Column

あの人の靴、育てる靴 Vol.5 穂村弘さん

 
 
私たちはこれまで、NAOTの靴を通じて、たくさんの方に出会ってきました。
「憧れのあの人は、普段どんなふうに履いて、どんな風に育てているのだろう?」
そんな興味から、NAOTの靴を愛用してくださっている方にお話を伺う連載です。
 
第五回は、歌人の穂村弘さん。
短歌のみならず、評論、エッセイ、絵本、翻訳など広い分野で活躍されている、現代短歌を代表する歌人のお一人です。
そんな穂村弘さんがどんなふうにNAOTの靴を履いてくださっているのか伺いました。
 
 

 
 
| 1足目はDIRECTOR
 

 
ー2年前、NAOTの靴を履いてお散歩するWEB連載「さんぽびより」に登場いただいた際に、一番初めにDIRECTORという靴をお選び頂きましたよね。決め手は何だったのでしょうか?
 


△フードエッセイストの平野紗季子さんとのさんぽの様子

 
実際にお店に行って、その場で「これだ!」っていう風に思いました。僕は先がぎゅんと尖った靴が苦手で、先が丸めの「おでこ靴」が好きなんですよ。スリッポンタイプで縁にステッチが入っているところも気に入っていて、一年に300日ぐらい履いてます。
 
ーほぼ毎日履いてくださっているのですね!

 
同じものを複数買って制服みたいにしがちで。全く同じ黒いジーンズを10本持っていたりします。変化にちょっとハードルを感じるタイプで。でも、美容院に行くたびに「同じ靴履いてる」って美容師さんに思われてるんじゃないか、みたいな妄想をしちゃって、365日のうちの美容院に行く日だけスニーカーを履いたりしてます(笑)
 
ーそのような苦悩が(笑)他にはどのようなものがありますか?
 
今日着けている時計も同じものを持ってますし、食べ物も同じものを食べ続けたりします。ものへのこだわりがある訳じゃなくて、買ったものを並べた時に、共通点があるということに気がつくんです。たとえば靴だと、全部先が丸い「おでこ靴」であるとか。
 

 

△約7年ご愛用の時計

 
 
 
| 2足目もDIRECTOR
 

 
ー穂村さんはNAOTの靴を3足お持ちくださってますよね。

全く同じ黒色のDIRECTORが二足、色違いで茶色の一足を持ってます。黒を履くことが多いかな。修理中に一足出している時に、違うのを履くという感じで使い分けています。初代のDIRECTORの黒は家の玄関にいますよ。
 
ー以前、靴底の継ぎ足し修理をさせていただきましたよね。修理中もDIRECTOREを履いてくださっていたとは、うれしいです!

また擦り減ってきちゃったけど…。修理せず、履きまくったらどうなるのかというのも興味があるけどね。
 

 
NAOTのお店にはスタッフさんが履いている靴が置いてあるじゃない。あれわりと見ちゃうよね。経年変化ですごく変わる靴と、あんまり変わらない靴があって面白い。
 
ー履き方やお手入れ方法によって、経年の仕方は本当に様々ですね。穂村さんは、靴のお手入れはどうされていますか?
 
お手入れ…してないですね。オイルを塗るだけ。
手入れという感覚はあまりなくて、オイルを塗り込むということが好きです。革ジャンとかも。
靴や服を買い替えるっていう発想があんまりなくて。以前、特徴のある柄のシャツを来ていたら、それを見た人から「15年前の雑誌で穂村さんが来ていたシャツだ!」と言われたこともあるぐらい、一度買ったものは使い捨てしません。「みんな何年も同じ服着ないんだ!」とその時思いました。僕の中では、靴や服は廃棄とかはないんです。そうそう壊れないから。
 

 
 
 
| やっぱりDIRECTOR
 

 
ーほぼ毎日履いてくださっているということですが、普段からDIRECTORを履いてよく歩かれるのですか?
 
最長は1日で2万数千歩ぐらいかな。日常的によくあるけどね。靴自体はそんなに軽いはずはないんだけど、長距離歩ける。毎日履くから、廃盤にしないようにしてほしいなあ。廃盤が一番怖い。DIRECTORは他に何色があるの?茶色のLuggage Brownカラーは廃盤なんでしょう。
 
ーそうなんです…!新色で「Soft Chestnut」というカラーが出ましたよ。穂村さんのLuggage BrownカラーのDIRECTORはとても綺麗ですね。
 
黒を修理に出した時にしか履かないからね(笑)DIRECTORは、どれぐらい履き続けていられるだろうね。
 
ーこちらの黒のDIRECTORは、もう一度靴底のかかと部分を継ぎ足してもいいかもしれませんね。インソールも交換できますし、まだまだ履いていただけるかと思いますよ。
 

 
ーちなみに、NAOTにはEIGERという、DIRECTORとはまた違うスリッポンタイプの靴もありますけれど、ご存知ですか?
 
たぶんわかるよ。DIRECTORとはまた違った靴先の丸みで、ステッチが白でないタイプですよね。でも、やっぱりDIRECTORの方が好き!なんか可愛くない?DIRECTORって。だからこれはレディースを出してもいいんじゃないかな。
 

 
 
| 穂村さんにとってのNAOTの靴とは?
 
ー最後に、穂村さんにとって、NAOTの靴を一言であらわすと?
 

 
スリッポンは「すぽっ」だよね。ぱっと思い浮かんだ言葉を書いたけど、なんかカタカナじゃないような気がしたからね。ほんの数秒で履けちゃうんだよね。
 

 
 
 

 
ー私たちは靴屋なので、ついつい歩いている人の靴見てしまうのですが、穂村さんがついついやってしまうことはありますか?
 
変な行動してる人は常にメモしちゃうよね。イレギュラーなものを見ると、それが何かの扉だと思う感覚がすごく強くて。例えば、本を読みながら歩いている子とかを見ると、ものすごくいいものを見たように感じるとかね。スマホ見ながら歩いてる人だと何も思わないのに。
 
ーたしかに。珍しいですよね。
 
この間、バスの中で本を読んでる子供を見たんだけど、「暗いのになんで本が読めるんだ?」って思ったら、その子はそのバスの中の二ヶ所ぐらいしかない蛍光灯の、ちゃんと真下の席に座ってた。あの子は「あそこなら読める」ってことを知ってるのかと思って、すごくその子が好きになった。イレギュラーなものは、「よりよい世界への入り口」みたいに思います。
 

 
 
 
履く人の数だけある、靴とのストーリー。
これからも、素敵な方の“NAOTの育て方”をご紹介していきます。
次回もぜひ、お楽しみに!
 
 
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