NAOTスタッフが「一緒にお散歩したい!」と思った方と、ぶらぶら街を歩きつつ、話をしつつ、目に留まったものをパシャりと写真におさめていただくこの企画。
第2弾は、小説家の森見登美彦さんに、奈良・生駒山の宝山寺周辺をぶらり歩いていただきました!
奈良県北部の隠れた名所、生駒山。小雨降りしきる春の日に、森見さんのカメラはどんな景色を捉えたのでしょうか?お散歩トークの前編、どうぞお付き合いください!
◆プロフィール 森見登美彦さん
森見:いや〜降ってますね〜。昨日はあんなに良い天気だったのに。僕、イベントの時はわりと晴れるんですけど…。
ーすみません、この企画の担当スタッフが雨女なんです…。この辺りはよく来られるんですか?
森見:たまに来ます。建物も面白くてちょっと気になるものがあったりで。
ー確かに面白げな雰囲気ですね。
ーこの道路の輪っかの模様、どうやって作ってるんかな?って子供のとき思ってました。
森見:ぽっくりっていうのか、かぽかぽするアレで、おじさんたちが横に並んでやってんちゃうかなって思いますよね(笑)
ー桃の缶詰とかに糸つけるやつありましたね(笑)森見さんは、いつもここまでどうやって来られるんですか?
森見:電車だったり徒歩だったり、いろいろですね。よく平日の午後に来るので、ほかに誰もいないことが多くて…神隠されそうな感じがするんです。千と千尋の神隠しみたいな。
ー今日なんか天気が悪いから、より一層ですよね。いつも一人で来られるんですか?
森見: 基本は一人です。やっぱりめちゃめちゃけぶってますね(笑)もうちょっと天気良ければ眺めもめっちゃいいんですけど…。
ー神社の階段、渋いですね。なんだか空気が変わってきました。
森見:古い寅さんの映画を見てたら、まさにこの場所がロケ地だったんですけど、全くこのままでしたよ。渥美清さんと松坂慶子さんがここを歩いてました。
ー松坂慶子さん綺麗ですよね。森見さんは散歩してる時にアイデアを思いつくこともありますか?
森見:厳密にずっと考えてるわけではないですけど、見聞きしたものを溜め込んではいると思います。
ー歩きながらメモを取ったりされますか?
森見:ノートに書くことはありますね。今も持ってるんですけど、最近はこれぐらいの大きさの…。
ーすごい!めっちゃ綺麗に使ってますね!
森見:いま書いてる作品の準備とかも全部これに書いてます。
ー作品を読んでると、すごく描写が細かいですよね。その土地に住んでるひとが「あ〜」って膝を打ちたくなるくらい。
森見:やっぱり自分が実際に住んでる・住んでた界隈を書いてるからでしょうね。特に作品用に取材するわけではないんですけど。
ー実はわたしも大学時代は京都に住んでいたので、「ああ、高野の交差点ね!」「あのドーナツ屋ね!」っていちいち思い出しながら読んでます。
森見:あの辺の大学には、寿司のバイトの配達でもよく行ってましたよ。
ーそういう主人公出てきますよね!森見さんも配達してはったんや(笑)
森見:ある大学の研究室から注文がきたことがあったんですけど、配達先の場所がわからんくて構内をぐるぐるして、でも催促の電話はかかってくるし…冷や汗かいた記憶があります。恐怖の思い出です。あれはきつかった。
ー友達も寿司の配達やってましたよ〜。〇〇(某有名寿司チェーン)で。
森見:あ、そっちはライバルでした。
ーやっぱり意識するんや(笑)私のバイト先にも、森見さんと同じ京都大学の学生さんがいてたけど、下駄とか履いてて、どこかユニークな方が多かった気がします。
森見:変わった人も居たのは居た…かもしれないですけど、どうなんでしょう(笑)あ、ミニチュア地図。今ここですね。
ー宝山寺ってすごく広いんですね!作りが細かい。あんな崖があるんですか?
森見:歩くとそこまで時間かからないんですよ。崖のところは般若窟になっていて、危ないから登れないんですけどね。
ー奈良出身なのに全然知らなかったです。
森見:僕も両親に一度連れてきてもらったぐらいで、ちゃんと来るようになったのは京都・東京から奈良に帰ってきて以降ですね。
ー確かに、大人になって帰って来てはじめて奈良の良さがわかりますよね。京都もお寺や神社が多いですけど、奈良はまたそれとは違う感じしますか?
森見:奈良の方が雄大で、京都の方が洒落てる感じがありますね。
ーいつもする感じで参ってみてください。
森見:正式なんとかあんまりよくわかってないんですけど…お賽銭入れときますね。
△小銭をそっと入れる森見さん
ーあれ、森見さん鐘鳴らさないんですね。
森見:本当は鳴らすべきなんですけど…なんか恥ずかしくて。
ーそこ恥ずかしがる人初めて見ました(笑)なんとなくInstagramとかもやってなさそうですね。
森見: そんなオシャレなこと…!ブログすらまともに更新しないのに。
ー普通に道を歩いてて、「森見さんですよね」って言われますか?
森見:京都とかを歩いてたらごくたまに。奈良では一度ぐらいしかないです。
ー声かけられると困りますか?
森見:幸い声をかけてくれるのが良い方ばかりなので、困ったことはないですね。
森見:ここ、危険標識だらけやなあ。
ー今工事中なのかな?
森見:いや、ずっとこんなかんじです(笑)
ーあんな高いとこに不動明王像を祀ろうと思った人がすごいですよね。
森見:ありがたみが増しますよね。
森見:この狸たち、両側はよくあるスタイルですけど、真ん中はだいぶ味があって…渋いですね。
ー熊っぽい。
森見:もしかして狸ですらないんかな…。
ー昔から狸お好きだったんですか?
森見:いや、もともと何も思ってなかったです。作中で書いてるうちに好きになってきました。達磨もそう。読者のかたがプレゼントでくださるので、家にめっちゃあるんです。自然と変なコレクションが出来上がって、愛着が湧いちゃって。
ーこの辺から神々しい雰囲気が増してきましたね。もうだいぶ暖かくなって来たのに、ちょっと温度も下がったような気が。
森見:僕、あんまり春が好きじゃないんです。寒くてみんなが縮こまってるのが好きなんです。周りが元気に動き始めると、「もういいわ」ってなる。大学生のときからずっとそうなんです。
ー小説のキャラクターそのままじゃないですか(笑)大学入学すぐって、特にはしゃぐ人たちと引いちゃう人たちと分かれますよね。
森見:そうそう。秋ぐらいになるとみんなだんだん疲れてきて、過剰な夢が終わって、落ち着いてくるじゃないですか。早くそうなって欲しいってずっと願ってました(笑)
ー(笑)
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