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さんぽびより #牟田都子さん #三國万里子さん

 

NAOT JAPANがいま気になるあの方にお話を伺うコーナー「さんぽびより」。
今回は、フリーランス校正者の牟田都子さんと、ニットデザイナーの三國万里子さんにお会いしました。
 
本だけでなく工芸などにも造詣が深い牟田さんと、アンティークがお好きで、ものとのお話も多くエッセイに描かれている三國さん。
それぞれのものとの付き合い方、お買い物の話、伺いたいことがありすぎて、はやる気持ちを抑えながら、NAOT TOKYOのある隅田川のちかくでお話を伺いました。
 
この日が初対面だったお二人ですが、じつは牟田さんは長年、三國さんの作品を見てこられたそうで・・・
 
牟田都子さん、三國万里子さんプロフィール
 


 
牟田 三國さんが、吉祥寺のgallery fèveで(妹で料理家のなかしましほさんと)お二人で展示をされていたときに、はじめて作品を拝見したんです。すごく印象的で・・・吉祥寺に住み始めてすぐのころだから、15年くらい前かな。とても憧れて、そこからずっと拝見していました。
 
三國 うわぁ、すっごくうれしいです。まだ本を出すようになる前のことです、そんなに前から。
 
牟田 私にとってあの頃、fèveで見るものはすべてが憧れで。でもお財布はまったく追いつかなくて。
 
三國 いつも「高い」って言われていて。でも、何に比べて高いって言ってるんだろうなって思っていましたね。

牟田 そうですよね、ニット作品って、相当時間も労力もかかっているじゃないですか。私も、こつこつと仕事でゲラを読んでいると、つい「これは時給でいくら」と考えてしまうんですよね(笑)。

 

話しながら、まずははじめに靴選び。牟田さんは2代目になるというIRIS Whiteをお選びに。三國さんはスッキリしたフォルムのLEVANTO Black Madrasがお似合い!

 

| 編み物の本にも校正者がいる!
 
三國 編み図(編み物を製作するための手順図)にもね、校正の方がいらっしゃるんですよ。いつも校正の方にはとってもお世話になってます。
 
牟田 編み図が校正できる方って、校正者のなかでも非常に限られていて、特殊技能だって聞いたことがあります。
 
三國 私の担当をしてくださっている方は、文章も見るし、編み物、洋裁、かぎ針、棒針の本もやるの。それって、本人が「この作り方、ここがこうだとちょっとおかしくない?」って思わないとできない仕事じゃないですか。だからかわからないけれど彼女は本当によくマメに編み物とかしていますよ、楽しそうに。すごい人だと思います。
さらに、編み図を作るのにも専門職の方がいらっしゃって。編み図って、私が出せるのはおおまかなものなんです。こういうふうな身幅で、何目で、こういう模様が入ってきますというような。それをお出しすると、こういうもの(編み図)を作ってくれるベテランの方がいらっしゃる。
 
牟田 それは、なんという職業なんでしょうか?
 
三國 (本のクレジットを見ながら)・・・「編み方解説」ですね! この方が本当に名人なんです。その下に「トレース」というクレジットがあると思うんですが、この「トレース」というのは、編み図の図案を美しくデジタルな形にする方です。編み物の本の巻末のクレジットを見て、「このトレースの方に憧れて勉強しました、お仕事ください!」と出版社に来る方もいらっしゃるんだそうですよ。

 

編み物を作るために必要なのが、この編み図。三國万里子著『またたびニット』(文化出版局)より

 

牟田 本のクレジットを見て勉強して、「お仕事させてください」とアタックされるなんて、素晴らしいことですね。
 
三國 ニットのデザインもそうだけれど、それこそけもの道で、どうやって編み方解説やトレースの仕事につくのかと思いますもんね。やってみたいけど、入口はどこにも書いてない。
校閲は、そういう専門の募集があるんですか?
 
牟田 大きな出版社だと、以前は校正は専門職採用で、総合職と並んで「校閲部採用」というのがありました。でも、ほとんどそれくらいです。多くの出版社には校正専門の部署がなくて、そういう場合は編集者が兼務したり、校正専門の会社や私たちのようなフリーランスに頼んだりという形でやっているので。校正の仕事をしたいと思うと、本当にどこに道があるの?という感じなんですよね。
私も20代の頃、図書館で働いていたのを辞めて、「次もなにか本に触っていられる仕事がいいな」というぽやんとした状態でこの仕事に入ってしまったので、何も知らなくて。毎日どこかに頭をぶつけて血を流しながら仕事を覚えていっていました。用済みのゲラが捨ててあったら拾ってこっそりと読んだり。最初はしんどかったですけど、お金をもらって必死でやるというのが一番身につくなぁと今は思いますね。

 

お二人の書かれる文章もとても素敵なので、この冬の読書にぜひ。左から、三國万里子著『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』、近刊『またたびニット』、牟田都子著『文にあたる』

 
 

| 物が好きな二人の、最近の買い物事情
 
―ふだんから、どういうふうに物を選んでいらっしゃいますか?
 
三國 牟田さんも私もそうとう、ものが好きだと思うんですが・・・牟田さんはいつも、どういうところでお買い物されるんですか?
 
牟田 私は吉祥寺です、徒歩でまわれるところが多いです。いまだに、お店で実物を見てじゃないと買えないんですよね。
20代のときは、吉祥寺って憧れの街だったんです。当時、友人が吉祥寺に住んでいたので、1か月に一度くらい吉祥寺を訪ねて雑貨屋さんなどをまわって。その頃は今より手芸用品のお店もたくさんありましたよね。
 
三國 そうそう、ありました!
 
牟田 今の仕事をはじめたときに吉祥寺に引っ越してきたんですが、gallery fèveに徒歩で行けるって私には夢だったんです。当時住んでいた街から1時間以上かけて展示を見に行くというのが、一大イベントだったので。

 

 

三國 (雑貨店の)CINQとかは、まだなかったですか?
 
牟田 CINQができた直後くらいだったかな。でも私、CINQはずっと原宿の最初のお店に通ってたんです、あわせてZakkaでの展覧会を見に行ったりして・・・
 
三國 通ってきたものが同じすぎる! ちょっと緊張する空間でしたよね。牟田さん、もしかして「ちょっと緊張する空間」がお好きですね?
 
牟田 そうなのかもしれません! でも、緊張しすぎて入れなかったお店もいっぱいあります(笑)。古着屋さんのTOROとかも雑誌で見て憧れて、まだスマートフォンがなかった時代だから地図や雑誌の切り抜きをもってね、やっと辿り着いても、勇気がなくてお店には入れなかったりして。
今は、吉祥寺だとOUTBOUNDや、fèveの下の階にあるセレクトショップのTONEも好きです。小暮美奈子さんの-M-[medium]の服もすごく好き。そういう、好きなお店やブランドは今でもいくつかあるので、展示会に行ったり、そもそも展示会に何着て行こうかと悩んだりして。・・・そう思うと私、今でもちょっと緊張する場に行っているんですよね。好きなんだろうな、ちょっとした背伸び感というか。
 
三國 でも、ときめきますよね。ちょっと緊張して行くお店が、ずっとあってほしいですよね。
 
牟田 そういうお店でお買い物ができるようになった、ということも嬉しいですし。

 


 

三國 そう、そうなんです。小山田圭吾の履いていたあの(ジュンヤワタナベの)パンツも今ではがんばれば買えるんだけれども、買えなかった時代のことも思い出すの。それも悪くないなって。
でも、私のお買い物はなかなかですよ(笑)。これ(コサージュ)は、alice daisy roseの黒田トモコさんのお店で。アジサイなので今の季節ではないんだけどね、Sugriというところのものです。
 
牟田 黒田さんの扱われているブランドのものって、繊細で華奢なものが多いですよね。とっても素敵なんですけれど、私はもう、すぐに引っ掛けてだめにしてしまう自信があって、だから買えなくて・・・
 
三國 私、引っ掛けてだめにしてしまいそうなものが大好きなんです!
 
牟田 そうだろうなと思っていたんです〜〜!(笑)
すぐに引っ掛けてだめになりそうなもの、一瞬擦ったらアウトというようなものを、躊躇わずお求めになりかっこよく着ていらっしゃるのが、とても素敵です。

 
 

| そのときに自分が買えるベストなものを買う
 
三國 骨董のルネ・ラリックの器を集めているんですけど、このあいだ母に聞かれたんです。「そういうものを毎日使って、割れたらどうするの?」って。割れたらどうするのって、割れたら割れるんじゃん、と(笑)。でもそんな毎日割れるわけでなし、たとえば5万円だとしても2〜3年使えたら、もう自分の人生のなかでかなり昇華してる。ものって、そういうものだと思うんですよ。そのときに自分が買えるベストなものを買う。壊れそうでもいい。
私は恋に落ちるみたいにものを買ってしまうんです、頻度はそんなにしょっちゅうじゃないんですけどね。それを延々と使う、ずーっと使う、壊れるまで使う。

 

 

三國 それでこのあいだね、ついにその日がきたの。〈パヴォ〉というお花の形をしているグラスをずっと宝物にしていて、それでウイスキーの水割りを飲んでから寝るのが好きだったんだけれど、(旅先の)エストニアから帰って来て気持ちがざわざわしていたのか、それが割れまして。落としたわけじゃないの。何回も床に落としたことはあって割れなかったのに、上からおたまをすべり落としちゃったの、おたまの角のところがカンッて当たって割れてしまったんです。そうなんだぁって思って。〈コクリコ〉という違うグラスも2,3日後に、同じように物を落としてパカっと割れてしまって。その瞬間、言葉を失うんですけど、割れたグラスに教えられるんです。今がさよならの時だって。そのときは残念なんだけど、ありがとうという気持ちです。
 
牟田 わかります、私も、毎晩お酒を飲むときにお気に入りの器を出してうっとりして、「綺麗だな」と思うので。すこし無理してでも手に入るものなら買っちゃえ! って思っちゃう。
 
三國 だって自分が人生のなかで使うグラスの数なんて、たかがしれてるでしょう?
 
牟田 そう、そうなんです。どれくらい経験できるか、というか。私も先日、愛用していたアンティークのバカラのグラスを割ってしまったんですけど・・・これが一個あればいいと思っていたものを割ってしまって。でも見るたびに「本当に綺麗だな」って思ってたから、その経験ができたから。
 
三國 いい人生だなって、それを見るたびに思ってたから。うん。

 

 
 

| たくさん歩ける靴、痛くなるけれど履きたい靴
 
―お二人とも、靴に関してはいかがですか?
 
牟田 私、靴はしつこく履くんですよ。今日履いてきた靴も、OUTBOUNDでの受注会で買ったんですが、もう10年とかかな、履いていて。形が違うものももう1足もっていて、それは15年近く履いていますね。吉祥寺に引っ越してきてすぐのとき、それこそ当時は「家賃だ・・・」ってふるえながら、えい!って買ったんですけど。それをしつこく履いています。
 
三國 かかととかを直しながら?
 
牟田 そうですね、ソールを張り替えてもらったりして。
私は「たくさん歩けること」が条件なので、ヒールもすごく憧れるんですど、ダメなんですよね。歩けないとなんというか、楽しくないというか。どこへでも行ける、いくらでも歩ける靴という条件で選んでいますね。
 
―NAOTの靴も、オールソール交換をしたりいろいろお修理できるので、しつこく履いていただければ!
 
三國 修理できるの、やっぱり大切ですよね。私がよく履くのは3種類かなぁ。スニーカーは毎朝歩くときに使って、今日履いてきた革の紐靴は奈良で展覧会をしたときに記念に買って。そういうふうに、記念でものを買うのが好きかもしれないですね。
あとは・・・ヒールも好きなんです。くたびれるし足が痛くなるんだけど、だけどそれでも履くっていうか、好きですね。ものを使うというのは生きるということにも繋がっているから、無理なこともしたいんですよね。今は、靴はその3種類くらいかな。
 
牟田 アランニットの本(『アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行』)のとき、リュックだけれど足元はバレエシューズっていうのもすっごく可愛かったです。

 

『アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行』(文化出版局)より

 

三國 わーー、よく見てる!! でもあれは、さすがにあの地でヒールは履けないから。私のなかでは妥協策なんです(笑)。
 
牟田 三國さんも、歩くのお好きなんですよね?
 
三國 そうですね、毎朝歩いていて。1時間くらいかな。
 
牟田 1時間だと5kmくらいですね。私、以前24時間で100km歩くっていう大会に出たんです。そういうぶっとんだ大会があり・・・それで100kmまでならなんとなく感覚をつかみまして。
 
三國 24時間かけて歩いたっていうこと!?
 
牟田 23時間くらいでゴールしました(笑)。そのときは筑波山のふもとのあたり、昔の街道なんですが、そこをぐるっと回って戻ってくるというコースでした。延々と田園風景です。
 
三國 それは誰かと一緒に参加されたのですか?
 
牟田 それがもう、ひとりで黙々と・・・ただただ沈黙のなかを歩きましたね・・・。
 
三國 (笑)。じゃあもしかしたら、ホタテ貝の巡礼(スペイン・サンティアゴ巡礼)とかもやってみたい?
 
牟田 やってみたいですね、四国のお遍路さんとかもやってみたくって。
 
三國 似合う!!!!
 
―この白サボ(IRIS White)でいけますかね。
 
牟田 サボでお遍路、いけるかなー!(笑)

 

 

 

牟田都子(むた・さとこ)
1977年東京都生まれ。図書館員を経て出版社の校閲部に勤務。2018年より個人で書籍・雑誌の校正を行う。
著書に『文にあたる』(亜紀書房)、共著に『あんぱん ジャムパン クリームパン 女三人モヤモヤ日記』(亜紀書房)、『本を贈る』(三輪舎)。朝日新聞で「牟田都子の落ち穂拾い」を連載中。

 

三國万里子(みくに・まりこ)
1971年新潟県生まれ。書籍やキットでの作品発表で活躍する一方、プロダクトデザイン、ヴィンテージの洋服や雑貨のバイイング、スタイリング、エッセーの連載なども手がける。気仙沼ニッティングおよびMiknitsデザイナー。
著書に『編みものこもの』『編みものワードローブ』『きょうの編みもの』『冬の日の編みもの』『編みものともだち』『アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行』『ミクニッツ大物編』『ミクニッツ小物編』『またたびニット』(以上文化出版局)、『うれしいセーター』『I PLAY KNIT.』(以上ほぼ日ブックス)、『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』(新潮社)がある。

 
 

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