Column

さんぽびより #大塚いちおさん #前田エマさん 1/2

 
NAOT JAPANが「一緒にお散歩したい!」と思った方と、ぶらぶら街を歩きつつ、話をしつつ、目に留まったものをパシャりと写真におさめていただくこの企画。
 
なんだか素敵なあのひとは、どんな景色を見てるんだろう?
どんなことにクスッとして、どんなことを呟くんだろう?
 
第15弾では、「みいつけた!」をはじめ、書籍や雑誌、広告、音楽関係のイラストレーションを数多く手がける大塚いちおさんと、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ナレーションなど、分野を超えてご活躍されている前田エマさんのお二人に奥渋谷を歩いていただきました。
 


 

OFFICIAL WEB SITE: ichiootsuka.com
Instagram: ichiootsuka
Twitter: @ichiootsuka
 
 

OFFICIAL WEB SITE: N・F・B 前田エマ
Instagram: emma_maeda
Twitter: @emma_rian
 


 

 
ーお二人はどういう街がお好きですか?
 
前田:おしゃれすぎない街とか、商店街がある街は好きですね。いちおさんは、よくこの辺りに来られるんですか?
 
大塚:僕の事務所が渋谷の松濤にあって、通り沿いの方なので、山手通りをまっすぐこっちに歩いてきたり。今、コロナ感染が拡大して、飲み歩くのもできないから、知り合いのところでちょっとご飯食べたり。
 

 
前田:私、全然外食行ってない。韓ドラ見ながらお家でご飯です。
 
大塚:Netflixね。ご飯は自分で作るんですか?
 
前田:作ります!
 

 
前田:なんかおしゃれなトイレがある。
 
大塚:あれでしょ、入ると見えなくなるという。
 
前田:あれですよね。すごい。ドキドキしちゃう。
 

△代々木深町小公園にある透明トイレ。
 
大塚:使うときに透明になっちゃったら嫌だな。お、でも今から誰か入るみたい…。どうやって透明じゃなくなるんだろう。
 
ーぱっとトイレの色が透明じゃなくなるー
 
一同:すご~〜い!
 
前田:人が中にいるの、全然わからない。
 

 
ーお二人はどういった経緯でお知り合いになられたんですか?
 
大塚:友人の仕事でエマちゃんの声がちょこっと入ってたりとか、他にも写真や作品を見てて。なおかつ造形大学だったんだって知ったのが僕は最初ですね。(編集注:2021年現在、大塚さんは東京造形大学特任教授を務めています)
 
前田:通っていた大学の先生に、いちおさんがいらっしゃるというのは聞いていたんですが、たぶんその頃はほとんど交流はなくて。お会いするのも今日で二回目、とかですよね。私の地元の「川崎フロンターレ」のデザインもされてて…。
 
大塚:そうそう!川崎という共通点があるんですよね。
 
ー共通点がたくさんあるんですね。
 
大塚:そうなんです、僕が大学で教えていた子がエマちゃんと同級生だったりとか。
 
前田:私がSNSでいちおさんとフォローしあった時に、地元の友達から「エマはいちおさんと知り合いなの!?」って連絡が来て。いや、知り合いっていうか、大学の先生だよ〜って。私、地元が川崎なんですけどね、子供の頃から学校のお知らせとか算数ドリルはフロンターレとコラボされていて、選手の写真入りなんですよ。
 
大塚:フロンターレの算数ドリルを実際に子供の頃にやってたってことだもんね、すごいことだよね。
 

△川崎フロンターレのユニフォームを着て。(2018年撮影)
 
前田:本当ですよね。地元のみんなはサッカー大好きで、フロンターレ信者が周りにたくさんいるんですよ。私はあんまりスポーツがわからなくて、スタジアムには一度くらいしか行ったことがないのですが。試合があった日はその後にみんなどこかで飲んでるんです。「エマ、さっき試合終わったからおいでよ~!」って誘われて、私は後から行くっていう。
 
大塚:その流れ良いね〜、楽しそう。
 

 
ー公園につきましたね。いちおさん、サッカーをされてたんですよね?
 
大塚:いやいや、遊びで時々ですね。僕が川崎フロンターレにまつわるデザインをさせてもらえることになって、うちのデザイナーたちと試合をすぐ観に行ったんです。僕はずっとサッカー好きで観てたけど、うちのデザイナーの女の子とか、あんまり知らない人が突然スタジアムに行っても、出てくる感想がなんていうか、ずれてたんですよ。
 

 

 
大塚:「なんで今の出来ないの!?」とか「あんなの全然入るじゃん!」とか観ていると思っちゃうけど、全然そんな簡単じゃないんですよね。一回サッカーをやってみたら、きっとどれくらい選手がすごいかわかるから、やったほうがいいよ!って話になって。朝のラジオ体操代わりみたいな感じで、公園に集まってボールを蹴ろうという会をを時々やってて。mimetのオーナーのヤマモトさんをはじめ周りの友人が集まってくれて。朝から、美味しい朝食を食べるためにただボールを蹴る会。それから実はユニフォームまでデザインして作ったんですよ。
 

 
ー楽しそうです!では、サッカーをされるようになったのは、大人になってから。
 
大塚:そう、子供の頃は野球少年で、東京に来るまでサッカーはやったことなくて。でもサッカーって、ボールひとつあればできるじゃないですか。だからイラストレーターとしてデビューした頃もやってましたねえ。ボール持って公園行って、ちょっと運動にとか。
 
 

 
大塚:ここ、アイスクリームありますよ。
 
前田:ほんとだ〜!
 
ーせっかくなんで、こちらで少し休憩しましょうか!
 

 

△代々木公園隣のPARKERさん内で、Harlow ICE CREAMを。
 
ー大塚さんに質問なのですが、デザインされたキャラクターの中で、一人だけ現実に会えるとなると、誰に会いたいと思いますか?
 
大塚:ええ〜。それは究極の質問ですね(笑) コッシーとかサボさんももちろん会いたいんですけどね。彼らが動いてる姿とか、喋り方とか性格とか、番組のおかげでなんとなくわかるからなぁ。
ああ、ウェルモ。会いたいですね。僕の地元の上越妙高駅っていう駅のために作ったキャラクターなんですけど。
 
ーウェルモ!大好きです。
 

△スタッフ私物のウェルモのストラップ。
 
前田:そうか!いちおさん、上越なんだ。
 
大塚:彼はまだ、実際に動いたりしてる姿はないので、やつが実際に世界にでてきたら、いじりがいあるな〜と思って。
 

 
前田:キャラクターは、動いてるところを想像して考えるんですか?それとも最初は静止画として考えるんですか?
 
大塚:最初は静止画だけど、性格はどんなかなーとか考えると、動く姿とか、その様子がなんとなく見えてきますよね。実はとぼけたやつだとか、描いてる途中で生まれてくるんです。ウェルモも、ずっと土の中にいる設定ということにしたら、半分まぶたを閉じた、眠そうな目になりました。情けない感じで可愛いんですよね。
 
前田:昔から、キャラクターから考えて、妄想するのが好きだったんですか?それとも絵を描くのが好きだったんですか?
 
大塚:もちろん絵を描くのは昔から好きだけど、単純に妄想するのも好きでしたね。
子どもの頃から、みんなとワイワイやるのも好きなんですけど、常に友達といるのは嫌なんですよ(笑) 一人の時間も欲しい。そういうとき、なにかしら妄想して遊んでましたね。例えば人生ゲームとか、いつもは友達を呼んでやるんだけど、一人の時は全プレイヤー分を自分で動かして「ここで頑張んないと逆転できない!」とか頭の中で言いながらゲームしたりする。
あと野球少年だった頃は、漫画の主人公みたいに、実は前日に怪我したという設定で得意のカーブが投げられない…でもここで勝負しないと…!みたいなことを勝手に妄想しながら、一人で壁にボールを投げたり(笑)
 
前田:すごい!常に自分が主人公だ。
 
大塚:いやいや、その時の自分の物語の中ではね(笑)
 
ーその延長線上に、数々のキャラクターたちがいたんですね。
 
大塚:そうですねぇ。今でこそ、「コッシー」や「サボさん」を作った人だと言ってもらいますけど、僕もはじめは、普通のイラストレーターだったんですよ。
雑誌の挿絵を描かせてもらったり、自分で好きな絵を描いたり。キャラクターデザインから始まっているわけじゃないんです。
でも、普通に絵を描いてても、なんとなくその背景やストーリーを想像したり、続きを考えたりしてて、そういうのが自然にキャラクターをデザインすることに繋がっていったのかな。
さっき話してた地元の上越市って、雪がすごく降るんですよ。世界が、雪で真っ白になるんです。真っ白だからこそ、そこになんでも想像できる。幼い頃に、そういう環境で想像しながら遊んだのが原体験かもしれないですね。
 
前田:私も小さい頃から新潟にはよく行っています。冬もスキーしに行ってて。もう、何十メートルも雪が積もるんですよね?
 
大塚:何十メートル??(笑)
 
前田:ええ?(笑)何十メートルって話を聞いた気がするんですけど…(笑)
 

 

 
ー対してエマさんは川崎出身、都会育ちというイメージですが。
 
前田:川崎って、すごく面白い街で…。「都会」と一括りにするのは難しいですね。
お受験戦争をめちゃめちゃ頑張る地区もあれば、ヒップホップのカルチャーのあるような地区があったり、工場地帯があったり、外国籍の人が多く住んでいる地区もあって、道一本違うだけで貧富の差があったり…。色んな生き方がそのまんま入り混じっているんです。
あの環境は、自分の人格形成にとても影響を与えました。色んな生き方があるんだな~というのを、どこかへ移動しなくても体験できたからかもしれない。
 
大塚:その環境の中でエマちゃんが自分をキープしてきたの、すごいよね。
 
前田:中学の時とかは、めっちゃ無視されたり悪口言われたりもあったんですけど、全然気にならなくて。学校は、皆勤賞でした!
でも、高校に入学して悪口とか何も言われなくなった途端に、学校に行かなくなって。
目の前の人や、周りにいる人の問題じゃなくて、自分が自分の生き方に満足できなくなると、自分はだめになるというのが…、その時にわかりました。
 
大塚:整えられた環境とかが、面白くなかったの?
 
前田:うーん。いっぱい勉強していい大学に進学するのが一番、みたいなことにあまり面白みを感じなかったですね。
 

 

 
前田:また公園にきましたね。ちょっと野性味がある。
 
ー一同、公園で遊んでいる子供たちを見る
 

 
ーああいう風に遊びましたか?
 
前田:ずっと遊んでました。遊ぶことが好きでしたね。
 
大塚:どろんこになってる(笑)あんなふうに?
 
前田:はい。外で遊ぶのも家の中で遊ぶのも、どちらも好きでした。両親が働いているから、夏休みになると、色んなキャンプに行って。
 
大塚:参加させられるんだ。
 
前田:鶏の首を絞めて捌いたり…。熊に遭遇したり。
 

 
大塚:遭遇しても大丈夫なもんなの?
 
前田:動かなければ?
 
大塚:覚えておこう…。
 
ー今どこにでも行けるとしたら、どこに行きたいですか?
 
大塚:え~、どこだろう。海外旅行はまだ厳しそうだけど、オーストラリアに行くのが好きなんですよ。街のサイズ感がちょうどいいんです。大きすぎなくて。そういう街が好きです。
メルボルンだったらメルボルン、シドニーの方がちょっと大きいけど、シドニーもこの辺って決めたところをだいたい歩いて回れる。
歩ける範囲に、公園があったり、ちょっと買い物できたり、美味しいカフェとかパン屋さんがあったり。あと、夜には美味しいお酒が飲めて。そういえば上越市も、まとまってて良いんですよ。商店街、飲み屋さん、最近は古着屋も。僕が作ったコーヒー屋さんもありますよ。
 
前田:いいですね〜。私も中学生の時にオーストラリア行ったことあります。ザ・観光って感じだったんですけど、いま行ったら全然違う風景が見えそう。
 
大塚:観光も良いんだけど、仮にもしここに住んでいるとしたらと想像して暮らしてみるんです。これも妄想かも。ここも住めるなっていう安心感が生まれる街は好き。
 
前田:それはすごく分かります。私ときどき、地方にアルバイトしに行くんです。1週間から、長いと1ヶ月くらい。
 
大塚:へぇ〜!1ヶ月はすごいね!
 
前田:働くのが好きなんです。特に飲食店で働くのが好きです。撮影とかで行ったことあるカフェとかに、ここってバイトできますか?って聞いといて、1ヶ月とか住み込みで働く。
 
ーエマさんがカフェでバイト…!?それは、けっこう昔の話ですか。
 
前田:今でもやりますよ。でも私、すごく塩対応なんですよ。飲食店で働くのは好きだけれど、接客が苦手なんです。昔はお客さんを怒らせてしまったこともあります…。ときどき、私のことを知ってくれてる方がお店に訪れたりすると、なんだか申し訳ない気持ちになりますけど…。笑
 
大塚:そうなんだ(笑)逆にちやほや、変に構われちゃうのもいやだけどね!
 

 

左/LODOS Light Grey Nubuk、右/GLACIER Oily Dune Nubuk
 
 
▷後編はこちら
 
 
< さんぽびより|まとめ >