Column

さんぽびより #平野紗季子さん #穂村弘さん 2/2


 
NAOTスタッフが「一緒にお散歩したい!」と思った方と、ぶらぶら街を歩きつつ、話をしつつ、目に留まったものをパシャりと写真におさめていただくこの企画。
 
第12弾は、歌人・穂村弘さんと、フードエッセイストの平野紗季子さんに歩いていただきました。
 
後編は、街中から少し外れて隅田川沿いに向かいます。引き続き、穂村&平野ワールドは続きますよ〜。では、後編スタート!
 


 

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Twitter: @homurahiroshi(穂村弘情報公式アカウント)
 


 

 
ーお二人ともご出身は東京ではなく、南と北で正反対の場所ですよね。
 
平野:私は福岡なんですけど、幼稚園の時までだったので、博多弁はあまり喋れないです。
 
穂村:福岡ね。幼稚園までなんだ。ところでもつ鍋ってうまいの?
 
平野:あんまり食べたことないんですよね。帰るとうどんをよく食べます。
 

 
穂村:うどん?博多ってラーメンじゃないの?
 
平野:博多の人ってそこまでラーメン食べないみたいです。うどんの方が多い。麺がちょっと柔らかくて「うろん」って呼ばれたりもします。穂村さんはご出身はどちらですか?
 
穂村:僕は北海道なんですよ。札幌。でも僕も2歳までしかいなかったので、あまり記憶は無いんですけど。
 
平野:2歳だったら何も覚えていないですよね。私この間、北海道の「さえら」っていうサンドイッチ屋さん行きましたよ。すごい美味しいサンドイッチ屋さんなんです。
 
穂村:すごい美味しいサンドイッチってどういうものなの?
 
平野:いろんなお惣菜が挟まってるんです。とうもろこしコロッケサンドとか、海老カツサンドとか!海老カツサンド最高でした。
 
穂村:あ〜海老カツ美味いよね。
 

 
平野:この間、自由が丘の洋食屋さんで、海老フライにクリームコロッケをぶっ刺したみたいな食べ物をいただいたんですけど…
 
穂村:それって海老味がするの?カニクリームコロッケがあるから、それの海老版って感じなのかな?
 
平野:そうですそうです。すごく美味しくて、それでタルタルソースがかかってました。
 
穂村:タルタルソースかけるとさ、味が全部タルタルソースになっちゃうよね。
 

 
穂村:僕、コンビニに行って、自分がすごく気に入ったものがあると必ずすぐなくなるんだよね。
 
平野:好きなお菓子ばかり終売する!あるある、わかる〜!
 
穂村:みんなは違うんだな〜ってすごく悲しい気持ちになるよ。それを買って1人で頑張って維持しようとしたこともある。
 
平野:私の場合、オーザックがそれなんですよね。まだ終売はしていないんですけど、すごく肩身が狭いっていうか…。
 
ーオーザック懐かしいですね。
 
平野:プレーン味が好きなんですけど、まず、プレーン味にコンビニに置いてもらえるパワーはないんですよ(笑)でも、限定で「有名ラーメン店味」みたいなコラボ系の商品が出た時だけコンビニにも並ぶんですけど、それはあんまり好みじゃないんですよ…。推したいのに推せない、でも推さないと消えちゃうみたいなジレンマで、いつもオーザックに悩まされている…。
 

 
穂村:結構定番だったもので且つ人気だったものが消えちゃうのはなんでだろうね。エンゼルパイとかそうでしょう、今は明治のチョコパイはあるけど…森永のチョコフレークも見なくなっちゃった。ここまで来たら大丈夫かと思いきや、急に消えてしまったりするよね。
 
平野:なんででしょうね…。嫌だな。オーザックが無くなるのは本当に。
 
穂村:そんなに好きなんだ。
 
平野:好きですね。なんか、すっごく美味しい!っていうものではないんですけど、好きです(笑)本当のポテトそのままでなく、「ポテトパウダー」だったりして。
 
穂村:そういうのはどこ見たら分かるの?
 
平野:裏を見たら分かりますよ。
 
穂村:そうなんだ…あっ鳩だ!
 

 

 
ー実はすぐそこに平野さんがお好きそうなおすすめのお店があるので、ちょっと寄ってもいいですか?
 
穂村:なんだろう。
 
ーこちら、マルセリーノモリさんです。
 
平野:…はっ…!!私、ここすごい好き!!!え〜!
 
穂村:雰囲気もいい感じだね。なんかシェアする?好きなの選んでくれる?
 
平野:えっいいんですか〜!やったー。
 

 
ー海老ステーキサンドとフルーツサンドにされたんですね。美味しそうですね。
 
穂村:美味しそうだよね。平野さんが食べてるところ撮ろう。今日初めてのご飯?
 
平野:そうです、お菓子は朝食べましたけど、朝ご飯は普段食べないので。(ぱくり)…お、美味し〜!あ、ソースが片面しか付いてないからサクサクですね。
 

 
穂村:僕も海老カツひとついただきます。あ、外がカリカリだ。
 
平野:パンの喉越しも良いですね。
 

 
穂村:…ところで、いいね。この靴、初日なのに全然痛くない。いつも靴を初めて履くときは痛くなっちゃうんだけど、全然痛くならない。いいなぁ、この靴。
 
平野:そうですね!しかも土踏まずを適度に刺激してくれて気持ちいい。プニプニしてますね。
 
ーよかったです…。もっと履いていくと、どんどん自分の足型がインソールについて、革も馴染んできますよ。
 
平野:革靴って試着する時、少しきつくても「革だから伸びますよ」って言われて信じて買ってしまって、結局、窮屈すぎて履けないみたいな。そういう時、なんて自分はダサい人間なんだって思うんです。
 
穂村:え、それは自分のせいじゃなくない?
 
平野:似合うって、見た目だけじゃなくてフィット感とかも含めて、自分でわかって買わないといけないのに、みたいな。
 

 
穂村:なんか靴が伸びるスプレーってなかった?キツイところにシューってする。
 
ーありますよ!うちでも革調整をするときに使っているものがあります。革が柔らかくなりやすくなるんですよね。
 
平野:…あ、そっか。靴屋さんですもんね(笑)
 
穂村:なんだと思ってたの?お友達?
 
平野:お散歩仲間だと…(笑)へへ。
 
ーむしろ嬉しいです(笑)
 
穂村:…あっ来た来た。
 
平野:いちごちゃん…可愛い、ブタみたい。
 
穂村:…フルーツサンドってさ、断面がやばいよね。
 
平野:やばいですよね。うーん…幸せ。
 
ーフルーツサンドで1番好きなお店はありますか?
 
平野:四谷のフクナガかな。
 
穂村:へ〜!大学時代四谷に通ってたのに、有名なお店があるとか全然知らなかったな。みんながたい焼き屋さんとか有名なお店あるよって言っていてもどこのことか分からなくて。天ぷら屋さんとかお寿司屋さんとかは学生とっては縁がなかったし。
 

 
平野:ロンっていう喫茶店知りませんか?
 
穂村:あ、それなんか聞いたことあるなあ。純喫茶みたいなやつ?今もあるの?
 
平野:あります!二階建て吹き抜けのめっちゃ素敵な。ロンのタマゴサンド最高です。
 
ーへー!知りませんでした。四谷だったらイーグルとかもありますよね。大学時代一回だけ行ったことがあります。
 
穂村:あージャズ喫茶のね!ジャズ喫茶で有名っていうと、なんだか敷居が高く思えて。
 
平野:わかります、その道のプロが行く感じっていうか(笑)穂村さん、バーとか行きますか?
 
穂村:お酒は僕はあんまり飲めないんです。だからすっぽり抜けているゾーンというか。知らない文化圏ですね。
 

 
平野:そうなんですね。じゃあそのかわりに何を嗜むんですか?
 
穂村:う〜ん、なんだろうなあ…あんまり思いつかないなあ。でもお酒ってやっぱり大きな領域よね。よく人生の楽しみの半分を知らないとか言われるけど。特にワイン好きな人が言ってくるんだよね。「ワインを飲まないなんて…」ってね(笑)
 
平野:たしかに!(笑)「人生の喜びを半分しか知らないことと同じ」みたいな(笑)
 
ー平野さんはお酒飲まれますか?
 
平野:私も弱いのであんまり…たまに帰りにコンビニでカルピスを買って帰ることはあります。
それが人がお酒を飲みにバーに行きたい気持ちなのかなとか思ったり(笑)
 
穂村:面白いね。フルーツサンド食べたら。食べるところ撮るから。おいしそうだよ。(カシャ)
 

 
ー友達のお母さんが、生クリームを泡立ててそれだけ食べるっていうジャンキーな食べ方をしているらしいんですが、お二人はなにか偏食してしまうものってありますか?
 
平野:その生クリームは、ジャンキーっていうよりリッチだなって思う(笑)
 
穂村:僕は高校生の時に、今日の晩御飯はじゃがバターでお腹いっぱいにしたいと思ってお母さんに頼んでそうしてもらったことはあるよ。
 
平野:かわいい〜!(笑)でもわかるな。私も生麩の田楽だけにしてほしいって言ったことある(笑)
 
穂村:えー渋いな〜!それ幾つの時?普通生麩の田楽なんて子供は知らなくない?
 
平野:子供の時です。梅の花っていう和風レストランに生麩の田楽があって。それが好きすぎて。
 

 
穂村:そうか〜。子供でよくあるのは「ボウルいっぱいのゼリー」とかだよね。スイカを丸ごととか。
 
平野:あはは!そうですよね。学生時代に、お母さんに頼んでお弁当を生麩の田楽に入れてもらったんですけど、それで木の芽味噌をかけていたら、友達に「なんか…紗季子ちゃんのお弁当汚い…。」って(笑)ちょっと悲しかったのを思い出した。
 
穂村:僕は昔ホットケーキをたくさん食べたらお腹の中でホットケーキが膨らんじゃってあとですごい腹痛になったことあるな。それで病院に行ったよ。上限ギリギリまで食べたらいけないっていうことを学んだな。
 

 
平野:…ホットケーキの呪い(笑)やっぱり好きなものを食べ過ぎると飽きちゃうじゃないですか。あれすごく寂しい。大好きだったのに「もういらない」ってなっちゃってそのあと一生食べたくない、みたいな感覚。
 
ーバターサンドとかも、たまに食べるからこその高揚感ですよね。
 
穂村:冷やして食べるとうまいよね、バターサンド系って。
 
平野:わかります、私カチっとしたバターサンドが口の中で溶けていくのが好き。
 
穂村:人の味覚で気になることは、どの程度それがフィジカルなものなのか文化的なものなのかっていうことなんだけど。例えばこしあん派かつぶあん派って、かなりプリミティブな感覚だと思うんだよね。そういう感覚とか好みって、説得したりされたりするのがむずかしいような気がするの。豆腐とかだったら使われる料理の種類によって、ケースバイケースって感じがするんだけど。
 
平野:しっかり硬いプリン派か、とろとろプリン派か、とかもですよね。
 

 
ー随分ゆっくりしてしまいました。そろそろ、出ましょうか!
 
平野:袋一枚いただいてもいいですかー?ごちそうさまでした!
 
穂村:ありがとうございます、美味しかったでーす!
 
ーありがとうございました!
 

 
ーお散歩もそろそろ終盤ですが、最後に質問させてください。お二人にとってさんぽとは?
 
穂村:いちばん好きなもの。僕にとって海外旅行とかって刺激が強すぎるんですよ、宇宙旅行くらいに(笑)怖いの。旅行中ずっと(笑)
 
平野:そんなに怖いんですか。
 
穂村:そう、外国人が宇宙人に思えるくらいに怖いの。だからお散歩が普通の人にとっての旅行くらいに感じるから、刺激がちょうどいいんだよね。
 

 
ーその感覚、わかる気がします。旅行とかは大層すぎて、気疲れすることがあります。平野さんはどうですか?
 
平野:私も散歩大好きです。散歩の連載とかもしているし。とくに一番ドキドキするのは時空またぎですね。
 
穂村:時空またぎ?
 
平野:以前、いってみたい定食屋さんがあって、麻布あたりをお散歩していたんですよ。そしたら、歩いても歩いても人に全く会わなくて。「ここはどこ!?」って時が止まったような感覚になったんです。
 
穂村:おもしろいね。
 

 
平野:で、よくお家を見たら、どの家にも誰も住んでいないんですよ。え?って思って近づいてみると、全ての家の入り口に都市開発事業者の名前が書いてあって、あ、立ち退きになったんだ……。ここに何か建つんだ。ってやっとわかって。でもさっきまで賑やかだったのに、誰も住んでないゴーストタウンが港区のど真ん中にポツンと現れるっていうことにとても驚かされて。新品のビルと古い街並みが不自然に隣り合っている、その新しい時間と古い時間の狭間をうっかりまたいでしまったことに衝撃を覚えました。
 
穂村:それが時空またぎなのね。
 
平野:あと勝どきとかも面白いですよ。
 
穂村:勝どきって何があるの?
 
平野:勝どきって、埋め立て地なんですけど、一番端が埠頭になっていて水産加工会社のビルだらけなんですよ。それでデコトラとかもたくさんあって、海と流通の男の街なんです。
 

 
平野:でもそのまま歩いていくといきなりタワーマンション群になるんですよ!優雅なファミリー層の登場みたいな(笑)そこを通り過ぎると次は月島に入るんです。
 
穂村:ああ、はい。
 
平野:すごい下町なので、ご老人がでっかい亀とかを散歩させてるんですよ!(笑)
 
穂村:亀!すごいねそれ(笑)
 
平野:それが全部20分間くらいの出来事で、短い間になんか色々見たな…と思って(笑)
 
穂村:日本はエリアが錯綜して混在しているもんね。
 
平野:あ〜、そういうことかもしれないですね。
 

 
穂村:他のエリアを見ないで暮らすっていうのができないから。コンビニを見ないで生きるのってほぼ不可能でしょ。
 
平野:確かに。自分のエリアじゃない「のりしろ」みたいな部分が重なり合っている感じかもしれないですね。
 
穂村:で、常に変化しているから…。…あ〜川沿いってこんな感じなんだね。知らなかった。お相撲だお相撲だ。
 
平野:屋形船とか乗ったことありますか?
 
穂村:あるよ、一回だけ。あれ?鳥?
 

 
平野:鳥だ!
 
穂村:鳥だね。最初は船の一部かなって思ってたけど。(カシャカシャ…カシャ)最後だから撮りまくる(笑)
 
平野:(笑)
 

 
穂村:…ふふふふ〜ん♪そうか、こんなに川が近かったのか〜。
 
ー本当にお店の目の前に隅田川があるんですよ。ではそろそろ、戻りましょうか。今回はのんびりまったりなおさんぽ回となりました。お二人とも今日はありがとうございました!
 

左/DIRECTOR Matt Blackカラー 
右/OLGA Matt Blackカラー
 
 
 
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