続けている。
あのワイン色、えらく熟成しているかな。
(文/スタッフ 服部)