Column

さんぽびより #森見登美彦さん 2/2


 
NAOTスタッフが「一緒にお散歩したい!」と思った方と、ぶらぶら街を歩きつつ、話をしつつ、目に留まったものをパシャりと写真におさめていただくこの企画。
 
第二弾は、小説家の森見登美彦さんに、奈良・生駒山の宝山寺周辺をぶらり歩いていただきました!
 
▷前編はこちら
 
◆プロフィール 森見登美彦さん


 

森見:ここで右に行ってもいいですか?ケーブルカーの線路があるんです。

ー滝もあるんですか?

森見:線路を越えると出てきますよ。滝行ができるような脱衣場もあって。

ー滝行。森見さんもするんですか?
 
森見:やらないです(笑)誰かいるかな?って覗きには行くんだけど、誰も見たことないです。
 
ー誰か修行中でもちょっとだけ気まずいですね。森見さんは狸や達磨をファンからいただくというお話されてましたけど、自分でコレクションされてるものはありますか?
 
森見:あんまり収集癖はないですね。本ぐらいかな。基本的には貰い物が増えていく。あとはさっきのノートみたいに、ちまちま書いたものが増えていくくらいですかね。
 
ーノートはいつぐらいのものからあるんですか?
 
森見:子供の頃からのです。小学校3年生くらいかな、母親に買ってもらった原稿用紙にお話を書いて挿絵を描いてっていうのが今も残ってます。子供ながらに、一応ちゃんと”お話”でしたね。
 
ー著書『ペンギン・ハイウェイ』では子供目線でお話を書いてらっしゃいましたが、実際にその頃の作品を参考になさることもあったんですか?
 
森見:あれはその場で思いついて書いてました。
 

 
ーそうなんですね、自分の子供の時に考えてたことを思い出してしまって、すごくリアルでした。
 
森見:子供の頃の頭の中を再現しながら書いてたんだと思います。人に比べると、昔の妄想とか、しつこく覚えてる方かもしれないです。小説家ってそういうものかも。
 
ー妄想をいかに膨らませられるか、というお仕事なんでしょうか。私も妄想クラブっていうのを大学生の時にやってたんですけど…。
 
森見: 妄想クラブ?(笑)
 
ーファミレスでしょうもない妄想をするだけのクラブで…。やっぱり小説家になる人はレベルがちゃうな~って、森見さんの本を読んで実感しました(笑)
 

 
森見:ここが宝山寺駅の次、梅屋敷駅ですね。ケーブルカー本体が近づいたら車体の音も聞こえるんですけど、たまにこのケーブル線だけががいきなり動き出すから、かなり怖いです。びくーってしますよ。けど、ギリギリまで近づいて写真が撮れるスポットです。
 

 
ー大人の撮影スポットですね。毎回ここまで来られるんですか?
 
森見:滝の方まで行くこともあるし、日によってルートを変えますね。生駒山に来る時は、普段あんまりにも運動してないぶん罪悪感にかられて、よく歩きます。家の近所を散歩するときはもっと適当です。
 
ー以前は作家活動と並行して会社勤めもされてたんですよね。今は時間が自由に使える分、タイムスケジュールの管理が大変そうです。
 
森見:そうですね、特に最近乱れがちなんです…。大体は朝から昼過ぎぐらいまで書いて、その後ご飯を食べたり散歩をして、夕方から調べもの・メール返信・雑用なんかをします。
 
ー小説家の方って、夜中に一気に書きあげる!っていうイメージがあります。
 
森見: 昔、兼業で書いてる時はめちゃくちゃでしたね。そんなん出来たのはデビューしてから最初の数年だけで、今はもうそんな風に書けなくなって。体がついていかなくなりました(笑)
 

 
ーこっちに帰られてから、奈良の物語を書いてくださいって言われませんか?
 
森見:言われますね~。自分でも書きたいです。実際に生活している近所を舞台にするので、今は京都より奈良を書きたいなと思うんですけど…なかなかどうして。どうやって書けばいいんやろなって。奈良らしく大仏とか鹿を出すと、「またか」ってなるし。そういうものを出さずに奈良らしく面白く書こうとすると、なかなか難しい。
 

 
ー奈良って、広いんですよね。
 
森見: 名所が県内に散らばってるんですよね。京都はコンパクトやったなって思います。
 

 
ーでもこの宝山寺周辺はわりとキュッて詰まってて面白いですね。盛りだくさんな感じ。
 
森見:そう、こちらに帰ってきてからのお気に入りなんです。宝山寺って、便利な場所にあるから来るのにあんまり時間かからないのに、なんかものっすごい遠くに来たような気がする。気分転換にいいんです。朝から仕事して宝山寺行って家に帰ると、あれ?今日ってこんな長かったっけって思うんです。
 
ー1日が長く感じるんですね。
 
森見:宝山寺はまだ観光客が殺到するかんじでもないし、それもちょうどいい。時々、中国の方とか見ますけど。よくここを見つけたな〜って感心します(笑)
 

 
ーすごい日本通の方ですね。ガイドブックに載ってるんでしょうか?というか、森見さん足取り軽いですね!
 
森見:そうですか?(笑)
 
ー軽快です!下り道が多くて、スタッフはもう足がわらってきてますよ。
 
森見:下り坂って普段と違う筋肉使いますもんね。
 

 

 

 
ー森見さんの作品にもよく電車が出て来ますけど、奈良で好きな線はありますか?
 
森見:好きっていうのは特にないですでけど、愛用してるのはやっぱり近鉄ですね。奈良の北のほうに住んでると、JRにはあんまり乗る機会がなくて。お、下界に降りて来ましたね。
 

 
森見:京都ではよく大文字山に登ってたんですよ。
 
ー森見さんの作品にも度々出て来ますよね。
 
森見: サイズ的に生駒山と同じくらいの体感で。山に登るぞ!っていう感じの山登りが苦手なので、散歩の延長で登れる規模なのが嬉しい。朝5時に大文字山に行くと、ポロシャツのおじいさんがいつもいてて。実は山の側の病院のお医者さんで、すごい人でした。あ、ほらあの家、いつも気になってるんです。ドアとか窓が細くて。
 
ーおしゃれなお家。本当に民家の近くを通る路線なんですね。
 
森見:実は由諸正しい日本で初のケーブルカーなんですよ。
 
ー近くにあるのに全然知らなかったです。奈良、奥深いですね。
 

 

 
ーでは最後に、森見さんにとってお散歩とは?
 
森見:単純に、運動不足解消でもありますね。スポーツクラブとか恥ずかしくてしんどいので、さすがに歩くくらいはしようと努めてます。
 
ーじゃあ単に体のためだけに…?
 
森見: あ、いやそんな殺伐とした関係ではないですけど(笑)気分転換にも良くて。やっぱり書いてると思い詰めちゃうので、それを頭からちょっと外して近所をうろちょろするとスッキリするんです。散歩は作品作りの役に立ってるな〜と思います。昔から、何か考える人には散歩がいいと言いますし。僕も先人にあやかって、良いアイデアが生まれるといいなって。
 

 

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◆森見登美彦さん
1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部大学院修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、小説家デビュー。2007年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を、2010年『ペンギン・ハイウェイ』で 日本SF大賞を受賞する。『四畳半神話大系』『有頂天家族』『有頂天家族二代目の帰朝』はTVアニメ化もされた。ほかの著書に『四畳半王国見聞録』『聖なる怠け者の冒険』『夜行』等がある。
Blog: この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
X: @Tomihiko_Morimi
 
 
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