Column

さんぽびより #飯島奈美さん #安部眞史さん


 
NAOT JAPANがいま気になるあの方にお話を伺うコーナー「さんぽびより」。
今回は、飯島奈美さん(フードスタイリスト)と、安部眞史さん(JAXA:宇宙航空研究開発機構のエンジニア)にお会いしました。
 
お二人の出会いは、安部さんが人工衛星・いぶき2号を担当時に企画された「未来レストランいぶき」。そのコンセプトは、温暖化が進んでしまった未来に食べるかもしれない料理というもの。飯島さんは、真っ青なスパゲッティや透明なたこ焼きなどのメニュー開発に携わり、話題になりました。
 
そんなお二人に、代々木公園で自然を感じながら、もの選びや散歩についてのお話をお伺いしました。
 
◆プロフィール 飯島奈美さん / 安部眞史さん
 


 

-ふだん散歩はされますか?
 
飯島:仕事でのもの探しで歩くんですが、それ以外だと散歩って意識しないとしないかもしれないですね。最近サボってるんですけど、俳句をやっていて。歩きながらその環境を見たり、感じたことを俳句にする吟行をしています。
 
-お気に入りのルートはありますか?
 
飯島:川が見えるところっていいですよね。前の事務所が中目黒にあったので、目黒川とか、八王子市出身なので多摩川とか。そういうところを通ると、懐かしい風景が広がるんです。水のあるところが好きですね。
 
安部:いいですね。僕はつくば市に住んでいるんですが、散歩ってそんなにしなくて、自転車に乗ることが最近多いんです。でも東京に来ると、いろんなものを見たいから、ひたすら見て歩きますね。できる限り、やばそうな道に入っていくんです。

-やばそうな…?!

安部:ここには何もないだろうとか、なんだか澱んでいそうな雰囲気の道に入っていきたくて。風情があって好きなんです。

飯島:私もそういうところ好きですね。例えばいつも行ってる合羽橋でも、いつもとちょっと違うところに車を停めて歩くと、新しい発見があります。渋い喫茶店を見つけたり。それと昔からある調理道具や日用雑貨を売ってるような店って、ありますよね?地方にロケで行くと、そういうところを探して行くのが好きなんです。

安部:金物店とか、時代が止まったような感じですよね。

飯島:ビニールもちょっと黄色く劣化しちゃってたりね。同じ用途のものを雑貨屋さんや100円ショップで買えるんですけど、昔のデザインがステキでびっくりすることもよくあります。

安部:ああいう店って、すごいですよね。もう30年間、ここから動いてなさそうな鍋とかあるじゃないですか。現地でそういうものを買われるんですか?

飯島:もうすごいですよ。私が買い出すと、周りは購買意欲を失うぐらい。見てるだけで、満足しましたって(笑)。

-お買い物のときに、意識してることはありますか?

飯島:私は古いものがすごく好きなんで、古い調理道具が売っている店も好きですし、今着ているような古着も好きです。家具も古いものが好きなので、北欧とかチェコのものを買ったり。あと、もし自分のお店を作るなら、新品で作るよりも古い木材をきれいにして使ったら、最初から味が出るだろうなとか想像したり。そういう、すでにあるものを使うのが好きですね。

-食器もですか?

飯島:はい、骨董市とかで古いものを買うんですよ。今これを作ったらもっと高いよなっていうものが、骨董市にはあるので、絶対にそっちを選びますね。私がちらし寿司でよく使う飯台は、樹齢100年の秋田杉を使っているので、作るのに100年かかるわけですよね。なのに、5万円ぐらいで買える。角がないから綺麗に洗えるので、汚くならないんです。もう10年ほど使ってますが、まだまだ状態が良いんで、すごい技術だなって思います。そういうものを、なるべく選びたいですね。

安部:僕はどんなものでも、自分の中のパラメーターを作るんです。パソコンとかテレビでも、自分がこれに求めるものはなんだろう?って。値段、デザイン、機能性、頑丈性とか、いくつかの候補を見て総合得点の多いもの、特に実用性の高い物はこういう視点で選んでますね。逆にファッションは、インパクトの強さというか、この洋服に対して自分がいくら払えるかみたいなところで選ぶことが多いです。

飯島:基準がはっきりされてますね。

安部:他の人から見たら、服一着でそれはありえないだろうっていう値段のものも世の中にはいっぱいあると思うんですけど、お金を払ってでもこの強さを纏いたいなっていうものがあるんですよね。なので、割と両極端かもしれないです。

-思い入れのあるものはありますか?

安部:今つけてるネックレスですね。インディアンジュエリーっていう、ネイティブアメリカンが作っている銀細工なんです。このモチーフはスターブロワーズといって、星を生み出すものを表しているんですよ。

飯島:安部さんにぴったりですね!似合ってます。

安部:ネイティブアメリカンって、もともと銀細工はやらないんです。彼らが扱うものは金属じゃなくて、毛や木、角とか。でも移民が入ってきて苦しい状況に追いやられて、その移民が持ち込んだ銀とか金属加工の技術を学んで、土産物として彼らが自分たちのデザインで作ったりして。それがどんどん洗練されて、今はジュエリーとしての地位を築いて、世界で認められている。彼らの技術と美意識はすごいなって思います。

飯島:すごい。どこで出会ったんですか?

安部:とある服屋でインディアンジュエリーフェアをしていて、その頃ちょうど人工衛星のプロジェクトにアサインされた時だったんです。このモチーフが吹き出している星は、夢とか希望、命のことなんですよね。自分も人工衛星を作るからには、そういうものを生み出したいなと思って。

飯島:安部さんは人工衛星を作る、私は肉じゃがを作る(笑)。

安部:それで「未来レストランいぶき」で出会うっていう(笑)。

安部:そういうデザインの思想であったり、設計の思想をすごく感じるものが、好きですね。靴の話でいうと、長く使える靴って結構あるじゃないですか。でも実際、例えば修理をすると新品を買った方が安かったり、手間がかかったり。NAOTの靴はそうじゃなくて、かかとが減ったらそこだけ継ぎ足すとか、窮屈だったら革を広げられるとか、それを自社で全部やれてるのがすごいなと思いました。それと、部品を交換しやすく作ってるなと。履きやすさと長く使うっていうのが、設計として反映されてるのがすごくいいですね。

飯島:履きやすいんですよね。履いた瞬間、なんか全然違うっていう。

安部:すごくいいと思うんですよね。しかもちゃんと低価格で修理までできる。

飯島:そうですよね、本当に。それが長く履ける秘訣です。

安部:お店でいろいろ試着させてもらって、それぞれの思想が見えてきて、すごい面白かったです。

飯島:いろいろ欲しくなっちゃいますよね。

安部:あと時間が経つと変わってくるじゃないですか、それもいいなと思って。

-自分だけの一足になっていく楽しみがありますね。使っている人との歴史が全部靴に出てくるんです。

飯島:わあ、怖い(笑)。

安部:この人、雨でも関係なく履いたなって靴がありますもんね。

飯島:まあそれはそれでね。でもすごいきれいに履いてる人と会った時、ショックを受けます(笑)。ちょっと雑な人間と思われちゃうかなって。

安部:そういう鷹揚さがいいですよね。キメキメじゃなくても履けるっていうのが。

-汚れるのが悪いことでもないし、傷が入ってもその時の思い出なので。それもよしとして育てていただけたら嬉しいです。

安部:飯島さんは、ほぼ日さん経由でNAOTを知ったんですか?

飯島:そうですね。ほぼ日の「生活のたのしみ展」で履いて、何足かお迎えして。すごく履きやすいんでね。

安部:立ち仕事がめちゃくちゃ多いですもんね。

飯島:でも仕事場に履いていくと、小麦粉とか油がついちゃうので、カバーが欲しいんですよね。透明なラップみたいな。それか薄い端切れの革みたいなのがあれば、革のカバーもいいですね。

安部:いろいろかぶるわけですよね。

飯島:そう。靴にかかった瞬間、もう落ち込むじゃないですか。けど撮影は続く…ですよね(笑)。止められない。なので、最近撮影の時は、便所サンダルのおしゃれなのを履いてるんです。

安部:あれはあれでメリットがあるんですよね、すぐ洗えるし。

飯島:だから現場ではIRISからサンダルに履き替えてます。そのサンダルはパーツを付け足せるんですけど、それみたいに、IRISにも何かうまくつけられたらいいですよね。ずっと履いてて楽だからIRISを履きたいんですけど、汚れちゃう危険があるんでね。なので、お願いします…!

-実はパン屋さんや調理場で履いてくださってる方も多くて、粉や油がついてるんですけど、その風合いがかっこいいんですよ。

安部:やっぱり味が出てくるってすごいですよね。ただの劣化じゃなくて、いい雰囲気になってくるんで。アンティークの家具とかもそうですもんね。

飯島:じゃあこれからはあまり気にせず、汚れをつけます(笑)。

安部:真っ黒とか濃い茶色だと、あんまり目立たないんでしょうね(笑)。



GENERAL Soft Black / IRIS Chestnut
 
 


 
◆飯島奈美さん
東京生まれ。フードスタイリスト。
TVCM、広告を中心に、映画やドラマでも活動。映画「かもめ食堂」「めがね」(荻上直子監督)、「南極料理人」「おらおらでひとりいぐも」(沖田修一監督)、「海街diary」「真実」(是枝裕和監督)、「すばらしき世界」(西川美和監督)、ドラマ「深夜食堂」「ごちそうさん」「今日の猫村さん」「大豆田とわ子と三人の元夫」など担当。著書に『LIFEなんでもない日、おめでとう!のごはん。』(1,2,3巻)、『沢村貞子の献立 料理・飯島奈美』(1,2,3巻/リトルモア)がある。ウェブサイト「ほぼ日」でオリジナル商品を販売。


 
◆安部眞史さん
1983年生まれ。群馬県出身。
山間の農村で育ち、進学を機に上京して大学では電気工学を専攻。就職活動の際に「宇宙×国家プロジェクト」は面白そうだと思いJAXAに入構。温室効果ガス観測技術衛星2号の開発に携わる。広報担当も兼ね「未来レストランいぶき」企画ではカンヌライオンズのPR部門でブロンズを受賞。現在は新たな衛星ミッションを立ち上げるため、様々な検討をしている。趣味はファッション、映画鑑賞、読書、釣り、キックボクシング。

 
 

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